なんでそんな話が関わってくるんですの!?
まぁ、そうですわね……。シュライヒャー族長たちには聞くべきですわ。
わが子から話を聞くだけですし、たいして困ることはないでしょう、私の傘下に入った時点で過去はすべて不問。当たり前ですわね?
お祖父様の暗殺未遂に関わっていたとしても私は別に何もしませんわ、だって我が子になった限りはそれ以降のやらかしはともかくその前のことを責めても仕方ありませんもの。生まれる前の子供を責める親がいるのですか?我が子でなければ公爵家としてケジメを付けさせますけどね。
生産性がない、唯自分を上に見せるためだけの説教は家族関係も組織関係にとっても害悪この上ないですわ。敵の前では有効だから平気で使いますけどね、それが蛮族イズム。
蛮族のほうが強者が全てだから楽なんですけどね。
そう考えると貴族っていけ好かないですわね……。
私も貴族でしたわね、まぁ似たようなものですわ、気にしない気にしない。
貴族も蛮族も同じようなものですし。
「では蛮族領域に逃げ込んだものはいないと考えてもよいのですか?」
「いいえ?」
「えっ?」
「どう言うことですか?」
「蛮族領域を公爵家が抑えてるわけではありませんもの、押してはいますわ。でも人によっては私が生まれる前ですからね。蛮族領域の奥深くにでも逃げていたり、奇跡が起きて蛮族領域を突破して、バーゼル山脈を突破してウィト王国にでも逃げてる可能性だってありますわ」
「確かに……広大な蛮族領域を細部まで情報として抑えているとは公爵家であっても思えませんしね。連中の逃走も公女殿下の生まれる前ですし……」
「エリーゼ公女もお若い時ですし、王都商会と王領襲撃以外にも噂では国境沿いでも小競り合いがあったと聞いています」
「事実ですわ、ですからドサクサに紛れて北方王領に潜伏していた貴族が蛮族に寝返っていてもおかしくないですわね、実はあの時の蛮族の焼き討ち略奪時に王都商会支店も誰かに開閉されたらしいですわ。あやうく連中を守っていたらワタクシも躯になっていたでしょう。なにせワタクシがいた城塞の門も勝手に開きましたからね、通達がおくれていた危なかったですわね」
「なんと!」
「そのようなことを表に出してよのですか!」
「あれは4歳のことですし、今ものうのうと潜伏してたら逆に褒めてあげたいですわね。この手で首を刎ねて殺して差し上げますわ」
「「…………」」
まぁ、王領もワタクシのいた街も、商会も門を開けさせたのワタクシですけど。
蛮族領域も抑えましたし、ウィト王国も介入中ですけど……。
まぁ今のところウィト王国に王国貴族はいないみたいですわ。名前は見たことがないらしいから改名してるか家名を捨てたかじゃないですの?
まぁそれくらいはするんじゃないかしら?命のほうが家名より大事だから逃げたんでしょうしね、家名が大事なら忠臣として死んで他の遠戚に再興を願っておけばいいですもの。
逃げた時点で家名は地に落ち、ただのゴミになりましたわ。
名乗り続けているならまだしも、名乗っていないならさらに価値はありませんわ。普通に接してあげましょう。
敵愾心を出せば潰せばいいだけ、その手の人間はあえて許される失態をして溜飲を下げるから態度にとって処分すればいいんですわ。内心クソと罵られても表に出さなければワタクシだってわざわざ罰しませんしね。
家族で悪口をいうもよし、同僚同士でヒソヒソ個室飲み会で悪口を言うもよし、酒場で平民の格好して文句を言うもよし。立場上漏れたらお仕置きするだけですわ。
万民に愛される人間なんてこの世にはおりませんからね。
その手の思想矯正にまで興味はありませんわ、元来ある貴族の仕事とあるべき姿をもう一度ぶち込んで働かせればいいことですしね。
「では、厄介な面子は逃走中ですか」
「ユークリウッド伯爵とかですね、あの方は戦もうまいし謀略も上手かった。ジョージ第2王子殿下の最側近ですが賜死後にシャルロット・ライエン侯爵が亡くなった際に逃走しましたからね」
「実際、派閥の連中は彼にすべての責任を押し付けようとしていたからな。相手が悪かった、家族を連れて逃走したまま行方不明だ」
「思い切りがいいんですのね」
「参謀にして懐刀にして派閥のまとめ役ですからね、彼が残っていれば別の形でジョージ殿下の派閥は残ったでしょう、優秀な方でした」
「あの方はまさにジョージ第2王子殿下の派閥の長でしたよ、私程度のものでは会えなかった、あの頃の私は警備局ですが……それを抜いても決して会えなかったでしょうね。彼から見たら私は所詮警察長官の父の威を借る息子に過ぎませんし」
「今ならきっと向こうから会いに来るでしょう、生きていればですけど」
「ハハハ……。会えばこの座を奪われそうです」
どんな人材ですの?よくもまぁそんな人材を蹴落とそうと……自分より優秀だからか。呆れた話ですわね。
まぁ、人間性によほど問題があった可能性もありますが……。そんな人間にまとめ役を任せてもろくなことにならないでしょうし、問題はなかったのでしょう。
「ユークリウッド伯爵という方はあまり知りませんが、家名ごと消されましたの?」
「ああ、それにはややこしい事情がありましてな……」
「こちらが通名なのですよ、家名で仕事をしてないを持論でしてな。親しくないものにも名前と爵位で呼ばせていたのです。実際能力はあったので……。偏屈ユークリウッドと呼ばれていました」
「名前と爵位はなかなかですが、まぁ珍しいものではないのでは?」
「公式行事でも」
「そりゃあ言われますわね」
家名で呼ばれるのが普通の行事で名前をメインに押し出すとか変わり者過ぎますわ。
偏屈と言うか、まぁ偏屈でも結構オブラートに包んでますわね。
「それで本当の家名は?」
「シュライヒャーです」
「は?」
まさか家のシュライヒャーじゃないですわよね?元子爵って言ってたし違いますわよね?
エリー「クセが強い人材しかいないんですのねぇ」
侯爵・伯爵「え、ええ……そうですね」




