シュライヒャー!
ワタクシの声に2人がまさかと食いつき、尋ねる。
いや、こっちだってまだわかりませんわよ!ちょっと困ってますのよ!赤の他人だと思いたいんですけど!
「ご存知なのですか!?」
「まぁ、文書では家名を出されますからな、名前の方はそうは出ないでしょう。それで……どこで?」
どうしましょうかね、シュライヒャーが同一人物だと面倒かもしれませんし……。
それに元子爵とか言ってたし多分別人だと思いたいんですけど……。でも能力は結構ありましたわね、族長決闘でその座を勝ち取ったかはわかりませんが山脈西方を抑えていたあたり軽視はできませんからね。
独力で抑えていたとしたら……。まぁいいですわ、いまはワタクシの傘下、ワタクシの子。それ以外考えることはないですわ。
よく考えたら過去とかどうでもいいですしね、ハイ終わり。
で、目下の問題はこの場をどうやって切り抜けるかですわね……。
どうしましょうか?
「もしもユークリウッド伯爵が生きていたらどうなるかわかりません!」
「我々も巻き込まれて処分されるかも知れないのです!」
どんな人間ですの!あなた達は裏切りでもしましたの!
「自分を助けなかったと言うだけで殺しに来ます!なんとか教えて下さい!もしくはそのまま隔離をお願いします!」
「かろうじて存在する残党も間違いなく死にます!危険です!省庁の中堅官僚や補佐を担当してる秘書たちが軒並み死んでしまいます!デストラン男爵も殺されますよ!」
めちゃくちゃヤバイじゃないですの!元司法事務次官から息子が殺されて司法大臣秘書の就任と司法事務次官(2回目)就任という異例の復活を遂げたデストラン男爵が殺されたら司法省が止まりますわ!
ジーナを持ってしても一人で回しきれるような業務じゃありませんことよ!ふんぞり返っているだけでできるほど大臣の席は甘くありませんわ!
シュライヒャーがどう出るか聞くべきかもしれませんわね、まぁ……決まったわけではないですけど……。
でもこういうときの予感って当たるんですのよね、でも子爵って言ってたし……。
「昔、元子爵と名乗る方がそんな名前を名乗っていたのですわ」
「うわぁ!本物だ!」
「殺しても死なないとは思っていたが……」
「伯爵なんですのよね?」
「伯爵になる前、嫡男のときに功績により子爵位を授かっていたのです。ですので、当時は子爵を名乗っていたのです。先代伯爵の死後に伯爵に就任したのですが伯爵位が上位なので子爵を名乗れず、ユークリウッド伯爵を名乗っていたのです。シュライヒャー子爵と名乗るのは彼にとってはそちらが正式なものだからです」
つまり自分で勝ち取ったもの以外な価値がないと思ってるタイプ?
なんですのそれ……。
それって……。
最高じゃないですの!貴族も捨てたもんじゃないですわね!
やはり、人間たるもの、貴族たるもの、地位があるもの、人の上に立つものはそうでなくてはいけませんわ!
親から貰った爵位で偉そうにダラダラ仕事して血筋を誇るだけの屑以外を見つけると得も言われぬ感情が湧いてきますわね!
そうこなくては!
そうじゃなくては!
残念ながらシュライヒャーの存在は危険なものになりましたけど些事ですわ。
どうせ我が子は保護するだけのこと、保護に値する理由が増えたのならもうなんの問題もありませんわ!
問題解決、ワタクシの庇護下、ハイ終わり。
「満足気にしてないで詳しく教えていただけませんか?家族が巻き込まれるかも知れません!」
「いつ頃見たのですか!何処ですか!」
「今やその心配は無用ですわ、何の問題もありません。ワタクシにすべてお任せになるのならですが……」
めちゃくちゃ狼狽してますわね……。
ジョージ第2王子側近時代に何をしていらしたのかしら?皆さん若手の頃ですからね。さぞかし働いていたんでしょうね。
「本当ですか?」
「信じてもよいのですね?」
「ワタクシの派閥を害することはないでしょう。ありえませんわね」
「ライヒベルク公爵の派閥は……?」
「さぁ?ワタクシの派閥はワタクシが連絡してますし、わざわざ仕掛けるということは寝返りか、舐めて喧嘩でも売ったんでしょう。やった側に正当性があったらワタクシも不問にしますしね。相手が誰であったとしても」
平民がお祖父様相手にケツを蹴られたから蹴り返したって言っても不問にしますわ。
蹴ったお祖父様が悪いですし。
そういうものでしょう?無体を働いたらそうなりますわ、お祖父様がケツにいたハチを殺して平民を守るために蹴ったとかならわかりますけどね。
ケツって言うとみんな変な顔しますけど、意味が同じならおしりでもなんでも同じな気がしますけどね。
貴族の方々ってくだらない言葉遊びが好きなんですのね。
「本当に、本当に?大丈夫なんですね?私はエリーゼ公女派です」
「もちろん私も忠実なるエリーゼ公女派です。娘も」
「ああそう、私の娘もちろん、エリーゼ公女派です!当たり前過ぎて忘れてましたね!」
「いや私の娘も当たり前でエリーゼ公女派ですが、一応!一応ですよ!」
どんだけビビってますの?
まぁ、自分が勝ち取るもの以外価値がないと思うものは個人の実績がないものは価値がないと断じがちですからね。
なんか実際問題があったんでしょう。
とりあえずシュライヒャーは一度呼ばないとダメかしら?
それともこっちが行くべき?でも蛮族の王都流入で指揮を取らせることを理由に呼んでもいいわね。
なんでやることが増えたんですの……?
キャス「淑女がケツなんて言ってはいけません!」
エリー「なんでですの?」
キャス「淑女は言わないからです?」
エリー「ですからなぜ?」
アーデルハイド「下品だからよ」
エリー「同じものが?」
アーデルハイド「言い方よ!」
エリー「でも、アーデルハイドもこの前の貴族の子息との喧嘩の時舐めてんじゃねぇぞ、国境沿いの食料が配給されるといいわね!ケツに火がついてからじゃ遅ぇぞ!って……」
キャス「アーデルハイド!」
アーデルハイド「交渉は別よね」
エリー「喧嘩では?」
キャス「2人共、いいですね」




