日本でコロナ19感染が激減した主な原因とその応用方法について
2021年、感染が広まってしまった新型コロナウィルス(以下、コロナ19)への対策としてワクチン接種が広がった後も依然収束の兆しが見えない中、何故か日本では8月の下旬頃から急激に感染者数が減り始め、2021年12月現在もその低い感染者数を維持しています。
もちろんこれは喜ばしい事実なのですが、その明確な原因が分からないが為に非常に不思議がられ、“日本人にそもそも備わっている免疫のお陰”とか、“真面目に感染予防しているから”とか、はたまた“日本は検査が不充分なので、本当は感染者はもっと多い”だとか様々な仮説が立てられているようですが、いずれも決定打には欠けているようです。
特に“検査不足”は無理があるように思います。
日本で検査が不充分なのは事実ですが、それでは重症者も少ない点を説明できませんから。
そして、原因が不明である事は不気味に思われてもいます。原因が分からない以上、いつまた感染者数が増え始めるか分からない、と。
ですが、実は僕は感染者数が激減し始めた当初から、原因について、ある可能性を疑っていました。
もしかしたら、感染ネットワークの構造の中にこそ、その“答え”があるのではないだろうか?
2019年の初めの頃、まだコロナ19の感染が広がるか不明だと言われていましたが、僕はその当時既にコロナ19は世界中に広がるだろうと予想していました。ちゃんとそれをエッセイに書いて投稿してもいます。
では、どうしてそんな予想ができたのかと言うと、僕にネットワーク科学の知識が少しだけあったからです
ネットワーク科学は、もちろん、ネットワークを研究する分野で、その応用範囲の一つには感染症のネットワークもあります。そして極めてシンプルなネットワーク構造上の理由から、コロナ19には高い感染力があると僕は判断したのです。
ショートカットリンクがわずかでもあると、ネットワーク全体の距離が縮まる…… スモールワールドになってしまうという現象が知られているのですが、当にコロナ19の「感染しても無症状か軽症で済んでしまう」という特性は、このスモールワールドを作り出してしまうのです。
平たく言ってしまえば、無症状や軽症の人がコロナ19感染を広めてしまう、という事です。
通常の感染症だと、感染した人は苦しくてあまり動けなくなるので感染はそれほど広がりませんが、コロナ19の場合は無症状や軽症の人がショートカットリンクになってしまって感染症ネットワークがスモールワールドになってしまうのですね。
断っておきますが、僕はネットワーク科学の素人に過ぎません。何冊かポピュラーサイエンス系の本を読み、ネットワーク科学の知識を得ているだけです。
そんな素人に過ぎない僕でもネットワーク科学の知識を少し用いれば、感染が世界中に拡大すると予測ができたのです。いかにネットワーク科学が有用であるかが分かるでしょう(僕は国の感染症対策のメンバーにネットワーク科学の専門家を入れるべきだと考えているのですが)。
そして、だからこのネットワーク科学を活かせば、今回の感染者数激減の原因を解き明かせる可能性もあると考えているのですが。
スモールワールド・ネットワークには大きく分けて二種類あります。
一つは各々の要素が平均的にリンクを持ち、時折、ショートカットリンクがあるタイプ。もう一つは、一部の要素が集中してたくさんのリンクを持つタイプ。
“感染者数が急激に減る”とは、ネットワーク的に言うのなら、ネットワークが分断されているという事です。つまり、ネットワークが壊れているのですね。感染症ネットワークが崩壊したのです。
平均タイプでも、急激にネットワーク全体が変異する可能性はあります。水が気体、液体、固体にそれぞれ急激に変化する相転移現象はそういった事例の一つです。ただ、やはり急激に変化すると言ったら、可能性が高いのは集中タイプの方でしょう。
リンクが集中している要素が破壊されれば、それで一気にネットワークは崩壊してしまいますから。
つまり、
「日本社会においてのコロナ19感染症ネットワークは、集中タイプなのではないか?」
と、僕は考えているのです。
実際、感染を広めているのは極少数の人だという話を聞いた事があります(どこまで信憑性のある話なのかは分かりませんが)。
極少数の人達が感染症を広めてしまっていて、その人達がワクチン接種によって免疫を獲得したお陰で、感染症ネットワークが崩壊をし、感染者数が激減したのではないか?って話ですね。
核を破壊されれば、全体が死ぬ…… よく物語の中なんかで登場する無限増殖するモンスターの倒し方と同じです。
(因みに毒の多くは、リンクが集中する物質に作用して、生命活動を停止に追いやるのだそうです)
もちろんこれは仮説に過ぎません。しかししそれでも役に立つかもしれないと僕は考えています。
コロナ19のワクチン接種には情報技術が活用されました。つまり、凡そ誰がどんなタイミングでワクチンを接種したかが簡単に分かります。
感染者数が激減し始めたのは8月下旬ですから、逆算すれば、恐らくは7月中旬辺りからのワクチン接種が影響しているのではないかと考えられます。
つまり、もし日本のコロナ19の感染症ネットワークが集中タイプであったとするのなら、その時期のワクチン接種者達が感染症ネットワークの核である可能性が高くなります。
ですから、現在コロナ19、オミクロン株の感染拡大が懸念されていますが、それを未然に防ぎたいと思ったのなら、この時期のワクチン接種者に対して優先して感染症対策を施すのが効果的である事になります。
もちろん、対策の内容はワクチン接種が最も望ましいのは言うまでもありません。
(今後、もしかしたら、コロナ19以外の感染症のパンデミックも起こるかもしれませんが、それにも応用できるかもしれません)
この対策の良い点は、リスクがあまりないところです。日本の感染症ネットワークが集中タイプではなかったとしても、単にワクチン接種の順番が少し変わるだけです。今まで通り、医療従事者や高齢者、基礎疾患を持つ人達を最優先させるのは続けるとして、そのカテゴリに加える、或いは、ワクチンが足りないのなら二番手に感染症ネットワークの核である可能性がある人達を位置付ければ、集中タイプでなかったとしてもほぼリスクはありません。
懸念点としては、感染症ネットワークの核であると疑われた人達が、不当な差別に遭う可能性がある事でしょうか。
仮に核となっていると分かったとしても、恐らく、職業上の理由等で致し方なくその立場に追い込まれていただけでしょうから、その人達に落ち度はありません。充分な理解を求めるべきです。