ライエン侯爵家?王家が消してませんの?
「マルゴー・ライエン侯爵は何かで首筋を刺され即死、最後に会話したパド家令はライエン侯爵が普段通りであったことを証言しています。リッパー筆頭医師がそれを目撃して医務室へ向かっていました。リッパー医師は事件直後に呼ばれたため死亡診断をしました。入室後に王宮メイド2人がお茶を届けたあと立ち去っており、パド家令がそれを見ています。パウエル子爵と他愛のない話し合っていたところで王宮家令のワイト氏の仕事に関してだったそうです」
「ああ、そういえば当時の王宮家令はワイト氏でしたわね、パド家令は王家家令だった時代ですか」
「ええ、ワイト氏が王宮家令の職についた直後でしたので補佐をしていたそうです、そもそも前任の代行がパド家令だったので」
「あら?パド家令もお忙しい事。ちょうどその頃ですのね?」
「ええ、シャハト氏が失脚する直前に就任したので1年経ってませんね。王宮の出入り管理をしっかりしていなかったこともあってワイト王宮家令はこの件で叱責を受けましたが、パド家令がこの職務を教える前だったのでと庇ったので失職は逃れました。実際教えた部分に失態はなかったのもありますが……」
パド家令も愛想を尽かさないだけ大したものですわね。
叩けば埃が出てきすぎてなんの話してたんだかわかりませんわねぇ……。
王家情勢は複雑怪奇ですわね。
「その後は?」
「暗殺者を見つけられなかったこと、王宮部分で死亡したことは公表できないので大臣級に伝えたうえで急死ということになりました」
「事実私も初耳で驚いています」
「ゲルラハッハ伯爵も?」
「所詮は最高裁判所長官ですからね、アルベルド司法大臣がいたころならともかく……法務を外れたらこんなものです」
ライエン侯爵暗殺は計算外だとして、何が利益を?シャハト元財務大臣に接触させたくなかった?シャハト財務大臣が知ってそうなことは第2王子の賜死くらいでしょうけど……。ライエン侯爵が知って使える知識とは?不義の子であればむしろライエン侯爵にとっては不利だと思うのですけど……。
「ライエン侯爵は病死されたグリゼルダ王妃のご実家なのですよね?グリゼルダ王妃は第2王子出産後に肥立ちが悪かったとかで亡くなりましたけど。先代ライエン侯爵の……御息女でしたわよね?先代ライエン侯爵でよろしのですよね?女侯爵ではなく?」
「ええ、侯爵であっています。リューネブルク女侯爵のように女系優先ではありませんしね。先代ライエン侯爵のシャルロッテ様は公爵とご友人で融和派閥でしたが第1王子誕生後に第2王子領王解体後に過労でなくなりました」
あら?お祖父様とお友達だったんですの?それはさぞかし危ない人だったんでしょうねぇ……。
外戚で融和派は相当まずいですわね、度胸があるというかなんというか。
本当に過労かも疑わしいですわねぇ。
「シャルロッテ様は王宮政治に影響力があったので過労かは疑わしいとは言われていますが……。国王相談役でしたので罷免ならまだしもいきなり謀殺をしたら……現に公爵家との対立で舵を取れず、翌年ランツィガー宰相も会議中に倒れてそのまま……。次期宰相の呼び声が高かったシャルロッテ様の死は王宮に混乱を招きました、国王陛下すらも調査を命じるほどに。こちらはシャハト財務大臣に調査を任せましたが……過労であると。子息のマルゴー伯爵も当時は南部にいましたがシャハト財務大臣の報告を読んで事件性はないと判断したのでここで終わりました」
「そういえばルーデンドルフ侯爵が先程述べた報告メンバーに先代ライエン侯爵のシャルロッテ様はいませんでしたわね?」
「単純に退出していなかっただけかも知れません、少なくとも退出は見ていません。王の相談役なのでいたかも知れませんが……王命で飛び回ることも多かったのでその場にいたと断言はできません」
ふーん……なんでしょうね。
どうも一から十まできな臭すぎて手に負えないんですけど?
「その後のライエン侯爵家はどうなりましたの?取り潰し後には……」
「夫人はなくなっておりました、外戚排除は建前でしかありませんのでパド家令の助命嘆願もあって見逃されました」
「パド家令が?本当ですのゲルラッハ伯爵?」
「王家家令と外戚ですからね、それなりに親しいでしょう。特にライエン侯爵はあまりその権利を行使するタイプではありませんでしたし、グリゼルダ王妃生前も死後もライエン侯爵家は外戚の権利をあまり行使しませんでしたからね、せいぜい謁見を求める際にそれをかざすくらいで、それも緊急時だけなので法的にも越権と言うほどでもありません。私も一司法の人間として息女を罰することは不可能であるとは口添えをしましたし、リッパー筆頭医師も取り潰しの時点でこれ以上追い込むのであれば倒れた彼女を助けた意味がないと抗議されたため助命されました」
「助けた?」
「調査の関係上、ライエン侯爵の死とライエン侯爵家取り潰しを同時に伝えることになったため……パド家令が直接報告した際に気絶して、ライエン侯爵家を大慌て出たところで登城する前のリッパー医師を見つけて来てもらいなんとか……。呼吸が止まっていたそうで危なかったと」
危ないところでしたわねぇ……。
「最もこれ以降リッパー筆頭医師は先代モレル伯爵に押されるようになったと噂されていますが……宮中のバランスは複雑ですからな、本当かどうか」
「意外と芯が通ってるんですのね、リッパー医師は。御立派御立派」
……いまのは違いますわよ?違いますわ、けしてジョークを言ったわけではなく思わず言葉が出ただけですわー!
こんなつまらない言葉を言うわけではないじゃありませんの!
その目を止めてくださらないこと?
シャルロッテ「金と拳が全てを解決しますわ!対話の次にね!」
エリー「武力と財力が全てを解決しますわ!対話……?」




