放課後
ガヤガヤと今日の最高の喧騒が教室を覆う。舞島さんはひらひらと手を振って、席を立った。彼女は小悪魔のようなその笑顔を見せた。俺は彼女に遊ばれているのかもしれない。彼女の退屈しのぎの玩具であるようだ。
俺も席を立ち、大勢の人が階段を下るなか、俺はのぼる。奴がいるのは、放課後の屋上だ。不思議な人間だ。奴のことは何も知らない。どうして、俺の知り合いにはこうも深く知らない不明な人間が多いのか。
そう、考えながら屋上に繋がる扉の前まで来た。ドアノブを捻る。ガチャリと扉を押す。風が吹いた。生暖かい春の風。どこか、浮足だってしまいそうになる。足が地を離れることはないのに。
「やあ、今日も来たのかい。君は暇なのかな」
優しく迎え入れるように微笑む彼女がいた。国枝だ。彼女は毎日のように屋上にいた。口には棒状のラムネをくわえている。
「国枝さんは、いつもそれをくわえてますね」
「口が寂しくなるんでね」
彼女はそれから、続けた。
「新自由主義の社会じゃないか。こういったことも許される」
「国枝さん、たぶん新自由主義の考え方間違えていますよ」
「いいじゃないか。道具主義的な考え方だよ。新自由主義という言葉が私にどう役立つのか。言葉はラベルだよ。ラベルを貼り間違えることだってあるさ」
「言語ゲームの世界で生きてるんですから、そのルールがややこしくなるようなことしないでください。そうでなくても、言葉は正しく人に伝わらないんですから」
「それはすまない」
二人で、二人だけの世界が構築されている。それは、少しめんどくさくて心地良いものだった。もしかしたら、俺はこの空間を楽しむために屋上に来ているのかもしれない。
彼女は胡坐をかいて、屋上から広がる景色を風に吹かれて愉悦している。
俺も座りこみ景色を風を楽しむ。
変な放課後を過ごす。




