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第一話 あまりにも美味すぎた投資案件

何年も会社に勤め、さらに株式投資やFXで増やした2000万円。

俺はそれを詐欺業者に全力投入してしまった。

そして、全てを失った。


今思えば馬鹿な真似をしたと思うが、当時の俺は勝算があると信じていた。

本当に、タイムマシンがあったら過去の自分を殴りに行ってやりたい。


とはいえ、別に貸金業者『みんなのクレジット』を心から信頼していたわけではない。

第二種金融免許があるとはいえそれほど長い運営実績があるわけではなかったし、融資は焦げ付くリスクが伴うものだ。

これが一種のギャンブルであることは、当時の俺だって認識していた。


資金の大半を失っても他の会員ほど動揺せずに冷静に告訴に移行できたのも、「結局は博打にすぎない」と割り切っていたからかもしれない。


確かにみんクレの高利回りや担保設定は、涎が止まらないぐらい魅力的だった。

欲深い獣がそれに乗せられた部分は否定できない。


・平均利回り7~8%、最大利回り14.5%

・全案件に120%以上の担保を設定

・代表者連帯保証あり

・元本割れ0件

・複数の案件に分散投資可能


けれど、俺がそれを100%鵜呑みにしていたわけじゃない。

ハイリターンな投資には、ハイリスクが付きものなんだから。


今は貸し倒れがなくても、今後はどうなるかわからない。

利回り10%以上なら、相当資金繰りが苦しい企業に融資しているかもしれない。


それくらいのことは当然考えていた。

だが、このチャンスはは諦めるには眩しすぎた。


こんな利回りじゃ多分何年も続かないだろうけど、どうにかして儲ける方法はないだろうか?


そこで閃いた。


「キャッシュバックを受け取りつつ分散投資すれば、どこかで利払いが停止しても利益が出るのではないか?」


なんという姑息な作戦か。


キャッシュバックとは、出資に対して付与されるプレゼントのことだ。

FXなどでも取引高に応じて食品やギフト券を贈るキャンペーンをやっている業者があるが、当時のソーシャルレンディング会社は出資額に応じた現金を付与していた。


特にみんクレのキャッシュバック割合は大きく、利息を上回る場合すらあった。

実際にその一部を紹介しよう。


・スーパーボーナス

・スペシャルコンビボーナス

・再投資ボーナス

・ラストワンレンダー賞

・ハロウィンボーナス

・お年玉ボーナス

・新規口座開設


はっきり言うと、何に投資しても運用前にボーナスが付与されるような有様だった。

融資会社が金を返すなんておかしいと思うだろうが、これは紛れもない事実だ。


ボーナスの比率は一定ではなく、案件や投資金によってまちまちだった。

そこで俺は電卓を叩き、投資額に対してボーナス比率が最高となる案件を選んだ。

そして試しに一度投資してみたところ、驚愕の事実が判明した。


「これは、とんでもない利益になるぞ!」


なんと、出資した三日後にはボーナスが振り込まれたのだ。

振り込まれたボーナスは投資口座に反映されているから、即座に再投資可能。


出資金の5%のボーナスと聞くと、たいしたことのないように思えるかもしれない。

だが、これが『三日』で得られるなら、その年利は5%では済まない。

単純に経過日数を考慮したら、年利はその100倍以上だ。


もちろん、投資金がすぐ返ってくるわけではないのでそんな滅茶苦茶な数字にはならない。

しかし、キャッシュバックはすぐに手に入る。

再投資を繰り返すたびに元本が増大し、複利の効果で配当も増大していく。

これはヤバい・・・


早速俺は全ての投資案件とキャッシュバック額をエクセルに打ち込み、最適化した際の利回りを計算した。

三日おきに再投資した際の利回りは、10%を軽く超えていた。


キャッシュバックだけで10%。

それに加えて配当が7%~14%。

合計すれば、約20%のとんでもない利率になる。


「これだけあれば、脱サラしても余裕で暮らしていけるんじゃないか?」


低金利の日本ではまずない魅力的な利回りに、俺はすっかり心を奪われていた。

多分、社畜生活にストレスが溜まっていたのもあるんだろう。


「うまい話には裏がある」


そんな常識すら忘れるほどに、俺は狂っていたんだ。

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