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お義兄様を見守る会

※フィオナ視点です※

「ルイ、なんですの。あのふわふわの生き物は」


「あれはクライヴ様の使い魔でして……」


「それは何度も聞きましたわ! わたくしが言いたいのは、何故我が物顔でお義兄様の膝の上にいつもいるのかってことですわ」


 そう、お義兄様がダンジョンで拾ってきたウサギ。あろうことか、お義兄様の使い魔になるだなんて。


 キー、羨ましすぎますわ! 


 わたくしも、お義兄様の膝枕で頭を撫で撫でしてもらいたいものです。


「さて、フィーよ。いつものを言っても良いかな?」


「どうぞお好きに」


「ああ、今日のフィーは白銀に輝く月のように美しい。その輝きで夜空を照らしてくれる君は最高に綺麗だ」


 お決まりの美辞麗句を並べるのはステファン様。これをしないと調子が狂うのだとか。変わったお方よね。


 そして何故今日、ステファン様とルイとわたくしで集まっているのかと言いますと——。


 なんと、わたくし『お義兄様を見守る会』なるものを立ち上げたのでございます。


 以前公爵家に招かれた際に、ステファン様はお義兄様が大好きだということが発覚致しました。


 わたくし『お兄様愛好家』としては黙ってはいられません。女性の同類は必要ありませんが、男性であれば大歓迎です。


 ステファン様と話し合い、この会が立ち上がりました。もちろん、わたくしが会長、ステファン様が副会長です。


 ルイにその話をすれば……。


『どうして私を呼んでくれないのですか! クライヴ様がオムツをしている時から私は常に一緒なのですよ。クライヴ様命です!』


 と、ノリノリで入会致しました。


 そんなこんなで、この三人で何度か会議をしているのでございます。


 ちなみに、以前お義兄様の魔法の特訓をしたのですけれど、それもこの会議によって決まったものです。


「それにルイもルイよ」


「私ですか?」


「そうよ。わたくしがお義兄様と熱い抱擁をしている時に邪魔するだなんて。今までにない程、わたくしを強く求めていましたのに」


「だが、フィーよ。君はもうアレン殿下と婚約してしまったではないか。形だけとはいえ、残念ながらとやかく言える立場ではなくなってしまったのだ」


「本当に、アレン殿下と婚約なんて不本意よね……」


「それでお嬢様、何か掴めたのですか?」


「それが全然なのですわ。アレン殿下は表舞台に立たないから黒い噂の一つや二つあると思っていましたのに。誰に聞いても素晴らしい王子様と言うのです」


 何を隠そう、わたくしフィオナは諜報活動なるものをしているのです。あれは、思いもしないアレン殿下からの婚約の申し込み——。

 

 もちろん却下のはずだったのですが、あろうことかアレン殿下は、わたくしを脅してきたのです。


『クライヴがいくら天才と謳われようが一介の貴族令息にしか過ぎないが、俺は王子なんだよ。その意味が分かるかな?』


 わたくしも馬鹿ではありません。このまま逆らえば、お義兄様に何をされるか分かりません。


『世界を変えたい』ですって? この世界の何がご不満なのでしょう。


 ここは相手の懐に入って様子をうかがうのが得策だと判断致しました。要はアレン殿下と婚約したのです。


 ですが、いずれは婚約破棄して、お義兄様の元に帰りますからね! 待っていて下さい、お義兄様!


 そして今に至るのですが……。


「何が悲しくてわたくしはあんな男と……そして、お義兄様はあのもふもふとイチャイチャですわ。立腹ものですよ」


「まぁまぁ、フィオナお嬢様、クライヴ様はお嬢様に似ているから可愛いと仰っていましたよ」


 まぁ! それはつまり……お義兄様はわたくしの胸に顔をうずめて眠ったり、わたくしの体を隅々まで撫で回したいと思っているの!? お義兄様ったら……。


「そういうことなら良いですわ」


「赤面して何を如何わしい妄想をしておるのだ。そんなことより、この間のダンジョンの件は予想外であったな」


 ステファン様が何か仰いましたが都合の良いところしか聞こえませんわ。


「本当ですわ。お義兄様がルイと抱き合うなんて、予想もしておりませんでしたわ」


「あれは、私も感動致しました。クライヴ様が私のことをあれ程までに想ってくれていたとは」


「お前達、わざとやっているだろう」


 ルイは嬉しそうですが、ステファン様が呆れた表情をするので本題に戻ります。


「ダンジョンの件ですが、王城でも噂になっておりましたわ。あれは誰かが故意に仕掛けたことのようです」


「故意にですか?」


「誰かは分かっていませんが、あんなことが出来るのは相当魔力の強い者ではないかという噂ですわ」


「魔力が強いとすると、上流貴族か……王族ですかね」


「やはりアレン殿下が関わっているのだろうか。『世界を変えたい』とはどういうことなのか……」


「殿下が関わっているとなると……お嬢様くれぐれもお気を付け下さいね。何かあればこの魔道具ですぐにお知らせ下さい」


「分かったわ」


 わたくしのものに手を出そうとした報いは、しっかりと受けて頂きます。

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