第二十話 法廷はゲームじゃなかった
「異議あり!」
「待った!」
「食らえ!」
弁護士の鋭い指摘が被告の顔面に突き刺さる!
次々と矛盾を指摘して詐欺師を論破し、隠された真実を暴いていく!
怒号と共に動かぬ証拠が突きつけられ、悪徳業者が行ってきた投資詐欺の手口が白日の元に晒されていく・・・!
・・・なんて逆転する裁判ゲームみたいなドラマチックな展開になるわけもなく、審議は落ち着いた雰囲気の中で進んでいった。
派手なやり取りを期待していた人には悪いが、現実の裁判は非情なのだ。
子供じみた正義感が通用するのは、テレビゲームの世界だけだ。
現実の法廷で相手に指を突きつけるなんて、マナー違反もいいところ。
大声を張り上げて喧嘩を始めたら、たちまち法廷からつまみ出させられてしまうだろう。
とはいえ、ここまでこじれた二者が紳士的に話し合って、仲良く握手して終わりというわけにもいかない。
23人の集団訴訟・・・いや、今は22人だったか。
合計で1億円にも及ぶ損害をここで取り戻さなければいけない。
被告にとっても1億円が懸かった真剣勝負なのだから、礼儀は欠かさないとしても互いを抉る闘争になるのは避けられない。
口頭弁論が始まってから何度も言葉を交わしたが、ここに至るまで一度も歩み寄ることはなかった。
もはや直接刃を交わし、言葉の殴り合いで白黒付けるしかないのだ。
俺達の主張はこれだ。
Sよ、受け止めてみやがれ!
「ここに証拠を示す通り被告はHP上に真実に反する表示をして、違法な勧誘を行いました!
共同不法行為に基づき、投資金の返還と遅延損害金の支払いを求めます!」
原告の魂を込めた一撃は弁護士が作成した文書を通じて、Sを含む旧みんクレ関係者に届いた。
しかし、相手は何度も計画倒産で訴えられながらも支払いを拒んできた強者。
当然あちらも法律に精通した弁護士を付けていて、その罪を素直に認めることは決してない。
突きつけられた指摘に全く揺らぐことなく、被告側は堂々と反論を行った。
「全面的に争う!
投資の説明は適切であり、違法行為は一切なかった!
出資時の約款に合意の上リスクを承知して投資を行ったのだから、事業の失敗による損失は投資家の負担となる!」
お互い一歩も引かない、一進一退の攻防。
バトル漫画のように相手を打ち負かせば勝ちになるわけではないが、互いに反論の機会は与えられている。
どんな極悪人にも言い分があり、それを受け入れてしまったら無罪放免、一巻の終わりだ。
相手の主張に誤りがあればそれに反論し、法律に照らし合わせて請求の正当性を主張するのだ。
互いの主張は平行線を辿りながら、より具体的な内容へ移っていく。
どんな説明が行われ、どこに虚偽があったのか。
融資元と融資先はどのように繋がっていたのか、それとも別々に運営されていたのか。
この損失はポンジスキームによって故意に作られたのか、俺達投資家の不注意が招いた過失なのか。
被告の提出書面を一言一句、穴が開くまで見ろ。
実際の投資との相違がないか、2000万円の大損失を出した足りない頭を捻って、捏ねて混ぜて、じっくり考えろ。
お前にその脳がなければ大金で雇った弁護士の知恵を借りて、同じ被害者を利用してでも、必ず勝利をもぎ取れ。
22人の人生を賭けた、一世一代の大勝負。
ここにリセットボタンは存在しない。
子供向けのゲームでは味わえない、本当のスリルを楽しもうじゃないか。




