王家らしい後ろ暗さですわねぇ
まぁ、第2王子の血族がいないことがわかればどうでもいい話ですわね。
あれ?ただの冤罪にしては口が重かったですわね?
ワタクシの派閥になったとは思えないほど……。
「亡くなったジョージ第2王子の評価、評判はどのようなものだったのですか?」
「聡明であると」
「貴族の支持がありました、当時のウィリアム第1王子殿下よりも」
「どの程度ですか?ゲルラッハ伯爵」
「司法省はジョージ第2王子殿下を支持していました。公然と」
陰謀?当時第1王子だった国王が継承のために謀略を使い罪をでっち上げて処断させた?
状況証拠だけで王位継承者候補を、しかも評判がいい方を賜死に?
状況証拠で黒と判断した?あるいは前国王の持っている情報と状況証拠で真っ黒になったがそれは表沙汰に出来なかった?
「先ほど一般的とおっしゃいましたがそれは貴族全員が知ってる一般的なものですか?ジョージ第2王子がウィリアム第1王子婚約者と不義密通をしている。ということが」
「貴族は陛下の不興を買って政治抗争の結果賜死を命ぜられた。と知っているでしょう。そしてそれが冤罪だった。当時第1王子婚約者であったグリゼルダ嬢を暴行しようとした。現陛下が冤罪を書けて忙殺させた。その程度です、その容疑が一方的な暴行疑惑ではなく互いの不義密通とまで知っている人間は多くありません、ランツィンガー宰相は漏らさなかったと思いますが……アルベルド司法大臣は息子には言わないと言っていました。裁判の感じを見ると本当に言ってなかったのでしょう」
「息子?いましたっけ?」
あれはただの元次長検事アウストリ、そうでしょう?ねぇ?いたのならきっと優秀な人間でしょうし。
「え、ええ……そうですな……」
「そうなると後は……父から聞かされてヘス伯爵が知っていれば今も軍務大臣か王の相談役でしょうね。当時のシャハト財務大臣も失脚しましたけど……漏らしていないあたりは……パウエル子爵は……どうかしら?フォルカー・パウエル子爵であってますか?」
「ええ、フォルカー・パウエル子爵です。いまや先代国王陛下から継いだ最後の相談役ですね。あの作家好きの」
「王都の娯楽小説は大抵読んでると呼ばれてる人ですわね。ふぅん……」
口が軽そうですけど信頼が厚い当たりそのへんは確かではあるんでしょうね。
シャハト財務大臣はこれをどうして使わずみすみす降りたのかしら?使えなかった?使う意味がなかった?
なぜ?死刑になるから?口を封じれば危険なことは確かですけど……。
レズリー伯爵と不仲で負けて失脚したのは確か、グリンド侯爵は……当時は繰り上がりだったはず。
なぜ?失脚理由は何だったかしら?
えーと思い出せんまわね……。
「シャハト財務大臣はいつ失脚しましたか?」
「えーと……確かあの年は……」
「例の茶会の年ですよ、娘を呼ばれて断ったしばらく後でしたね」
「あー867年の第1王子の婚約者茶会か、あれは大変だったな!なんて……いや、なんの問題もありませんでしたね」
「続けてくださいますか?ゲルラッハ伯爵?」
「いえ何もありませんでしたね」
あのお茶会のこと皆当てこすってきますわね?なんてひどい方たちなのかしら。
ということは余波だったのかしら?えーと、あの時のクラウは……なんか暗かったですわね。
えーと……思い出せませんわね……。
「失脚理由はなんでしたの?」
「表向きは……レズリー伯爵から不透明な資金の追求をされたことです」
「表向きですか、そちらが真実だと思ってましたわ。不透明な資金とは?」
「おそらく公爵家に対するなにかの陰謀でしょう」
「ああ、蛮族を支援していたことですか。商人にだけ吐き出させると思ってましたけど自腹切ってましたのね」
「「…………」」
あら?お二人共どうしました?黙り込んでしまって。紅茶が冷めすぎますわよ?
これはお茶会、貴族の細かい打ち合わせではありませんわ?紅茶を飲んだところで話し合い終了というわけではありませんのよ?
公然の秘密どころかお祖父様が公爵時代にそう言ってたではありませんか。何を今更……。
ああ、お祖父様のフカシだと思ってたのかも知れませんわね、信用がありませんわねぇ……。
「どうかしましたか?お茶くらい飲まないと、ねぇ?ゲルラッハ伯爵」
「そうですね……いや、知ってはいましたがこうもあっさり……」
「蛮族支援が本当だったというわけですか、この後に及んで……王家を滅ぼすのも選択肢だと言ったうえで、そのような嘘を付く必要はないですからね」
「まぁだからこそ公爵家の怒りは凄まじいものなのですわ。ワタクシをもっても面倒なほど」
それは嘘ですわ、蛮族を手中に納めた時点でもはや敵なぞいないから、一方的にくだらない物言いで利権に絡ませろなんて話しは聞く耳を持たなくてもいいですし、蛮族に襲撃されて亡くなってもらえばいいですからね。
話し合いができる人は生きてるし、利益も出してるから良かったんじゃありませんこと?
ああ、北方組合とかいう役立たず集団は消えましたけどね。
まぁワタクシを舐めてかかったんですからやり返してもいいでしょう、一発殴られたら殴り返す。これぞ文明人ですわね。ワタクシが法そのもの領地で死刑を命ぜられないだけ有情というものでしょう。
まぁ殺して財産没収はしましたけど、公爵領中央集権化と国王になびく連中の排除だけで物語が一つ作れますわ。
やはり最後に物を言うのは武力、すべてを砕く圧倒的な武力!
これさえあれば勝ちですわー!
「それほどとは……いえ、当然かと思います……」
「当家も同じような状況で宰相と戦ってますからね」
もう寝返ってるんですけどねぇ……。
まぁ仕方ないですわね、知らずに対立してるほうが油断も誘えるし置いておきましょう。
「それで、本当の理由はなんですの?」
「ああ、それは……陛下の不興を買ったことですね」
は?
エリー「うらぁ!剣抜け!決闘だ!」
公爵親族「え、エリーゼ!?た、助けて!ぎゃぁ!」
エリー「なんてことでしょう!蛮族に襲われて従兄弟の………再従兄弟?誰だか忘れたけど死んでしまいましたわ!」
蛮族A「うぉぉぉ!ママ万歳!」
蛮族B「族長万歳!」
蛮族C「決闘から逃げたこいつの死体を晒せ!」




