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ヤンデレタッグ

 アークライト邸では皆が混乱していた。


「ルイ! お義兄様がいないの! お義兄様がどこにもいないのよ!」


「お嬢様、落ち着いて下さい。今フィンが探してくれていますから」


 トイレから戻ってきたフィオナとレナの前にクライヴはいなかった――。


『お義兄様? どちらに行かれたのかしら』


『少し待ってみますか?』


『そうですわね』


 暫く待ってみたが、クライヴが一向に帰ってくる気配はない。護衛についていたルイも流石におかしいと思い、周囲を探すが見つからない。


 ちなみにルイはクライヴに言われ、フィオナに付きっきりだった為、攫われた時はフィオナに付いていた。


 ――というわけで、フィオナとレナは一旦屋敷に戻り、現在フィンに頼んでクライヴを探してもらっているところだ。


 皆がフィンに注目するが、フィンは目を閉じて首を横に振って言った。


「駄目です。ご主人様の魔力を感じとれません」


「そんな……。どういうことですの? お義兄様は無事なの?」


 フィオナの顔が青くなり、立っているのもままならない。レナがフィオナを軽く支えながら言った。


「私が占ってみます」


 レナが水晶の中を覗いた。そんなレナに縋り付くようにフィオナはレナを質問攻めにした。


「どうですの? 何が見えますの? お義兄様はどこですの?」


「居場所までは分かりませんが、もうじき知らせが来ると出ています」


「知らせ? ルイ、早く確認してちょうだい。何か届いているのではなくて?」


 ルイもすぐさま部屋をでて確認しに行く。しかし、それらしき便りは来ていなかった。


 シュッ!


 再びフィオナの元に戻ろうとしたルイの横を何かが通った。そこには文が括り付けられた矢があった。ルイは急いでそれを広げて一読する。


「これは……」


 状況を把握したルイは、フィオナの元に戻り、机の上にその文を広げた。


「これはどういうことですの!? わたくしはここにいますわよ。お義兄様が一人で来いとは?」


 混乱しているフィオナにルイが言った。


「クライヴ様はフィオナ様と間違えられて攫われたのかと……」


「どうしてなの? どうしてわたくしが?」


「まずいことになったな……」


 アレンがどこからともなく現れ、呟いた。


 すぐさまフィオナがアレンに詰め寄った。


「アレン様、何かご存知ですの!?」


「詳しくは後で話すが、敵はクライヴを狙っている。攫ったのがフィオナではなく当の本人だと分かれば最悪殺される」


「ですが、お義兄様は強いですわ!」


 混乱しているフィオナにアレンはゆっくりと話した。


「ああ、分かっている。だが、フィンが魔力を感知できなかったのだろう? 恐らく魔力を封じられている。その上、縛られていたら手足も使えない可能性が高い」


「それって……」


 フィオナの顔が再び青ざめた。そんなフィオナにアレンは言った。


「フィオナ、一緒に助けに行こう。フィオナの力が必要だ」

 

 ――時は少し遡る。


 アレンはクライヴが攫われた事を知って、すぐにエリクの元へ向かった。もちろん転移で。そして、ゲームの知識と現状を照らし合わせてもらった。


『本来、クライヴはモブです。しかし、裏ルートではクライヴの力を欲した敵がクライヴに接触し、味方につけます。


 ゲーム内ではフィオナとクライヴは険悪の仲、正に敵同士。フィオナはクライヴを助けようともしないし、クライヴもこの世界が嫌いだった。なので、ゲーム内ではただの疾走という形であっち側に付きます。


 だが、現実はクライヴの性格も違うし、フィオナとの仲はすこぶる良好。通常の接触の仕方では、敵はクライヴを味方に付けることは困難。そこでフィオナを使うことにしたのでしょう。


 今までの奇襲から考えて……脅威は潰すに限る。だが、味方についてくれれば儲けもん。くらいな考えだと思います。


 なので、フィオナとクライヴが間違われて攫われたのであれば、味方につける交渉材料はクライヴの死しかない。クライヴは迷わず死を選ぶでしょうね。


 現状、ゲームとは全く違った動きをしている為、ゲームとは真逆の事をすれば助かるかもしれない。つまり、ヒロインのフィオナがクライヴを助けに行けば……』


 アレンは最初、自分一人で助けに行こうと思っていた。しかし、敵の数も分からない上、クライヴを人質にされればアレンは逆らえない。


 戦場に女性を巻き込みたくないという思いはあるが、背に腹は変えられない。そして何より、アレンとフィオナは似ている。愛するものを奪われてじっとしていられるわけがない。


 アレンはエリクの見解を信じてみることにした――。


「フィオナ、クライヴを助けに行こう」


 フィオナは先程までの不安な表情から一変し、強い意思の籠った瞳でアレンを見上げながら言った。


「もちろんですわ。わたくしのお義兄様、取り返しますわよ」


 こうして、ここにフィオナとアレンのヤンデレタッグが誕生した。


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