真面目にやって?どっちも
エリー「(クッソつまんねぇですわね……)」
「意見陳述はないものとします、他に被告兼弁護士であるアウストリ氏。よろしいですね」
「ありません、事実です」
実質ここで終わりだな。閉廷閉廷。まぁちゃんとやるぞ?あの呆れた超法規的措置斎場みたいな投げっぱなし適当葬式裁判で済ます気はない。観客もいることだ、せいぜい演じてくれ。
「審理を開始します」
「えー冒頭陳述を開始します。まず被告人の家族構成は……」
「無用です」
「そういうわけにもいかないのですが……」
「認めていますので、それに家族にしろ経歴にしろ無意味でしょう。王家に反するものの暗殺を指示した。それだけです」
「あーそれでは……証拠調べに移ります。暗殺に関しては証拠となるものが暗殺者である人間の証言のみでありますが……司法大臣暗殺命令に関してはすべてが揃っておりその後の自白もあります、他の証拠ですが」
「認めます」
「まだ何もしてないのですがですが……」
「認めます」
「まぁ本人が言うのならいいでしょう……」
失言を防ぐために全部肯定か、まぁらしいといえばらしい手段だ。
「証人尋問を……」
「不要です。冒頭の全ての罪状を認めます。弁護士として閲覧した証拠はすべて正しい。さ、弁論手続きへどうぞ」
「弁論手続きを開始します」
さて、これでは即日裁判だな……。まぁ。わかっていたことだけどな。
エリーもつまらなさそうにボールを指の間で動かしてる、何してるんだ?
ん?右手のボールが消えた……消えた?左から出てきた、マジック?何やってんだ?まぁ裁判の見どころはなにもないが……。
「えー……そうですか、じゃあ暗殺者の指示したのは」
「ですから認めます、私です」
ボールを握って……消えた?
こちらを見たエリーは俺の大臣服のズボンのポケットを指差す。
なにもないぞ?するとエリーは俺の胸ポケットを指差す、だから……花?いつの間に……。
エリーが指をパチンと鳴らすと花は花弁がぽとりと落ち、もう一度俺のポケットを指差す。ボールだ……なんで気が付かなかったんだ?これマジックか?魔法じゃない?
「暗殺指示、司法大臣室の資料の窃盗に隠匿、シュテッチ検事総長に罪を背負わせようとしたのも横領も中抜き指示も収賄も脅迫もすべて私の判断です」
「まぁ罪状認否も有罪を認めてましたし……」
なんか進んでる……。
「えー……検察は死刑を求刑します」
「弁護側」
「認めます」
被告側が求刑された死刑を認めるってなんだよ……。
「弁護側、弁論は?」
「すべて認めていますが、認めていただけるのでしたら話したいことがあります」
「裁判に関係あることでしたらどうぞ」
また司法批判かな?まぁなんでもいいや……。
「まず、私はすべての罪を認めて死刑を受け入れます」
はい御立派、御立派。同情誘いか?今更……平民をいまから味方につけるように動くのか?厄介ではあるが……。
「だが私がそれをしたことには理由があります」
被告兼弁護士だから弁論か最終陳述かわからないな。
「この国は危機にあります」
バカな国王とお前達のせいでな。
「私はその危機を回避するために全力を尽くしたに過ぎません」
むしろ悪化させてると思うが。
「なぜこのようなことになったのでしょう?」
政治かな?なんだ父親を見習って国王を起訴するのか?もう検事の職は剥奪されてるぞ。
後なぜって……。お前が私の暗殺を命じたからだろ。国のことならお前らだよ
「なぜ国家はここまで追い詰められたのか、ひとえにそれは内務大臣であるライヒベルク公爵のせいです」
ちらりとエリーを見るとニヤニヤとして当事者席の馬鹿を見ていた。ようやく暇つぶしができると言わんばかりだ。
さんざん暇を潰しておいて……。
「内務大臣として地方の困窮と国家の財政の再建をなせていない、内務大臣にはその権限があるにも関わらずだ!この地方の困窮は内務大臣のせいであり、私腹を肥やして王国を貶めている!」
どっちかといえばレズリー経済大臣かグリンド前財務大臣の責任じゃないか?
まぁ、何したところでグリンド前財務大臣がノーといえば通らないからな、レズリー経済大臣も困っただろう。まぁ裏のつながりでマッセマーやエリーが財務省を置き去りにしてさんざん稼いだみたいだが。
地方行政を管轄する地方局があるからだろうけど……領主が聞くわけ無いだろ。王領の代官ならまだしも土地を治めてるのは貴族だぞ?
あんな局は国境に要塞を作れとかそういう命令を下したり、飢饉の場所に食料増産の指導するようなものだぞ。そもそも地方困窮に関しては宰相の職務権限だと思うが……。
大抵口を挟まれたくないから誰も陳情しない、一昔前は地方局が貴族を脅して賄賂を奪い、不祥事を隠蔽し問題なしと報告する天下り貴族が小銭を稼ぐだけの局だったんだぞ?関わりたいわけあるか。
今の内務大臣が綱紀粛正で公爵派閥で固めきるまでは内務省なんて国王と宰相含む国王側近衆の腰巾着で失政の責任を押し付けられるだけの組織だったじゃないか。それでもなお関わりたくない人間は多いだろう。
まぁ平民は知らないから押し切ろうと思えばできるかもしれないが。
「今この苦境は誰のせいか!私は胸を張って応えよう!」
胸を張るなよ、張るくらいだったらお前がなんとかしとけ。
「内務大臣のゲハルト・ライヒベルク公爵だ!」
国王そっちのけになるけどいいのか?国王の権力公爵以下だって認めることになるけどいいのか?
これは超法規的措置裁判より短く終わりそうだな、即日終了だな。エリー出番だよ。
エリー「(面白くなってきましたわね)」




