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それからの私は、どうやって原作から逃れようかと日々考えながら生活していた。
"癒しの力"さえ発現しなければどう転んでも聖女になることはない。
だから咄嗟の時でも他の魔法を使えるように練習していた…ハズだった。
公爵家一行が私に挨拶に来てくれた時だった。
突如馬が私たちに突進してきた。
間一髪のところで風の魔法を使い馬を浮かせると、後脚に針が刺さっていて興奮状態になっていた。
きっとこれは…故意に誰かがやったものだ。
「馬を寝かせます。少し離れて下さい。」
みんな驚きながらも指示に従ってくれた。
さてと、とりあえずこの針を抜いてやらないと。
パァアッ
針に手をかけた瞬間馬全体がキラキラとした光に包まれた。傷口は癒え、状態も普段通りに安定。
シーン…
「「・・・」」
「あ、ご挨拶がまだでしたね。改めまして本日はお越しいただきありがとうございます。マリアンとカリオンの娘のリーリア= フォン=ラヴェルディです。」
「「いやいやいやいやいやいや」」
な、なんだいみんなして。仲良しね。
「今の「幻です」
「馬の傷が「白昼夢では?」
「癒しの「さ、色々準備しましたのでどうぞ中へ」
「「リーリア(ちゃん)!」」
「し、知らないです!私じゃないです!」
ま、無理があるよね。うん。逃げよ。
そして私は逃げた。2時間後捕まった。
なんでだよ!なんで針抜こうとしただけで!今までの努力は一体!?
「いや〜びっくり!まさか君が…」
はいはい。私もびっくりよ。あれだけ気をつけてたのに。
"癒しの力"発現しちゃって。
「2時間も逃げるとは。」
いやそっちかい!
「癒しの力にも驚いたけど、屋敷の人間総動員して2時間も見つからないとは。」
ワッハッハと公爵様は楽しそうに笑う。
公爵夫人はケーキに夢中。
その息子である双子は私をガン見。
「僕はコールディ=フォン= ラヴェルディ。コリーって呼んでね!」
「僕はジェルディ=フォン=ラヴェルディ。ジェディって呼んで!」
今の私より4つ上の14歳だけど。かわいいな。
何故か懐かれてるし。
それからは他愛無い話をした。
なんだか、貴族ってもっと冷たいイメージだったのに。
ラヴェルディ公爵家の人達はとても親切で、優しくて。
私をちゃんと家族の一員として認めてくれた。
そして私は、"癒しの力"をちゃんと使えるようにと週一で神殿に通うことに。全然話そらせてなかった!
そういえば、どこかの子爵家と侯爵家が没落したとか。
きっとあの時馬に細工した家紋なのだろう。