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滞在許可証

「シャドウって知ってるか?」


 ギルドを出ると俺はオリアナに尋ねる。

 すると彼女は思い出しながら答えた。


「そう言えばこの辺りで領主や役人でさえ手を焼いている犯罪組織があると聞いていましたが。噂によると違法な麻薬の売買で小さな領主よりは資金を潤沢に持っているとのことです」

「そうなのか」


 領主や貴族と言えば金持ちで力を持っているイメージがあるが、それは農民や商人からうまく税を搾り取ることが出来た場合に限る。

 そもそも領地が豊かでなかったり領地で凶作が起こっていたり、もしくは領地に闇の組織が跋扈したりしていればその限りではないだろう。

 領民だって闇の組織を討伐することも出来ない領主相手であれば、まともに税を納める気も起きないだろう。腕が立つ者も兵士になるよりシャドウに入ればいい、と思ってしまっているのかもしれない。


「だからって街に入るのに闇の組織に頭を下げないといけないなんて明らかにおかしいだろうが」

「そうですね。早晩領地の管理不行き届きで家を潰されるかもしれませんね」


 そんなことを話していると、俺たちは街の中央にある立派な建物に到着する。ちなみに、隣には正規の役場があるが、中央会館という謎の建物の方が明らかに大きいし、外見も立派だ。

 この辺もこの街の力関係を物語っている。

 俺たちは中に入ると、ご丁寧にも「初めての方はこちら」と案内が記されている。俺はオリアナとともにそちらに向かう。するとそこには受付があり、ギルドの受付嬢のような恰好をした女性が一枚の紙を差し出す。


「この街に滞在してくださるならこちらの記入をお願いします。個人情報については問題があればぼかした記入でも大丈夫です」


 紙の上には名前、年齢、職業、滞在の目的や期間などの項目がある。俺はオリアナと顔を見合わせたが、冒険者であることは恰好を見れば分かるのでおおむね正直に記入する。


 問題はその下だった。

 そこには“誓約“と仰々しい文字が書かれており、いくつかの項目が書かれている。どうも、街の衛兵が調査中の事件があり、それは下手に首を突っ込むと邪魔になるからよそ者は触れないで欲しいということだった。


 そこには殺人事件や行方不明事件、麻薬流通などが書かれている。

 これまでの情報から類推するに、どう考えてもこれらはシャドウが関わっていて、冒険者に真相を暴かれると困るから調査しないことにしているとしか思えない。


「これらの事件の調査は進展しているのか?」

「さあ、私はそこまでは」


 受付嬢は困った顔をする。恐らく彼女は受付の仕事をしているだけでそこまでのことは知らないのだろう。


「ここまでしなければならないほどシャドウという組織は強大なのか?」

「そんな組織は知りません」


 彼女はおそらくマニュアル通りの答えをし、今度は俺が「だめだこりゃ」と思う。


「こんなの納得できない。もっと街のえらい人と話をさせてくれ」

「納得できないのでしたらサインしていただかなくても結構です」


 要するに文句を言うなら街から出ていけ、ということだろう。

 そう言われるとこちらも困る。もう夜も遅いし、出来れば野宿はしたくない。


「……分かった」


 俺は不承不承誓約書にサインしたのだった。


「ありがとうございます。街から出る時はこれをお返しください」


 そう言って彼女は誓約書と引き換えに俺たちにカードを差し出す。そこには「滞在許可証」と書かれていて印鑑が押されている。

 俺はそれを受け取ると中央会館を出る。その後俺たちが許可証を持ってギルドに向かうと、先ほどの対応が嘘のようにスムーズに対応してくれた。


 そしてそこでもらった金で宿に泊まる。そちらでも許可証の提示が求められたが、一度見せると普通に泊まることが出来たのだった。


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