ライエン侯爵周りの出来事
「そんなに信頼できる方がどうして……」
「さぁ?私は嫌いだったしね。なんかお父様には下手に出てたけど私は眼中にないって感じだった、おべっか使ってこないだけマシだけど本当にどうでも良さそうな感じ?お父様が死んだら私にすり寄ってきそうでやだなぁとか思ってたけど逃げた辺り私の能力の限界は知ってたんじゃない?まー、あそこで侯爵になっても回せなかったと思うしね。お父様が死んだって言われた時私思わず倒れちゃった」
「倒れた!?」
「ああ、たいしたことないよ。呼吸が止まってたってだけ」
「大問題じゃないですか!そんな……」
「だってねぇ、急にお父様が殺されただなんて」
「えっ?先ほど……」
「あっ、急死しただなんて……」
なぜそれを知っている!?表向きは急死のはず……。それを伝えた?伏せたいような事実を?先代国王なら同情ありきでまだしもあの国王が?伝える?伝えたうえで殺すつもりだった?
ああ、そう考えるとあの国王らしい。お前の親父は殺された、それはそれとしてお前も殺すし家も取り潰すとか言って反応を見たかったのかも知れない。あれは小物だしな。小物界の大物って感じだ。
小物界の大物が多すぎるな、シャハトといい、今の国王といい。小物界の小物みたいなバカ王子といい……。
いや、そもそもピア先輩は急死したとは言っていない、私が言ったことにそういうわねと返しただけだ、つまりピア先輩は自分の父親であるマルゴー・ライエン侯爵が殺されたを知ったうえで王宮部署案内役で働いて今も王城勤務している……?
どんな神経をしてるんだ……?エリーか?
内に復讐の炎でも燃やしているのか?だったらもっと早く動くか……公爵派閥、エリーが把握してない可能性は十分あるな。
ならばなぜあの司法大臣の棺桶で王城へ押し入る乱痴気騒ぎのときに動かなかった、いや動いたのか……?動いた結果があれか?エリーは根回しがあったと言っていたが……。
「……殺されたんですか?」
「うーん…………そうよ、よく考えたら貴族的な訂正をしても平民には通らなわね。あーしくじった、そりゃ言い間違いを追求されるわね。貴族だったら察して聞かなかったことにしてくれるわよ。まぁ……私も今は平民だし聞かれたら正直にいうか嘘つくくらいしか出来ないけどね」
あっさり教えてくれる辺り彼女も貴族教育はさほど受けていないのだろう。逆手に取っているのかも知れないけど。
「殺されたのに断絶なんですか……?貴族って恐ろしいですね」
「まぁ、王家も頑張って探してたみたいよ?気がついたら未解決で外戚の排斥の名目で断絶されたって感じ?だったかしら。ようは解決できなかったから死んで当然だったって感じにしたんじゃないかしら?急死は一応建前だったんじゃない?」
まぁ王宮で殺されて犯人が見つかりませんとか王家の面子は丸つぶれだからな……。あの頃はまだ潰れる面子があったんだな。いまはどれだけ潰しても潰れるものがないけど。
ん?頑張って探してた?まさか、どうせ格好だけだろう。
「見つからなかったんですね……。でも急死と伝えなかったのに急死に変えられたんですか……?ひどいですね」
「まぁ、そんなもんじゃない、それまではパド家令が捜査状況を伝えてくれたんだけどね、ある日呼び出されたら死罪とか言われてさぁ……。そこでパド家令が庇ってくれたんだよね。あれは知らなかったんだろうね」
「そうなんですか?」
「ほら、パド家令って結構顔に出るでしょ?だからギャンブル弱いんだけどさ、私に死罪って言われた時大慌てよ、反論も噛むし……そこでジャックさんが慌ててこれでは助けた意味がないって言っててね。まぁ、なんやかんやで王宮で干されちゃったってわけ。流石に長年王家家令をやっていたパド家令は飛ばせないからね、後任もいないし……ほかに信頼できる人物もいないからね。八つ当たりだったんじゃない?」
「そういえば助けたって……」
「ああ、そうか私が言い間違えたせいで……別に間違ってはないのか、その話の途中だったわね。それで倒れた際にパド家令が外で助けを呼びに行ったら登城しようとしてたジャックさんにあって治療してもらったってわけ。そういう意味では二度命を救われてるわね、当時は親戚とも知らなかかったけど……まぁ、貴族では親族だったり親戚だったり実は血族だったりなんてよくあることよ」
「へぇ~そうなんですね」
捜査状況を家族に報告する?パド家令が?警察ではなくパド家令が?しかもこの時点ではライエン侯爵家を潰す予定がなかったみたいじゃないか。
「結局、年が明けたら王命で登城せよと命令が出て死罪宣告よ。後はさっき言った通りパド家令とジャックさんが庇ってくれておしまい。それから2人が後見人になって王宮部署の案内やってたの。まぁ、断絶したとはいえねぇ、侯爵家の息女で本人は落ち度なしではそれくらいの地位につけないと後が面倒でしょうし……。旧ライエン侯爵領に墓参りにいって戻ってきたら王城メイドになってたってわけね」
「どうして王宮部署が?」
「さぁ?パド家令は自業自得だろうと言ってたけど……。悲しそうと言うよりは馬鹿らしいって感じだったわね、同僚の大半は処刑されたし。私は巻き込まれなかったんだけどね」
「タイミング悪かったら巻き込まれてましたね……危ないところでした」
ギャンブル強いだけあって運があるな……。
「それがジャックさんがたまには故郷を見て回るのもいいんじゃないかって言われてね、旅費ごとくれたのよ。お祖母様のお墓は旧ライエン侯爵領にあるしね……。没落してから一度も行ってなかったからちょうどよかったのよ」
リッパー医師が?王宮解体を察していた?偶然の可能性もあるが……。
「それになんとなくだけど、私もどっか出かけようかなって思ってたところだから乗っかったの、規定日数だったから帰ろうかと思ったんだけどなんか嫌な気がして数日ずらしたのよね。そしたら予定通りに帰ってたら到着日に王宮部署内で何人か殺されてたんだってー。まぁ私が戻った際には全部終わってたから実際誰が死んだのか辞めたのか正直知らないんだけどね、処刑されたのは知ってるけど」
本当に運が良いな、この人は……。
お茶会の準備をしてるエリー「くしゅん!」




