表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/104

何故最下層に①

 デュラハンは確か……上級。ここは冒険初心者のお試しコースのはずだ。何故ここにいる。


 キーン。


 考える暇を与えてはくれず、もの凄い速さで斬りかかってきたので必死で受け止める。受け止めるのが精一杯で、反撃できない。


 一方的に押されていると、ステファンが俺とデュラハンの間に水壁を作った。おかげで一旦距離を置くことができた。


「僕でもアレは倒せないかもしれない」


「お前でも難しいのか。くそ、こんな上級どうすれば良いんだ……」


 作戦会議などさせてくれる筈もなく、次はステファンに剣を向けてきた。剣と剣が重なり合い、金属音が鳴り響く。どちらも隙がないが、ステファンが押されている。


 ステファンでも苦戦する相手だ。俺なんて到底敵わない。ルイを待つのが賢明な判断だろう。


 ただ、いつ戻ってくるのか分からない。五分後? 十分後? それまで持ち堪えられるのか。


 とりあえず、今は倒すことよりも身を守ることを優先させよう。そうとなれば……。


「ステファン、近距離戦は不利だ! 距離を取って俺が防御を担当する。お前は隙を見て出来る限り攻撃魔法をぶつけてくれ!」


「了解!」


 防御魔法は初めてだが、RPGで様々な闘い方をプレイした。その経験を活かしてやる!


 早速魔法を発動し、ステファンとデュラハンの間に氷の壁を作った。すぐに風魔法に切り替え、風の抵抗で相手を押さえつける。ほんの一瞬で破壊されたが、距離を置くには十分だ。


 ステファンが俺の近くまで戻ったのを確認し、すかさず次の魔法を繰り出す。


氷陣(アイスエリア)


 辺りは氷のフィールドと化し、馬は一瞬足を滑らせた。が、すぐに態勢を整えられた。


「クライヴ、本番に強いタイプなのだな。僕も負けてはいられない」


 ステファンは水の弾丸を放った。直撃したかと思えば、デュラハンのカウンター攻撃で水の弾丸はこちらに向かってきた。


 ムリムリムリッ!!


「氷結!」


 咄嗟にギュッと固く目を瞑り、魔法を発動させた。すんでのところでステファンの放った水弾が氷塊になった。


 本気で死ぬかと思った……。


 デュラハン最強すぎでは? ゲームでは後ろから攻め込み、ボタン連打で倒せたりするが、実物では背後に回り込むことすら困難極まりない。


「弾き返すとは。次は連発してみるか……クライヴ、防御を頼む!」


「お、おう! 任せろ!」


 ステファンが複数の水の弾丸を撃ち込む。次はカウンター攻撃は来なかったが、デュラハンの持っている盾で防がれてしまった。


 え? あの盾って人の首じゃん……。


 うわー、見るんじゃなかった。首がないだけでもホラーだったのに、あれはないわ。本気で怖すぎる。


 母ちゃん、怖いよう。母ちゃんが世界一怖いなんて嘘だから。あれが、人生で一番怖いから。


 ゲームや攻略本では、ただの絵だからなんとも思わなかったが、リアルであの絵面はキツい。毎晩夢に出て来そうだ。トイレも今日から一人で行けそうにない……。


 そんなことを考えていると、デュラハンがこちらに向き直り、ゆっくり近づいてきた。恐怖のあまり、俺は思わずデュラハンに必死に謝罪した。


「頼むからこっちにくんな、馬を滑らせて悪かったって。この通り、謝るから」


「魔物に謝ってどうするのだ……」


 それから何度も俺は氷壁を作り、ステファンも攻撃魔法を撃ち続ける。しかし、全く効いている様子がない。と、いうより再生している?


 氷壁を十枚くらい京都の有名な神社の鳥居みたいに並べてみたりもしたが、防御もあっさり破られる。


 このままでは魔力切れでこちらが不利だ。あいつの弱点は、確か炎だったはず。


「俺達の属性ではやはり厳しいな。炎属性がいればな……」

 

 ステファンも同じことを思っていたようだ。しかし、あのステファンが弱腰になるなんて相当厳しいな。


 炎か、どこかに炎は……。


「……いけるかも」


「クライヴ?」


「ちょっと防御の方バトンタッチだ!」


 急いで荷物の中からランタンを二つと火打石を取り出した。


「どうする気だ?」


「まぁ、見てろって」


 ランタンの一つに火を灯し、もう一つのランタンの油を口に含んだ。


「馬鹿か! やめろ、吐き出すのだ!」


 ステファンに止めれそうになったが、手で制止する。


 火のついたランタンをデュラハンに向け、口の中の油を思い切り霧状に吹き出した。もちろん風魔法も同時に発動させて勢いをつける。


 ゴオオォォォ……。


 火炎放射がデュラハンに直撃した。


 どうだ? やったか? 煙に包まれて見えない。


 徐々に煙の量が減っていき、視界が晴れてきた。デュラハンは……鎧が少し焦げている。が、その程度だった。


 詰んだ。二度目の人生も幕を閉じるのか。渾身の一撃だったのに。二度目の人生は長生きしたかったのにな……。


「どうして最下層にデュラハンがいるのです?」


 ……!? 冷静に話すこの声は……。

読んでいただきありがとうございます。


デュラハンのイメージ、亡霊とか死神でしたけど、妖精らしいですね。

自分のところに妖精が来るなら断然ティンカーベルが良いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ