本当なら方針変える価値はありますわね
「うーん……じゃあ、王都にシュライヒャーを呼びますわ」
「「えっ?」」
「だって本物かわからないでしょう?」
「いや、それは……」
「お忙しいでしょうし……ねぇ?」
「ちょうど王都で一働きさせようと思ってたんですの」
蛮族のまとめ役と本物なら……まぁ、本物っぽいみたいですけど。
本物なら的確に邪魔な貴族への嫌がらせに回せますわね、喧嘩を売られてる家と公爵家自体に完全に敵対している家に王家派で色々しでかしてる家に……。
まぁよく考えたら表立った家はタイて喧嘩売られてるからぶっ潰しても問題ないですわね。向こうが殴ってくるのを待ってるのは静観してる家だけですわね。
そういえばララさんはどうしましょうか?排除するべき敵から引き込むべき優秀な職人になりましたけど……。
ま、まぁそちらはセーターの出来次第で見送りましょう。
敵は絶対に殺さねばならないわけでもないですしね。
絶対に殺すところもありますけどね、第2王子とかは普通に処断しますわ。
国王はいま殺すと面倒ですからねぇ……。うーん、まぁ王位継承に名乗りを上げてからの態度で決めればいいですわね。
「いや、でも……ねぇ?」
「私達でも……まぁ、活躍の場が必要ですし……」
「あら、それもそうでしたわね」
てっきりシュライヒャーに怯えてるかと思いましたけど、聞いた話が本当なら相当優秀みたいですしね、まぁそんな人物が王都で差配を振るったら功績が薄くなるかもしれませんわね。
ただでさえモレル伯爵を重用せざるを得なくなったのにここでシュライヒャーが辣腕を振るったらいささか派閥調整が面倒なことになりますわね。
うーん、やはりこの手のことはワタクシは苦手ですわ、子供の頃に任せる相手がいるから基礎だけでいいかと投げたのがよろしくなかったですわね。
ま、これで偽物だったら優秀な名前が同じなだけの人物でいいんですけど。多分確率的には1%位の数字で違う可能性もあるでしょうし、問題ないですわね。
「では一定の権限を超えないように任せますわ」
「え、ええ……」
「そうですか……」
「それに顔合わせをしておかないとうっかり巻き込まれるかも知れないですしね」
「そうですね!ぜひ顔合わせをしましょう!」
「いや、これはすぐに会えるよう予定を開けておかないと!」
本当に何やってたのかしら?
まー深く考えなくてもいいですわね、とりあえず呼び寄せる。おわり。
「では手紙を出しておきますわね、引き継ぎがなければ10日以内に来るとは思いますけど、もっと早いかしら?」
「「開けておきます」」
まぁ、王都で回せる人材が増えるのはいいことですわ。
キサルピナは動かせませんし、いやそろそろ……いいえ、まだ周辺国家に対してのちょっとした嫌がらせの種も蒔き終わってないからダメですわね。
あるいは……。
いえ、よしましょう。きっと皆様うまくやるでしょう、我が子達を信じるのもママの務めというものですわね。
「実際当時のシュライヒャーはどのような感じでしたの?」
「ユークリウッド伯爵は三代後なら宰相だと言われるほどの方でした。次代はシャルロット・ライエン侯爵、その次はジョージ国王陛下のもとで宰相になるであろうと言われるほどの」
「あら?現宰相閣下は?」
「足元にも及びませんよ、2人が消えて比較的中立派で優秀だったから起用されたに過ぎません。そもそもランツィンガー宰相の死後は宰相職はなくても回っていましたからね、まぁ当然といえば当然ですが」
「それは何故?」
「当時は国王陛下がいましたからね、亡くなられた後は……おわかりでしょう?ですからウィリアム第1王子は国王就任後すぐに任命したのでしょう。後は御存知の通り、櫛の歯が欠けるように減っていたのにヘス伯爵を失い、カール・マルスンは他人との不和を招くのが上手いおべっかだけのバカモノだったのに近衛騎士団長に就任して騎士団の対立は激化、王宮王城周りの警護に関しても引き継ぎに穴がありボロボロ、騎士団は完全に王城周辺の警護も援護も断って王都の平民街に本部を移しました」
「就任でそれは詰んでますわね」
「実際第2王子の教育を任された際には、公爵家への同情が完全にまさりましたね、意図的に作りあげられたバカだとは思いましたが、それがなくてもおそらくあれはバカです。間違いなく不義の子ではない。バカはああも似ないでしょう。いやあんなものが王太子になったら王国は1年で滅びますね、どうして第1王子殿下が事故でなくなったのか……あらためて涙がでてきましたね」
でしょうね、あれはもうそれどこではありませんわ。
「宰相に言ったら自分の時も話も聞かないから無理だと言われてふざけやがってと思いましたよ。まぁ……超法規的措置周りで真実だったといまではわかりますけどね、あれは王が振るべき権力も、王子が持つ権利も王太子の持つ権限すら理解していない。全て自分が振るえる権利だと思っている、教育係も1年ですべての教師がさじを投げましたよ、私もね……。辞める際に平民や男爵の三男から罵声を浴びて……これが1年前なら誰に言っているとでも返せたかも知れませんがね……彼らのキャリアにこうも傷を付けたら今後に差し障るので……黙って言われるがまま。何人辞めたかわからないですが、帝王学の担当者がこういって辞めましたよ。彼には早すぎる、人の心をまず学んでくれないと不可能だと。11歳ですよ?辞めましたよ、馬鹿らしくなってしまった。自分が王位についたら反対者を逮捕するようになんて平然と言うのですから……警察庁長官も辞めてやりました。部下たちは知っていますからね、仕事の最中に押しかけて不満を垂らしたり、自分を出禁にした店を摘発しろと喚いたりしていたあの姿を、私が教育係に付く前から……。だから宰相派の人間がどれだけ王家に寄り添おうと警察は動きません、悪に屈する警察がいてたまりますか」
ああ、バカ王子の噂の出どころは警察でも有りましたのね。
「ですが、私はユークリウッド伯爵ならこのバカ王子をまともに育てる能力があったと確信しています」
シュライヒャーの評価高すぎませんこと?流石にワタクシ達でも不可能だと思いますわ。
シュライヒャー「無理ですね」




