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不登校少年と不思議先生  作者: くすのき
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第一話 不登校の少年

 優希ゆうきはイヤホンを耳に着けると、音楽を聴きながら数学の教科書を机に広げていた。


 時計の針は午前十時を指している。本来であれば学校で授業を受ける時間帯なのだが、優希は現時点で学校に全くと言っていいほど足を通わせていない。


 中学生になってから、まだ五日程しか経っていないけれど、小学生時代から数えると優希の不登校期間は二年以上に及んでいた。

 優希は大きな欠伸をして寝ぼけ眼を擦る。優希が勉強をする理由は二つ。一つ目はあまりにも暇すぎてやる事がない。二つ目は不登校を許す条件に勉強が含まれていたからだ。

 実際の所、自宅学習はネットが有れば勉強に関しての苦労はそこまで無かった。本や動画、探せばいくらでも良いものが見つかる。

 集中して二時間程勉強を進めるとリビングに戻ってテレビの電源をつける。テレビでは昼のニュース番組が流れていた。ぼんやりと眺めているとニュース番組から不登校に関しての話題が持ち上がる。

 どうやら番組で特集を組んでいるらしい。不登校という言葉に心臓が大きく跳ねた気分がした。反射的にリモコンに手を伸ばして電源のスイッチを押そうとしたのだが、優希の手の動きは途中で止まった。結局、そのままテレビを見続ける。

 特集内容は不登校の実態調査に関するものらしい。グラフや数字で可視化されると不登校の人間は結構多いという印象を受ける。そこでは不登校が長期化する事で登校がどんどん困難になるという話が出ていた。

 テレビの話題が変わると優希はテレビの電源を切って外に出る。歩いて行ける場所に大きな池があり、鳥達が多く水面に浮かんでいた。池の周りを囲むように桜が咲いていてとても景観がいい。優希は近くにあるベンチに深く腰掛ける。ゆったりとした気分になれるこの場所は、優希にとって数少ない好きな場所だった。

 しかし、今日に限っては中々落ち着いた気分になれない。きっと、昼の番組を見た所為だろうと優希は思う。

 番組内では不登校から、中々社会に上手く適合出来ず悩んでいる二十歳の青年の姿が映し出されていた。青年は社会の中で受け入れられないという厳しい現実に直面しているらしかった。

 多くの人にとっては他人事で、所詮は物語みたいなものなのだろう。しかし、優希にしてみればとても他人事とは思えない出来事になる。テレビで映されていた青年の状況は、優希にとっては現実味のある話だった。

 今のままの生活が続いたらと思うと、将来に希望をもつことは優希には難しかった。優希はゆっくりと顔を見上げると、心のもやもやを吐き出そうとする様に長い息を吐く。空は薄い雲が一面に広がり太陽の姿は見えなかった。

 

 


 

 

 


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