第二二話 疑惑のセカンドアロー
めちゃくちゃ疲れた。
裁判やるも小説書くのも大変だ。
一本の矢は容易に折れるが、三本まとめた矢は折れない。
三兄弟の結束を強めることで、毛利の一族は繁栄したという。
一方で、アベノミクスの三本の矢は金融緩和以降の政策、特に成長戦略が骨抜きにされ、ゾンビ企業を増やして日本経済をさらに停滞させてしまった。
さて、投資家達が打ち込む次の矢はこの闘争においてどちらの結果をもたらすのか?
原告の第二の矢は『ジギョウセイシキン』。
みんクレが日本中から集めた総額40億円の使い道。
募集時の説明通りに資金が使われたのか、それとも全く関係のない用途に使われたのか。
原告側の弁護士は、ここでその真偽を問い詰める。
「裁判長、被告はホームページ上でファンド出資金の使途を『事業性資金』として表示していました。一般にそのような表示は、
・資金は貸付先が行う事業に用いられ、事業から得られるリターンによって償還が行われる
・金融取引業者は貸付先から提供された事業計画書などに基づいてリスクの審査をしている
と理解されます。
出資先がその親会社や関係会社であれば、融資が適性か判断することはできません。さらに利益相反の問題も生じる可能性があるため、そのような融資は通常考えられません。ところが、実際には自転車操業となっていたグループ会社の資金繰りに出資金を充てており、さらにスカイ自身が支払うべき広告費用やキャッシュバックにも流用していました。よって、被告の行った『事業性資金』との表示は真実に反しています!」
これは資本主義社会に生きる投資家として当然の主張だ。
企業は金融市場から資金を調達して事業を行い、事業によって得た利益を株主や債権者に分配する。
出資者はその会社が商売をして儲けるのに期待して資金を預けているのであって、自転車操業やキャッシュバックを助けるために金を出しているのではない。
だが、俺達の第二の矢を受けた被告側の弁護士は、待ってましたとばかりに反論を読み上げた。
「事業性資金とは事業を行うに当たって必要な設備投資資金や運転資金等の経費全般のことを指し、運転資金には『借り換え』の資金も含まれる。個別のファンドの募集において【運転資金】【借換】と表示していたのだから、事業性資金との表示は真実に反するものではない!」
・・・普通に事業で売り上げを上げている企業なら確かに借換もあるだろうが、利益も出ていないのに前の償還やキャッシュバックに資金を流用するのはおかしいだろ。
顧客から集めた資金を次の客に流すだけなら、ポンジスキームと変わらないじゃないか!
俺の怒りを尻目に、被告は弁解を続ける。
「金融商品取引法や貸金業法等の法令上、ソーシャルレンディングにおいて出資金を親会社や関連会社に貸し付けてはならないという規制はない。貸付先が関連会社であればその事業に通暁しているため合理性を適切に判断でき、融資後のモニタリングも容易になるといったメリットがある。したがって、関連会社への貸付が通常考えられないものとは言えない!」
あろうことか、彼は癒着企業への横流しを『メリット』と言い切った。
身内に資金を流して30億円の損失を出すのが、合理的な判断と適切なモニタリングの結果なのか・・・
いったいどの口で言っているんだろうか?
このようなふざけた詭弁は、こちらも到底受け入れられない。
半ば口論のようになりながら、互いの反論が続く。
「スカイの勧誘からは、融資がテイクやグループ会社の資金繰りに充てられるとは読み取れません。被告の説明は投資家の誤信を招いています!」
「原告が投資したファンドは全て資金用途を運転資金と明記していたから、運転資金に使用されることを容易に認識することができたはずだ!」
「関連会社の資金繰りや広告費、キャッシュバックに流用することは、『事業性資金』とは呼びません。被告は異なる形で流用されていることを認識していながら、投資家に対する勧誘を行いました!」
「資金使途を運転資金と明記してファンドの募集をし、現に貸付先で運転資金として利用された。ファンドの償還資金に他のファンド出資金が充当されたのは、結果的にそうなってしまったからにすぎない。被告が故意に行ったのではない!」
Sの頭の中では、自転車操業の資金繰りこそが事業の本質なのだろうか?
事業資金の解釈については、完全に平行線だ。
こちらがポンジスキームを批判しても、相手はそれを事業に必要な資金繰りと言って譲らない。
不毛な言い争いを続けても仕方ないと諦めて、原告は次の指摘へと移る。
これから放つ『第三の矢』が、正真正銘最後の手段。
かつてみんクレは投資家の『安心感』を引き出すことで、その財布の紐を開かせた。
俺達はこの手札をもって、鉄壁の鎧に身を包んだ相手の心臓を抉らなければならない。
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