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「おはよう、小鷹千尋」


「おはよう、え〜と、あなたは?」


「私はTHXー11380525YF、博多幸恵(はかたゆきえ)よ」


 幸恵はそう言って両手でスカートの両裾を軽く持ち、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたまま、お辞儀をした。


 それを見た私はトマホークを出し、左手で持つと右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向へ水平に差し出すようにお辞儀をした。


 すると、幸恵は両肩から何か出したと思ったら私に向かって飛んできた。それはさっき幸恵が撃ったミサイルだった。大きさは2ℓのペットボトル程度でまるでペットボトルロケットのようだが小学生の工作だったら大惨事な速さであった。


 私はトマホークでミサイルを切り払うと爆発した。爆風と爆音と煙に体や五感が包まれたと思ったら、すぐに幸恵が開けた天井へ飛び、一階層上がっていた。これで時間を稼ぎ、上手くいけば逃げられる。しかし、それは間違いだった。私が上げってきた床の穴から幸恵のミサイルが迫ってきたからだ。


「無駄よ! それはあなたを追尾するわ!」


 幸恵の声が穴から聞こえる、追いかけては来ないのか? いや、遠距離での攻撃が出来るのだから必要ないのだ。ましてや、こちらが上に居ようが下に居ようがこのミサイルで攻撃している内は距離を多少とられていようが何とかなるのは最初の攻撃で分かっていたことだった。


 私は施設内を走り回りながらミサイルを切ったり、避けたり、隠れたり、直撃を避ける等何とか逃げようと試みたが相手はしぶとかった。弾切れを狙ってみたがどうやら体に内蔵されている何かによって作り出されているのか何十発も撃ってくる。常に肉眼で確認出来るぐらいの距離にされる。こうなったら敢えてひらけた場所へ行き、一対一でやり合うしかないと思い、第三トレーニングルームへ向かうことにした。


 私は際限なく向かってくるミサイルを躱しながら入ることが出来た。第三トレーニングルームには残骸が散らばったままであった。そこで幸恵が入ってきた。追いつき、相変わらずミサイルと伸縮する腕を使い、攻撃してくる。更に何かが床を掘るような音と振動がする。


 すぐにその場から離れるとその音は私を追いかけてくる。そして、私の動きに合わせて幸恵はミサイルを撃ってきた。私はトマホークを出し、ミサイルを切り払い、音のする方向へトマホークを投げた。トマホークは床に突き刺さり、少し床をえぐると何かの先端が現れた。


 その先端は旋回しながら少しずつ現れていき、どうやらその正体はドリルのようであった。いや、ドリルの手をした何かであった。更にドリルは旋回し、顔が見えた。それは意識を失う前に居た女性であった。彼女はある程度掘り進めたところで飛び上がった。両足の底にバーニアがあり、そこから火が出ていた。どうやらあれを使って飛んだようであった。


「あんたらは一体……今度は何よ!」


 私は思わず叫ぶと幸恵とその女性は私を中心に挟むように立った。


「私の名前はTHX―11381031AA、赤山結(あかやまゆい)よ、千尋」


 結と名乗る女性は右手のドリルを普通の手に変形させた。どうやら、私のトマホークと同じで金属チップを出して生成するようであった。


「そして私達はTHX―1138メンバーの姉妹機ってわけよ」


 結はそう言って服を脱いだ。普通の女性と同じ外皮であったが次に文字通り、胸を開いた。そこには鼓動をうちながら動く緑色に光輝く心臓であった。よく見ると何かのタンクのようであった。


「これは『始原の力』を貯めたタンクよ、見ての通り心臓の代わりよ……中身は気とも呼ばれたりするわ、ガイノイドである私達にも必要な力でこうして長時間動いたり、高負担のことが出来るのはこのためよ」


「なるほど、永久に動けるわけではないのね」


 それを聞いた結はタンクをしまい、服を着た。


「そういうことよ」


 今度は幸恵が言った。私は結を警戒しながら幸恵を見た。


「私が気を失ったのはそのせいでしょ?」


「それも正解よ、物を生成する度に消費するわ」


「それならあなたは物凄くミサイルを出したり、腕を伸ばしたりしたからそろそろ動けなくなるんじゃない? 大丈夫なの?」と私が笑うと幸恵も笑った。


「心配してくれてありがとう、でも大丈夫よ……」


「どうして?」


 幸恵の雰囲気が変わった。それと同時に結の雰囲気も変わっていく。


「あなたはここで死ぬのだから!」


 結がそう叫ぶと幸恵はミサイルを撃った。更に結は右手をドリルに、左手をバイスに生成して突っ込んできた。


 私はトマホークを出して、ミサイルを切り裂いて、幸恵の方へ向かう。爆風と煙が辺りを包むが構わず突っ走った。しかし、右腕が伸びてきた。腕は私の首を掴もうとしたがそれも切った。切った先から血かオイルか分からない赤い液体が噴出した。かなりよく出来ていた、臭いも血かオイルか分からなかった。


「千尋!」


 幸恵は叫び、切られた腕は縮んでいく。


「おめでたい考え方なことで!」


 私は叫び返しながら右手に持っていたトマホークを投げた。煙の向こうであったため当たったか分かりにくいが牽制にはなる。


 今度は結のいる方向から何かが聞こえる。見るとドリルが旋回しながら飛んできた。しかし、スピードは幸恵のミサイルと比べて遅いため避けるのは簡単であった。


「そんなもの意味がないでしょ!」


 すると私の右手にトマホークが戻ってきたのを確認して辺りを見渡した。しかし、幸恵はいなかった。ふと、頭に何かが落ちてくるというか向かってくる物を感じた。上を見ると左手の指を天井に突き刺し、ぶら下がっている幸恵がいた。


 私はすぐに反応し、両手のトマホークをミサイルと幸恵に向かって投げた。左手のトマホークはミサイルを切り裂いて、幸恵の左手に刺さり、右手のトマホークは幸恵の左足を切り裂いた。赤い液体が降ってきた。


「幸恵!」


 落下する幸恵を見ながら結は叫んだ。落下しながら幸恵はよく分からない叫び声を出し、両足を巨大なキャタピラに変化させた。


 幸恵は私目掛けて落ち、結は両足のバーニアを駆使して飛びながらドリルを旋回させた。しかし、私は瞬時に反応し、幸恵に向かって飛び、幸恵の頭上を抑えると結に向かうように軌道を修正した。


「結! 避けて!」


 幸恵の叫びの前に結は何とか反応出来て、両足を進行方向と逆にしようとしたが何かが足に絡みついて、動きを阻害された。私が倒したガイノイドのマントだった。


 そして、幸恵のキャタピラが結の両足を砕いた。二人の叫び声は耳にこびりつくようであった。幸恵のキャタピラで床を砕き、三人で下の階層まで落ちていった。


「よくも……やってくれたな!」


 落ち切ったところで結は叫んだが無視して私は結から幸恵を放し、戻ってきたトマホークの刃を幸恵と結の喉元へ持っていった。


「さぁ……ちょっと聞きたいことがあるわ……」


「な……なんだ……」


 幸恵は震えながら言う。


「私はなんなの?」


 すると、それを聞いた結は笑い出した。


「あなたは何も知らないのね! なんであなたが気を失った時に倒さなかったのか分からないのね!」


「……分からないわ、最初は味方か何かかと思ったけど、違うの?」


 すると、今度は幸恵が笑い出した。


「違うわよ! 私達はね! そうプログラムされているのよ!」


「そう! 私達、THX―1138ナンバーはお互いで戦い、生き抜いていくようにプログラムされているのよ! アンドロイドやガイノイド同士が戦い、そのデータを元に次世代のものへとアップデートするために……戦うのよ! 永遠にね!」


 結は口から赤い液体を吐き出しながら答えた。


「なるほどね……なら何故最初に訓練したの? そういうプログラムなら組み込めることぐらい出来たんじゃない?」


「……何?」


 結の顔が変わった。


「……なるほど、そういうことか」


 幸恵の目から涙が溢れていた。頭が疑問でいっぱいになっていると突然、私は宙に舞った。結が左手のバイスで私の左足を掴んで床に叩きつけようとしていた。


 幸恵は服を破り捨て、胸を開き、タンクを取り出すぐらいで床に叩きつけられた。


「何をする気?」


「千尋……私達二人はあなたとは違うようね……」


 そう言って幸恵はタンクを握りつぶそうとした。やばい! 私は飛ぼうとしたが結のバイスで私の足を掴んだままだ。左腕は折れていたため足を握り潰されることはなさそうだがまずい。なんとかしようと考えていると結の足に絡まったままのマントが視界に入った。すぐにマントを身に着けると頭に声が響く。


「機能を解放します」


 私は無意識でマントを体に巻き付けていた。そして、光が辺りを包んだ。




 目を覚ました。なんとか生きているようであった。マントはほとんど無傷で体は守られていた。どうやら、このマントはかなりの防御力があるようで上から光が私を包んだ。かなり広範囲での爆発で施設の大半は吹き飛んだようであった。


 すると、私の目から涙が零れ落ちた。今度は何故だか分かる。この二人のことではない。生きているという実感ということでもない。私は感情のある記憶のないガイノイド……なんて不便で幸せなんだろうか……そう思うと私は笑顔になった

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