第十二話 遅れてきた救世主
みんなのクレジットの情報を探してネット検索を続けていたところ、妙なブログがヒットした。
どこかで見たような文面が俺の目に映る。
「みんなのクレジット被害者の会を作ります」
・・・あれ、俺のブログが転載されているのか?
既に会の活動はほとんど停止しているのに、まだ広めてくれている人がいたのか?
記事のタイトルを見た瞬間、そう思った。
だが、それをクリックして中を覗くと、そこには全くの別人の募集が記載されていた。
「みんなのクレジットの倒産は、時間の問題。
被害者の会を立ち上げて、より密度の濃い情報を共有したいと思います。
一人ではどうにもならない事も、多数が集まれば変えられるかもしれません。
行動したからといってお金が返ってくるとも思えませんが、みんクレの筋書き通りには絶対したくありません。
一緒に戦ってくれる方がいましたら、参加お願いします」
・・・デジャヴ!
ドッペルゲンガーかよ!
痛烈な既視感が俺の脳裏をよぎった。
「考えることはみんな同じなんだな」と思うついでに、自分の知名度のなさが情けなくなった。
ブログの管理人は、全く知らない被害者。
脱サラのために投資活動をしている人で、そのためにソーシャルレンディングにも手を出していた模様。
仮に名前をナユとしておこう。
被害者の会なら半年ぐらい前に俺が作ったが、宣伝が足りないせいかナユには伝わっていなかったらしい。
聞くところによると、彼の被害額は200万円程度。
桁は一つ違うが、俺と同じようにみんクレに騙され、返金を求めるために被害者の会の設立を立ち上げようとしていたようだ。
まるっきり同じ行動を取るあたり、前世では双子の兄弟だったりするのかもしれない・・・
謎の親近感を感じた俺はナユにメールを送り、既に被害者の会が存在することを伝えた。
彼も驚いたものの共闘を提案するとすんなり同意し、知人とともに会に合流することになった。
俺は彼を掲示板に招待し、被害者の会の新しい管理者として迎えた。
ナユの行動力と宣伝効果は目を見張るもので、彼の呼びかけによりさらに多くの被害者が入会した。
特に彼と一緒に加入した友人であるヤマは聡明で、みんクレの営業に違法性がないか探っていた。
自分の訴訟に専念しなければならない俺にとって、彼らはとても頼りになる存在だった。
嬉しかったのは、彼が未だ行動を起こしていない会員にとって『救世主』になってくれたことだ。
俺は確かに最も早く会を立ち上げて訴訟を起こしたが、全ての被害者に道を示せたわけではない。
あくまで自分を中心に集団訴訟を起こし、弁護士を通じてみんクレを訴えただけだ。
しかも差し押さえは失敗して裁判は難航し、判決の一つも出てやしない。
既に開始した裁判に、途中参加は認められない。
23名や独自に弁護士に依頼したメンバーはともかく、金額等の理由で訴訟を見送った被害者は後に取り残された。
既に係争中の俺は利益相反になりかねないため、彼等に新しいアクションを勧めることすらできない。
元々ソーシャルレンディングは企業に資金運用を任せる性質のせいか、その投資家も他人任せで自発的に行動しない人が多い。
みんクレに償還を止められ、投資金を失う不安を抱えたまま決断できない迷い人には、『新しい指導者』が必要だった。
俺は若く行動力に溢れた二人にその役割を期待し、会の運営を託すことにした。
道に迷ったメンバーに方針を示し、悪逆非道なSに正義の鉄槌を下してくれることを願った。
その決断は正しかったのか。
彼等は100名の被害者にとって、本当の救世主になったのか?
その答えは、すぐにわかる。




