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記憶喪失の男、見知らぬ世界へ投げ出される
目が覚めた時、そこは知らない場所だった。
整地された土の道路。
明らかな木造の家々。
こちらを怪訝そうな顔で伺う人々。
そして、名前すらわからない自分自身…
それが、最初の記憶だった。
ここは何処なのか、自分は何故こんなところで寝ているのか。
なにもわからないが、とりあえず状況を把握しようと男は立ち上がる。
どうやら自分は道のど真ん中に寝そべっていたらしい。
周りを見渡すと、多数の人々がこちらの様子をうかがっている。
それはそうだろう、道のど真ん中で寝そべっていれば誰だって怪訝に思う。
では、なぜ自分はこんな道の真ん中で寝ていたのか。
それを思い出そうとしても、思い出せない。
それどころか、なにも思い出せない。
自分の年齢、自分の生まれ、自分の名前すらも。
これは、いわゆる記憶喪失というやつだろうか。
なるほどこれは困った、などとどこか他人事のように考え現実逃避をしていると、
人ごみの中から男がこちらに近寄ってきた。