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アレンルート

「クララは、こういうプレイが好きなのか?」


「違います、だってアレン様が……」


 今、アレンは壁に張り付け状態になっている。首筋にキスを落としてきたアレンは同意のもとだからとドレスをはだけさせながら下へ下へとキスの雨を降らせるのだ。


 思わず氷魔法を使ってアレンを張り付けにしてしまった。アレンが困った顔で俺に言った。


「では下ろしてくれないか」


「でも、下ろしたらさっきみたいなこと……」


 思い出しただけでも顔が耳まで真っ赤になる。アレンが悲しそうな顔になり、恐る恐る聞いてくる。


「嫌だったのか? 俺が初めてで下手だからか?」


 え……初めて? あれで? 


 痺れるようなあの舌遣いは素人のそれではなかった。応急処置と言う名のキスの時だって、頭が真っ白になるほど蕩けて……考えるな。考えれば考える程、頭の中がアレンでいっぱいになってしまう。


 でも氷で張り付けにしたままはまずい。長時間は凍傷になりかねない。渋々魔法を解くと、アレンは俺の横に座り直した。


「ごめん。もっと上手くなるよう努力するから。嫌いにならないでくれ」


 いやいやいや、これ以上上手くなられたら困る。


 そんな捨てられた子犬のような目で見ないでくれ。いつもの威勢はどうした。俺が返答に困っていると、更に聞いてくる。


「やっぱりダメか? 俺のこと幻滅したか?」


「いえ……幻滅もしてないし、嫌いにもなりません」


 そう言うと、アレンの顔がパァッと明るくなった。調子が狂ってしまう。


「俺は嬉しかったんだ。あの時お前が俺のこと好きって言ってくれて」


「え……」


 あの時っていつだ。いつ俺はアレンに好きだと言った。答えが出ぬままアレンは俺の手をとって繋いできた。もちろん恋人繋ぎだ。そして、俺に言った。


「ずっと考えてた。どうやって俺だけのものにしようかって。何度も連れ去りたいと思ったし閉じ込めたいとも思った。お前がいるなら人類が滅亡してもそれはそれで良いとさえ思っている」


 アレンの愛が重すぎる。フィオナより重いかもしれない。


「はは、大袈裟ですよ。それより私は監禁されるところだったんですか?」


「いずれな」


 何故だろう。そんな憂いを帯びた顔で言われると、監禁されないといけないような気分になってしまう。そして一番気がかりな事を聞いてみる。


「でも私は今は女を演じてますが、本来は男で……」


「そんなの関係ないと一番最初に言っただろう。俺はクララの容姿は非常に好きだ。だが、それはクライヴだから良いのであって他の奴ではダメなんだ」


 アレンの本気さが伝わってきて言葉に詰まる。アレンが俺に向き直り、再び見つめ合った。その顔は今にも泣きそうだった。アレンは俺の頬を触りながら言った。


「お前とフィオナが愛し合っているのは知っている。でも俺はもうクライヴがいないと生きていけない」


「アレン様……私はどうすれば……」


「俺とお前は相思相愛だが、不安でしょうがないんだ。俺とお前が繋がっているという証明が欲しい。ダメか?」


 肉体関係を持てば確かだ。その事実は消えないから。だが、俺は恋愛感情でアレンを好きなのではない……多分。


 でもそれをそのまま言ったらどうなるのだろうか。先程もいずれ監禁すると言っていた。このまま一生監禁される可能性が高い。それは困る。


 かと言って肉体関係を無理矢理に持つのもおかしな話だ。俺は頬に当てられたアレンの手に自分の手を重ねて、正直な気持ちを話す事にした。


「アレン様も大切ですけれど……やはりフィオナが一番大切なんです。離れ離れになりたくない。だから……ごめんなさい」


 そう言うと、思った通り悲しい顔をするアレン。アレンの魔力が溢れてきているのが分かる。このまま監禁か――。


◇◇◇◇


 半ば諦めていたのだが、その日はそのまま帰された。そして、アレンに外出許可をもらわなくても外出出来るようになった。


「アレンが来ないと寂しいな」


「はは、クライヴ様、あんなに文句言っていたではないですか」


 ルイの言う通りなのだが、毎日来ていたアレンが姿を見せなくなるのは寂しいものだ。きっと、俺が繋がりを拒んだからだろう。


 エリクはゲームのアレンルートは逃げられないと言っていたが、現実はやはり違うのだろう。監禁もされなければ軟禁も解除された。ルイがお茶を淹れながら言った。


「明日から学園が始まるので、会えるじゃないですか」


「そうだな」


 そう、冬休みもあっという間に終わり、明日から三学期。いつの間にか二年生も終わっていそうだ。


 ――まさかアレンがヤンデレの最終形態になっているとは、今の俺には知る由もなかった。

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