まだ終わらないですの!?
ワタクシのような人材がいたのはいいですわね、まぁ実際の仕事もよく回せてますし。これはもうワタクシがもう一人いると言っても過言ではありませんわね。
うーん、やはりワタクシほどの人間は何人いてもいいですわ、ワタクシは一人で十分ですけど、能力はやはり欲しいですわね。
地位には見合った能力というものが必要なんですわ、自分ができないなら部下に割り当てる能力、調停、調整能力、はたまた人望、失敗が多くてもなんとなく助けてくれるような庇護欲。
結果が伴わずとも許されるような努力をしただろうと確信を持てる普段の仕事っぷり。
それ自体は様々ですけど、能力があるのなら勝手に結果は付いてくるので別にいいですわね。
高い地位のくせに能力もなく努力もせずにふんぞり返る地方領主共など大乱を招くだけで存在する価値もありませんわ。
あと部下の功績を横取りすして報いないタイプの人間とかは派閥でも寝返りで崩壊する全長だからマジでいりませんわね。優秀な部下を報いて逆らわれるのと報いず逆らわれるのでは大きな差があるんですけどね。
公爵家は後者なので全力で王家をぶん殴りにくんですけど。
まぁ、ぶん殴った後ワタクシが至尊の椅子に迎えられて座るのがネックなんですけどね。
アーデルハイドが生きていれば……。
…………ま、どれだけ後ろを振り返ったところで死者は帰らず。ただあるべきところへ還るだけ。あんまりあの世なんて信じてませんけどね。
この1年でさんざん調整してきたじゃないですの、いいでしょう?農民反乱や平民反乱で滅びるよりはマシですわ。
じゃ、せいぜいこつこつ王家を貶めるとしましょう。シュライヒャーの力量に期待ですわね。
「ワタクシほど素晴らしい逸材がいたのなら使わない手はありませんわね、じゃ王都で頑張ってもらいましょう」
「え、ええ……そうですね」
「はい、そう思います」
なんか、言わされてる感じですわね。
鏡よ鏡、世界で一番美しいのは?えー、そうですね……あなただと思いますけどね、私はね、私はですよ?みたいな。
ああ、ワタクシより素晴らしい逸材ってことですわね。たしかにあなたよりシュライヒャーは優秀ですとは言い出しにくいですわねぇ……。別に本当にワタクシより優秀なら気にしないんですけど。
処世術ですわね、なら仕方ありませんわ。
まぁワタクシはこの2人を高く評価してますわ、的であった頃からルーデンドルフ侯爵は警察を握っていたのでとても厄介でしたしね。
実績もある、脅威に思わない法がどうかしてますわ。だからバカ王子を熨斗つけてくれてやった際はこれで能力が鈍ると思ったんですけどね。
貧乏神でしたわね、ワタクシにとっては幸運でしたけど、押し付けた時点でああなったのならやはり貧乏神だったかも知れませんわ。
「さて、シュライヒャーの王都招聘はおいておいて……。アルベルド司法大臣急死で話すことは以上でいいかしら?」
「私からは特に……どれが関係あるかと聞かれるとわからないので……」
「ジョージ王弟殿下のお母上が現国王就任後急死なさったことくらいです」
それアルベルド司法大臣関係なくないですか?
「まぁ……ありがちですわね、ジョージ第2王子が亡くなったとはいえ影響力くらいは……」
「側室であられたアガサ・キンゼー男爵令嬢のご実家のキンゼー男爵家はご両親の死後に後継なく、すでに絶えていました。そのためアガサ夫人が亡き後はジョージ第2王子殿下の子供がキンゼー男爵の爵位を所持するであろうと……」
「賜死で完全に断絶したと」
「はい、そのアガサ夫人の母であるキンゼー男爵夫人ご実家のバンサ伯爵家もライエン侯爵……シャルロッテ様の代で政争で敗北して断絶いたしました。オドニー・バンサ伯爵と言って少し変わり者でしたが……」
「変わり者?」
「政争での敗北後に病死したのですが……。親族にバンサ伯爵位を継がないようにと説得して回っていたのです」
「はて……?どう言うことですの?子息は……?」
「いませんでした」
「そうなるとバンサ伯爵位はどうなったんですの?」
「弟も親族も継がないので家は途絶えました。本来であれば家自体に借金があるなど問題がないのなら継がせるものなのですが……」
「不思議ですわね……」
「この処置はアルベルド司法大臣がいたしました」
ああ、なるほど。これが関係してるかもってことですか。
ゲルラッハ伯爵がこの感じとあまり知らないのでしょうね。
「どうしてそれを受け入れて継がなかったのですか?」
「さぁ……?わかりかねますが……。少なくとも弟も継がなかったことは確かですね、私はあまり詳しくはないのですが……たしか他の家の当主だったとか……」
「うーん、婿養子だったのですかね」
「かもしれませんね」
なるほどね、バンサ伯爵家の親戚あたりが陰謀に関わって司法大臣を殺した線もありですか……。
先代モレル伯爵が毒殺。善意か、それとも命令かまではわかりかねますが……。
諦めざる理由があった。
いや本当に貴族ってきな臭いですわね、今日一日で何度同じセリフ言ったかわかりませんわ!
「バンサ伯爵位を誰かが継ぐことはありえますか?」
「悩ましいですね……。キンゼー男爵家は断絶なのですが、バンサ伯爵家は断絶ではなく事実上の空位ですから……。」
「それはどうなっているんですの?」
「一族の者が旧領運営しているが屋敷自体は別のものが管理してるとか、まぁ……たまにあるものです、次代でそれらしい人間がいたら継がせる予定だったのでしょう。あるいは……」
「火種が爆発した後に継げと?」
「ええ、もっとも何が火種かまではわかりませんがね、あるいはシャルロッテ様が死ぬまでだったのかも知れませんが……。ジョージ第2王子殿下が賜死されたり情勢が悪化していたのではずれくじだと思ったのかも知れません」
「ふぅん……そもそも政争の原因は?」
「シャルロッテ様の旦那様が先代バンサ伯爵であるオズワルド・バンサ伯爵の弟、つまりオドニー・バンサ伯爵の叔父だったのですよ。その関係で揉めたそうです」
この期に及んで面倒くさい血縁関係出してきましたわねぇ……。
エリー「えーと……家系図があって……えーと?」
ゲルラッハ伯爵「ですからジョージ第2王子殿下の母上がキンゼー男爵家で夫人の実家がバンサ伯爵家でその当主弟がライエン侯爵夫君になって、次代のバンサ伯爵家が政争でライエン侯爵家に負けて空位になっているんです」
エリー「血縁近いですわね……」




