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【陰鬱系サイコホラー】 「カウマイが存在することを証明する」  作者: 苦虫
第四章 カウマイは淵である ~小学校五年生の記憶~
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第28話 出口


 羽虫が飛ぶような音が響く頭の中に、淡々とした夕貴の声が時折入りこんでくる。



 あくまで可能性としてだけれど。

 でも、最初にユカリが怪しいって言い出したのもシノだし。

 あれは自分から疑惑を逸らしたかったんじゃないかな?


 不意をついたとしても、ユカリが黒須を殺せるかな?

 身体の大きさや力に差がありすぎるよ。



「だからさ」


 夕貴は僕の顔を覗き込みながら言った。


「とりあえず、ここから何とか出るんだ。外に出れば、後は大人に任せておけばいい」


 とにかくここから出れば、何もかも終わるんだ。

 全てが正常に戻るんだ。


 

 カウマイから出れさえすれば。





2.


 僕と夕貴は、闇に支配された一階の廊下を歩き続けた。


 夕貴は懐中電灯を手に持っていたが、恐らく「殺人犯」の存在を恐れてつけることはなかった。



 その背中を見ながら歩いているうちに、ふと、僕の心に奇妙な感覚が生まれた。

 

 前にこんなことがあったような気がする。

 それがいつだったのか、どうしても思い出せない。


 だが、そんなはずはない。

 夜の学校を夕貴と二人で歩く、なんてことがあれば忘れるはずがないからだ。

 

 普段は現れない頭の裏側の部分で記憶がざわめくような、奇妙な感覚がして僕は身震いした。


 

 夕貴は廊下の突き当りにある、裏庭に面した窓の前で立ち止まった。

 僕たちの肩くらいの高さにある窓で、大人ならばかろうじて通れるかどうか、という大きさだが、僕たちならば楽に通れる。


 夕貴は、背伸びをしてその窓に手をかけた。


「この窓はさ、建付けが悪くなって鍵がかからなくなるんだ」


 何気なく言った夕貴の言葉に、何か引っかかるものを感じた。


 一体、それが何なのか。

 考えようとした瞬間、しかし僕の頭からそんな小さな疑問は吹き飛んだ。


 

 最初はどこかに引っかかってガタガタと鳴るだけだった窓が、夕貴が角度を調整して思いっきり力を込めた瞬間、勢いよく開いたのだ。


 四角く開いた窓から流れてくる夜の風を感じた瞬間、僕は歓喜の余り叫びそうになった。


★次回

「第29話 見間違い」

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