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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
忘れがちな裁判ですわー

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122/559

かくして愚者は退場し

 裁判そっちのけでミュージカルを披露する2人の口撃が終わったのを見計らいゲルラッハ裁判長はその職務を思い出し再度判決を読み上げた。


「アウストリ死刑囚を王都広場で絞首刑に処す」

「待ってください!裁判長!私は貴族です!ゲルラッハ伯爵家当主です!絞首刑などと……!平民にするような処刑を!名誉ある斬首か……」


 ようやく気がついたのか?誰もお前をゲルラッハなどと呼ばなかったことを。アウストリとしか呼ばなかったことを。

 あの王家が大臣の息女、しかもそれも大臣である令嬢の暗殺を命じていたやつを野放しにするわけ無いだろう?これでも俺の地位は高いんだぞ?

 これで知らんぷりをしてるほど間抜けであれば疾うの昔にここはエリーゼ帝国にでもなってるだろうさ。


 それとも国王と側近は保身と取り繕いの言い訳だけはうまいことを捕まってる間に失念したのか?それともここからお前を助ければ王家が逆転できる秘策でも教えていたのか?

 まぁ見捨てられたがな、もう少し上手ければやっぱり息子くらいは助けたかもしれんぞ?なにせ王家の汚れ役を買っていたんだからな。

 まぁ、いまとなってはお前の裁判の醜態でむしろ率先して殺しに来るだろうが。


「あなたは平民のアウストリ氏です。王族批判を含めて車裂きの刑にしてもよろしいが?死刑の内容は裁判長に一任されています」

「伯爵?ゲルラッハ伯爵でしたか?私は存じませんが……ゲルラッハ伯爵は死刑囚に爵位をお譲りになったのですか?」

「まさか、当家は娘が継ぎます。なぜ彼に継がせるのでしょう」

「当家は、ゲルラッハ伯爵家は分家ではないですか!何を仰る!」

「アルベルド・ゲルラッハ伯爵はお亡くなりになりましたが?ゲルラッハ伯爵?どういうことでしょう?」

「さて?私にもわかりかねます。かの御仁の血縁がいたらきっとゲルラッハ家は飛躍できたでしょうな」

「私はアウストリ・ゲルラッハ!伯爵家当主で、アルベルドの息子だ!このような……死刑になる人間に対しても敬意も……!」

「死刑囚に敬意なんているんですかね?次長検事としての貴方はとてもそのようには……少なくても貴方は猿ぐつわはされてませんし好き勝手言えたではないですか」


 公正な裁判アピールありがとう、ゲルラッハ裁判長。


「私の知識が少ないのかもしれません。なにせただの令嬢ですから。モレル伯爵?ルーデンドルフ侯爵?ゲルラッハ伯爵?もう一つゲルラッハ伯爵家があるのはご存知ですか?」

「存じません、ゲルラッハ伯爵家は当家だけです。分家はアルベルド伯爵の死後断絶しました」

「元警察長官として、現次長検事としてそのような貴族家は把握しておりません」

「存じません、シュテルン子爵家の令嬢が平民に嫁いだことは知っていますが」


 存在そのものを消す記録抹消刑とまではいかないが……分家のゲルラッハ伯爵家は先代で消えたことになったよ。

 これでお前が命じたことも何もかも全て独断ということになったんだ。

 お前が足掻けば足掻くほどこちら側は利があったのさ、公爵家がいかに王国……いや、国民に貢献しているかをアピールして公爵家が被害者であることもアピールして反王家の機運を高める。

 なにせ逮捕された時は伯爵当主だったのに裁判が始まったら孤児になっていたんだから平民だってただの剥奪と思うならそれでいいが、王家のやり方の汚さに気がつけば信望が勝手に落ちる。

 ここまで派手にやったんだからな。


 流石に気分で蛮族引き連れて王都を落とすわけにはいかないからね、ちょっとエリーはやりそうだから困るんだけどさ。

 もっとも当初の計画からはこの1年でだいぶ前倒ししてるけどな。


「そんなバカな!バカなぁ!」

「アウストリ死刑囚は孤児ですからね」

「冒頭陳述で説明を拒んだのでそのことを恥じていたのでしょう」

「孤児から次長検事までなったのに……何を恥じることがあるのでしょう?」


 冒頭陳述位は真面目に聞いておけばよかったな?

 まぁお前はチャンスの2択を外し続けたんだ、賭け事には向いてないだろうな。


 忠誠を溝に捨てた気分はどうだ?捨てられた気分はどうだ?

 お前は王家のやり方を民衆と貴族に晒すための道化に過ぎなかったのさ。

 こっちは殺されかけたんだ、これくらいしてもいいだろう?


「なぜだ!」


 なぜって……自業自得だろう?

 されたことは必ず返ってくるとも言うぞ?まぁあんまり信じてないがな、一般的にはそう言われてるんだ、なら仕方ないだろう?

 お前にはこの裁判で最小限の被害にする力も知恵もなかったんだからな。


「アウストリ死刑囚、王都広場にて執行です。こちらへ」

「なぜだ……」


 慟哭するアウストリ死刑囚を警備員が両脇を抱えて連れて行く。

 おそらく判決が降った後にシュテルン子爵家に子息を呼びに行ったのだろう、もう護送中だからこそ連れて行かれたのだ。あがきは無意味だったな。

 まぁモレル伯爵がでてこなくても執行する予定はあったが……エリーが5歳の子供を処刑するのは外聞が悪かった、後は本人も嫌そうだったしな。

 勝手に引っ掻き回してくれたせいでモレル伯爵が嫌われ役を買った形だろう。あとで傍聴人が冷静になってもモレル伯爵の方に注目するだろうさ。

 エリーも今後はモレル伯爵をまぁまぁな地位で使わざるをえないな。まぁあれだけの能力があるのなら別にいいだろう。


「これにて閉廷します」


 エリーは優雅に一礼しルーデンドルフ侯爵と退廷していった。まぁ検事だしな……。

 俺はしょうがなく一人で死刑を見ようと王都広場に向かうことにした。


「あらためましてこんにちは、スペンサー司法大臣」

「これはこれはモレル伯爵……ごきげんよう。でもよろしいのですか?俺と話し込んでも」

「なに、当家を貶めたアウストリ氏を庇えば王家から謝罪も引き出せるのに公正な裁判を行っていただいたのです。お礼を伝えることになんの問題があるでしょうか?これを悪く吹聴するような輩は私は許しませんがね」


 なるほどな、チクるしか能のない貴族牽制をしておきたいわけだ、俺に恩があるというポーズを取って会談か何かを持った場合に批判されたらこの話を持ち出すわけか、結構な数が聞いてるしな、貴族も平民も。


「モレル伯爵がよろしいのなら我が身としては言う事はありませんね」

「ではご一緒に道化の死刑を眺めませんか?私は道化が処刑されるのは見るのは初めてでしてね」

「俺も見た経験はないな、前例もあったかな?」

「では見届けないといけませんな、暗殺実行犯の裁判はもう終わったそうですよ?閉廷した後で友人がそれだけを伝えてくれましたので。あちらは車裂きの刑だそうで……」

「妥当だな」

「ええ、まったく」






「父さん!父さん!」


 絞首台で吊るされるアウストリ氏を見て叫ぶ彼の子息。名前は知らない、覚えてないな。

 これから始まるのは5歳の子供の首を刎ねる処刑だ。

 さぞかし同情を誘うだろうと思ったがそうでもないな。まぁ娯楽の相手が誰だろうといいのだろう。

 子供が死ぬのを嬉々としてみるのは狂気的でもあるが……。


「ようは不満が渦巻いているのです」

「でしょうね」

「貴族が死ぬこと、か弱い子供ではなくただの貴族の息子。いままで苦労も知らず安寧を享受している。贅沢をし、いい服を来て、高いものを食べ好き勝手生きている子供。どうして同情をしましょうか?新聞で褒められる貴族以外は敵なのですよ。私も仕事柄平民と交流はありますけど……『貴方はまともな貴族で良かった』とよく言われます。そんなに多くの貴族と接してないと思うのですがね、まぁ接している人もいるでしょうけども」

「それは王都の民ですか?それとも……」

「さて、どちらでしょうね?」


 逃げた各領の領民が王都に流れ込み不満が渦巻く、蛮族はひっそりそれを煽りあの領地は良かった、ここはひどいと噂を流す。

 前と計画が変わったからな、宰相がいつ頃寝返りを公言するか、宰相が領地対策に骨を折っているので別だと認識された時に一気に公爵派閥以外の悪政に対する不満が爆発するだろう。

 これが前か、他の計画が先か。

 アーデルハイドがいない今は過激な計画の増えたことだよ。


 君は本当にストッパーだったのかもな、俺は燃料だと思ってたけど。

エリー「こっちに来たけど別にすることないですわね」

ルーデンドルフ侯爵「でしょうね」

ゲルラッハ伯爵「いやいや、最高でしたよ!娘にも話してあげないと!いや~最高の気分です!うちの名産を送っておきます!」

エリー・ルーデンドルフ「「(相当ムカついてたんだな、あの分家に)」」

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