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ワタクシこそがトップに立つのですわー!  作者: MA
忘れがちな裁判ですわー

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かくして演者は揃い踏み

 俺は立ち上がり、仕事用の声量より少し大きくなるように発声した。

 おれもやろうと思えばできるんだぞ?公爵領でもちょっとやったしな、人形劇だけど。


「偽証罪は死刑もある。無罪の人間を死刑にする偽証をすれば死刑からは逃れないだろう。アウストリ死刑囚が無罪になれば弁護をせず同意を止めなかったアウストリ弁護士は死刑になる。アウストリ死刑囚が再度死刑になればアウストリ弁護士は罪には問われることはないが意味はないだろう。どちらにせよ結末は同じであるからやはり控訴の意味はない。それにアウストリ死刑囚が無罪になることは秘密の暴露が数多くあるためありえない」

「それも脅迫です!」

「では再度今度は裁判でやる認めず深堀りして調査する必要がある事件があるな。数年前の公爵と公爵令嬢の暗殺未遂は本人が命じて表沙汰にせずここまで来ていたのか?公表したほうが良かったと思うが?この事実の公表は避けてほしいと証言したのはアウストリ死刑囚だが?そもそもこの未遂に関しては犯行は当時の王宮の管理……」

「不貞だ!私の子供は不貞の子なんだ!裁判前の離婚調停の面会でそのことで頭がいっぱいになって裁判でやけっぱちになった!第2王子殿下は関係ない!そうだ!皆さん!第2王子殿下に暗殺などという迂遠なことができるでしょうか!出来ない!第2王子はバカなのです!死ねと命じたら死んで当然と思うような大アホなのです!思い出してください!市井で何をしていたでしょうか!娼館の料金を踏み倒し光栄だろうから金を出せという男です!料金を踏み倒し!酒場を追い出され!マッセマー商会を含む商館も出禁になっているアホなのです!そのような方に暗殺なぞ迂遠なことを命じられるでしょうか!殺せと周りにいうだけです!それでできるのが当たり前!癇癪を起こした子供に過ぎません!彼にその知性はありません!」


 ボロクソだな、まぁそう……傍聴人もあっさり納得するなよ……。

 まぁそうなるよな、でもそんなのが王太子候補だぞ?もう少し絶望しろよ。家に帰ってから震えろ。


 公爵と公爵令嬢暗殺未遂は第1王子存命時の事件だ、この事件とは別枠だが……省庁掃除課の前に暗殺を担当していた王宮部署の事件だ。おかけで王城は王宮と機能を分ける羽目になって王宮部分はほぼ解体されたんだがな。基本は名前だけ残った部署とほんの少しの要素部分しかない。

 表沙汰になったらどうやっても王家の関与は明らかだ。もっとも、それをどうやってしのいだかを説明することが出来ないからこそ、あっさりそちらの提案を飲んだんだぞ?

 まぁワタクシが撃退しましたわー!で通るわけがないからな。


 公爵と公爵令嬢の暗殺未遂まで表に出したお前も、血族の子息も、なんなら元嫁も終わりだよ。


「なるほど、ではヴィルヘルム第2王子の関与はなかったということですね?それぐらいの知性はあると思いますが」

「ありません!第2王子は最低の男です!知性もなく!覇気もなく!欲望を優先して貴方という婚約者がいながら娼館で女を買い漁り!とうとう王都娼館全てから出禁をされた男です!王城では婚約者の有無を問わず貴族の女性を寝室に呼び出し毒牙にかけようとする判断力もない馬鹿者です!いまでは侍女もメイドも貞操の危機を感じ従者しかいないほどの危険人物です!そのうえ全てに失敗している!今や暗殺を命じても彼のために働く人間はおりません!そもそもあの男のバカさは婚約者である貴方が一番ご存知のはず!」

「さて?たしかに婚約が決まった去年あった時はとても……困った方でしたが……」

「なおひどくなっています!あれにはそんな手間をかけることはできません!女の平民を呼び寄せろとしかいいません!性欲の化け物です!今すぐ婚約を破棄するべきです!」


 いくらなんでもそれはないだろう。関与をなかったことにしたいからと言ってもそこまで言ったら流石に嘘だろうとなるぞ?まったく甘いな。


「私も去年……」

「娘が襲われかけて……」

「ありえる」

「娘も王城で……」


 事実かよ!


「では、通常の控訴は棄却されましたが精神に問題が会ったのならそちらで再度裁判することに関してはやぶさかではありませんが」

「第2王子殿下の関与だけは違います!後はすべて私が責任をおいます!お願いいたします!第2王子に冤罪をかけたら元妻がどんなに遭うか!女性の皆様ならおわかりでしょう!そこだけは撤回していただきたい」


 言い訳はそっちで来たか、まさか第2王子を貶めて平民と貴族の傍聴人を味方につけるとは……。バカ王子ならやるという信頼感がまた……。

 エリーも公爵令嬢顔で聞いてるが少しイラッとしてるな、まぁバカ王子にひっくり返されかけたらそりゃムカつくわな。

 まぁどっちにしろバカ王子がやったとは言い出したエリーも信じてないからいいのか。


「ではまぁ……公爵家はアウストリ死刑囚の元奥さんのことを考え告訴を断念します。事情が事情ですので」

「致し方ないでしょう」

「司法大臣としても事情を考慮して告訴断念を願いたかったところだ」


 第2王子なら乱暴を働くことを公然の事実にしたな。するだろうが。

 じゃ後は最後のあがきを見るとしようか。


「では司法大臣として不貞の相手が誰かを聞く必要がある。ただの死刑確定なら即日で良いが、族滅となれば執行書のサインが必要だからな」

「ええ、もちろん。アウストリ死刑囚。不貞相手はわかっていますか?わかっていないということはないと思いますが?離婚調停の面会で頭がいっぱいになるのですからその場で伝えられたのでは?」

「はい!そうです!相手は……モレル伯爵です!」


 そう来たかぁ……表向きは王の側近で信頼厚く先代から重用されてるわけだもんな。最後にすがるのにちょうどいいわけだ。それにここにいなければあることないこと言いたい放題だもんな。

 国王もそう言うことにしろと命じるか、それとも自分たちに疑惑を向けたことか、第2王子の批判のことで拒否するか。

 国王側近の反応次第で決めるだろうな。


「モレル伯爵?王宮医師団統括で国王専属マッサージ師で王城マッサージ室の最高責任者であるケルステン・モレル伯爵?」

「そうです!ケルステン・モレル伯爵が妻の不貞相手です!元妻の不貞相手です!実は離婚理由も不貞です!」

「では慰謝料はどうしましたか?」

「子どもの為諦めました!死刑囚にお金が入っても仕方ありません!血が繋がらなくても5歳まで我が子として育てたのです!どうして愛情が薄れましょうか!」

「先代のテオドア・モレル伯爵ではありませんのですね?」

「はい!当代のケルステン・モレル伯爵です!」

「そうであればモレル伯爵に話を」

「不要ですよ」


 傍聴席から小さいがよく通った声が遮る。みんながそちらを見ると傍聴人席からそっと立ち上がり一人の男がかつらを外した。

 ちらりとエリーを見ると令嬢の化けの皮が少し剥がれていた。仕込みじゃないのかよ。


「皆様、お初にお目にかかります。伯爵の位を授かっております。ケルステンでございます。傍聴人の身でありながらここで発言することをお許しいただきたい。理由としては私の名誉を著しく傷つける発言があったからに他なりません」


 お前らここ大衆演劇場じゃねぇからな!

その頃のクラウ


シャディ「(なんで10連敗して金貨巻き上げられてるんだ……)」

ピア「だめよシャディ、私のフラッシュを見抜けなきゃ」

シャディ「いや、参りましたね(確率的にも残り札的にもそれしかないものを引くなんて……)」

パド家令「お、やってますね」

シャディ「(よし!取り戻せる!)」

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