独特ですわね、ワタクシも作らせようかしら?
当主の肖像画以外もすべてメイクをしている?
それ肖像画として機能してますの?絵画じゃないですの。
ありか……?ギリいけますわね……。これはやるべきかも……。
クラウがまさか……?って目で見てますわね?なんですの?ワタクシまだ何も言ってませんけど?
「顔に怪我をしていらっしゃったとか?軍人以外では隠す方もおりますし」
「いや、軍人でも隠す人間は隠すぞ……流石にという怪我もある」
「国家を守ったのに怪我で文句言われるのも困ったものですわね」
「いや、怪我で文句を言ってるのではなく相手を不快にさせたくないからだ」
身を粉にして人々を守るために働いた人間が?気遣いは立派ですけどそれをやるとバカは自分が偉いから不快なものを見せないように努力して当然だと思うようになりますわよ?
顔の半分がなくても英雄ですわ、それに悲鳴を上げるような連中は戦場にでも放り込めばいいじゃないですの。
貴族であれば女とて戦場に立つものですわよ。顔の半分でも切られれば箔くらいつくでしょう、それで嫁入りをごねる家なんて軍人系貴族から排斥されるだけですもの。
だからこそ英雄たちがそんな下手に出ることは許せませんわね。
「その程度で不快に思うような相手ひっぱたいてあげなさい」
「同感っすね……」
「蹴っ飛ばしてやればいーし」
「……まだ決まったわけではないでしょう。それで怪我をしてたののですか?」
「いえ、そもそも普段はメイクをしてなかったらしいです。少なくとも怪我をしてるという話は聞いた覚えもありませんし……」
「それ肖像画の意味は……?」
「実は……そっちが本当の顔とか……?」
「怖っ……!」
「怖すぎるやろ、悪魔かなんかか?」
「まぁ平民目線では貴族なんて悪魔みたいなもんだけどねー」
「手配書でも恐れてたのか?(小声)」
ああ、なるほど……。そういう見方もできますわね。
ふーん……。いや何から逃げるんですの?つらい現実?
「それってさー、どの肖像もメイクしてるってこと?」
「はい、オドニー・バンサ伯爵としての肖像はすべて宮廷道化師の衣装にピエロのメイクです」
「……それ以前は?」
「正直顔がわからないので……。多分ないかと……思うんですけど……すみません、まったくわかりません」
「自分の顔が嫌いだったのか?と思ったが普段はメイクしてないのか……」
「肖像画が嫌いな人やったんやろ、よくいるで。それでも作らなあかんときはあるしな」
「あー街でよく顔隠してる人ね」
「それは不審者かどこかの貴族の使いだろ、なんとかしろ、騎士だろう?」
「裏町にいたら後つけるよ、市街地だと面倒だから放置ね」
「大変やなぁ、騎士も」
「騎士の仕事は……意外と地味なのが多い……」
「人相書きで探されてるのならわかるし流石に追うけどね」
「流石に貴族は指名手配されないでしょう?」
「そりゃあそうだ(小声)」
元貴族ならされるかもしれませんけどね。まぁオドニー・バンサ伯爵は元でもないですし、単に趣味とかでしょう。多分、きっと。
いや、笑いの追求かもしれませんわね。奥深いですわね……。
まさか死んでから逃げるわけではないでしょう?何年かけて逃げる予定だったんですの?まさか子供の頃から?
「じゃあ肖像画嫌いであんまり残ってない人なんですのね?」
「いや、結構あったっす、それこそ複数人の肖像と言うよりは記念絵画みたいなものも結構あったっす」
「……なんで?」
「いや聞かれても知らないっす、ピア先輩に聞いて下さいっす」
「いや、私も知りませんが」
「なにか……理由があるなら……誰か知ってるのでは……?」
「深く聞いたことはありませんが……孤児院の慰問などを積極的にしていらっしゃったと」
「あーだからピエロメイクなんだねー……。そんなに孤児院行ってたんだったら立派だったんだねー」
「それピエロメイクの理由になるのか?」
「だって自前じゃなきゃ無理っしょ、わざわざピエロメイクを家中の人にやらせないって、あーしらだって帝都の祭りで仮装で参加する際は基本自前よ?」
「そうなのか?軍だとそれ担当の者がやってくれるのだが」
「他の騎士に何描かれるかわかったもんじゃねーし、貴族だって担当者が買収されたら毒殺されるかもしれないじゃん」
「切実……」
女性騎士はマーグみたいな人が多いんでしたっけ?そりゃあなに描かれるかわかりませんわね、自分を信頼できないから他人を信頼できないのですわよ?
ワタクシもマーグがフェイスペイントするって行ったら絶対拒否しますけど。
実際買収されて毒殺されるなんてよくあるでしょうしねぇ……やはり自前だと思いますわ。軍だと担当でそんな問題が起きたら危なすぎて事前検査マシマシですしね。
まぁそんな好きはないでしょう、あったら終わりですけど結果的に軍も痛手ですしね。
「孤児院の慰問ですか?本当ですの?」
人身売買とかしてませんこと?獲物の物色とか。
「ピエロのメイクをして孤児院にいるのは大抵バンサ伯爵だったという話があるくらいに有名だったらしいです」
「斬新すぎますわね……。慈善家だったのかしら?」
「半分は趣味だと、貴族に生まれなければこんな仕事で食っていたのにとかぼやいてたらしいですね」
へー、貴族に生まれてよかったって人よりそういう人のほうが好感が持てますわね。というか会話の内容的に結構親しそうですわね?
「ちなみにその話はどなたから?」
「後見人の2人からです」
「ああ、そういえばそもそもその2人お話でしたわね、遺言があるとはいえバンサ伯爵家を継がなかったバンサ伯爵家継承一位とオドニー・バンサ伯爵のご友人のパド家令」
「ちょっと待ってください、エリーは後見人を知っていたのですか」
「えっ?一人だけですわよ?それで、もうひとりはどなたですの?」
「はい、バンサ伯爵家継承1位のジャック・リッパー男爵です」
は?ジャック・リッパー?なんで?
クラウ「(宮廷道化師の格好をしてピエロメイクのエリーを描かせられそうだから嫌だなぁ)」
エリー「(正式に画家に発注すると絶対めんどくさいからクラウに描いてもらいましょう)」




