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ある悪魔の独り言

作者: ヤングヤクソハン

とある国のとある学園で起こる婚約破棄からの断罪劇。誰もがこの舞台を楽しんでいた。そう、断罪される令嬢ですら・・・

 「ククク、アーッハッハッハッ!!!」


 突然の私の笑い声に周りで事の経緯を見守っていた人々が驚いて目を見開いているのを見て、私は更に笑みを深めた。唇の端を気持ち上に引き上げてみせる。その効果は抜群で、私を取り押さえようと剣を片手に近づいてきた近衛師団団長の子息ピエールですら後ろに下がってしまっていた。

 面を上げ目の前の檀上を見上げれば、そこに立っている人々にも様々な表情が表れていた。宮廷魔術師の子息ソロンはローブから魔術杖を取り出して構えて見せるが、その杖の先は震えていて全く狙いが定められていない。宰相の子息として父親と共に隣国に渡り様々な人物と詐欺まがいの話し合いを経験し、自分より年上の相手と対等に話し合うどころか論破してしまうマーカスも無表情で佇んでいるが顔色は少し青ざめているみたいだ。逆に大司祭の子息であるガブリエルは私が気が狂ってしまったと思ったのか、痛ましげな顔つきで見つめていた。そしてその集団の中央にいるこの国の王子にして私の元婚約者アークス様は隣にいる女性を庇いながら睨みつけてきた。

 

 私が視線をアークス様に庇われている女性ナーサに向ければ、彼女は一層震えてアークス様に縋りつくように身を寄せアークス様は自分の体で庇うために一歩前に出て見せる。

 魔法学園の卒業式パーティーには、不釣り合いな光景だ。


 「あらあら、可愛い子猫ちゃんったら。そんなところにいないでこちらへいらっしゃいな。私がもっと色々と教えてあげるから?」


 「なっ!なんてことをいうんですか!マリリア様、貴女様は何をおっしゃっているのかのか理解されていらっしゃるのですか?!」


 「あら?何かおかしいかしら?幾ら希少な光属性の魔法に目覚めこの魔法学園に特別に入学して男爵家の養女に成ったとしても、身分が上の方に無暗に話し掛けてはならないとか婚約者のいる異性の方に自分から声を掛けてはいけないとか貴族の暗黙のルールを教えていただけですけど・・・」


 「しらじらしいことを言うな!マリリア!オマエがこのナーサを執拗に虐めその心に傷を負わせていたのは全て解っているのだぞ!!!」


 ソロンの言葉に首を傾げて答えると、アークス様が私に噛みつかんばかりの勢いで怒鳴りつけてくる姿に私は扇で隠した口元からため息をついて見せる。


 「それは、ノートが破かれるとかドレスに飲み物を零されてシミにされたとか持ち物を隠されたとかクラスメイトの前でマナーがなってないと貶したとか私のブローチが無くなってその犯人として名指ししたとか。そんな詰まらないことですか?」


 「詰まらないこととはなんだ!そのせいでナーサがどれだけ傷ついたことか!!やはりオマエのような女がオレの妻になるのは相応しくない!先程の宣言通りに公爵令嬢マリリアとの婚約を破棄し、身分剥奪の上、国外追放とする!そしてこのナーサを新しく我が婚約者とする!!!」


 アークス様の宣言にパーティー会場中からどよめきが上がる。そして全員の視線が私に集中するのを受けて扇を手元に戻すとニッコリと笑って見せ、


 「承知しました。そのお言葉、しっかりと承りましたわ。・・・・さてこれでオメーとの契約も完了だな、ナーサさんよ」


 ・・・・会場中が一瞬にして静まり返った。オレ様の変貌ぶりにあちらこちらから戸惑いの声と視線がオレ様に突き刺さるのを心地良く感じながら、再度檀上にいるヤツらを見上げてみせる。案の定驚愕の表情でこちらを見ていやがる。いや一人だけ、ナーサとかっていう女だけが身体をガクガクと震えさせていた。目を見開いて怯えている姿は、流石に気持ちがいい。思わず後ろに近づいていた騎士もどきの腕をつかむと、ヤツらの真ん前にぶん投げてしまったくらいだ。


 「「キャーッ!!」」「「「ウワーッ!!」」「な、何がどうなっているんだ?!」「ちょっとどういう事なの!!」


 忽ち騒ぎ出す有象無象を見渡すと魔力を乗せた声を張り上げ叫ぶ。


 「ウルセエーー!!黙りやがれ!!・・・・よーし、それでいいんだ。おい、そのバカの治療をしてやらなくていいのか?死なないように加減はしているが、かなりの傷を負っているはずだぞ」


 会場中が騒いでいるのを強引に静まらせ腕組みをして頷くと、ぶん投げたヤツに顎をしゃくってみせる。その指摘に慌てて檀上にいたガブリエルと周りにいたイケスカナイ神官どもが駆け寄り治療呪文を唱え始める。それを見ながらオレ様は、優しくある事を指摘してやる。


 「それから逃げようとするなよ。この場所には結界を張ってあるんだ、触れると真っ黒焦げになる強力なのがな。勿論ここにいるヤツ全員でも壊せないのがな。だから魔術師どもも無駄なことはやめとくのが賢明だぞ」


 「・・・貴女はいったい誰なのですか?いえ、訂正します。貴女は何者ですか?」


 「ほう。オレ様の事に気が付くとはな。さすが老害どもと騙し合いしているだけのことがあるな。だが判らねえみたいだな。・・・いいだろう、特別に名乗ってやるよ。」


 こんな時でも鉄面皮なマーカスの質問にニヤリと笑ってみせると、そのままフワリと宙を舞い檀上より一段上にある玉座の前に降り立つと右手に生み出した特大サイズの炎で跡形もなく焼き尽くして見せる。その光景に魔術師のソロンが呆然と呟く。


 「な、なんなんですか?!その膨大な魔力は!!ま、まさかアナタは・・・」


 「そう、そのとおりよ!オレ様は悪魔!悪魔ベルナンデス様さ!!!」


 その言葉に会場中が騒然となる。それはそうだろう、こいつらにとっては伝説の中でしか伝わってないはずだからな。ニヤニヤしながら眺めているとアークス・・・面倒だからバカでいいか。そのバカが震えながらオレ様を指さす。


 「ウ、嘘だ?!嘘に決まっている!悪魔なんているはずない、いるはずがないんだ!そうに決まっているんだ!悪魔は、お前のようなあくまは!!」


 「ああ、そうだ。そのバカのご先祖とかになっている聖女に封印されていたぜ。最もその聖女とそこのバカになんの繋がりも無いがな」


 「つ、繋がりが無いだと?」

 

 オレ様の言葉にバカが訝しむのを見て、オレ様は笑いながら答える。


 「クックックッ。何にも知らねえんだな、そのまんまの意味だよ。オレ様を封印した聖女は、そこのバカどころかこの国の王族とは全くの赤の他人なんだよ♪苦労してオレ様を封印した聖女様の手柄を横取りした挙句口封じの為殺して『聖女様は悪魔を封印したが、その悪魔の激しい抵抗の為亡くなられてしまった。亡くなられた聖女様の為にここに国を作り、聖女様の偉業を語り継いでいこう』なんて悪魔顔負けの役者っぷりだったぜ♪あ、そうか。もう2000年以上も前だから誰も知らねえんだよな。言っとくけどな、悪魔はな『人間を騙すが嘘はつかないんだよ』な~。そんなことも知らねえのか♪」


 オレ様の話にバカが呆然としていると、治療呪文を行っていた神官の一人が大声で叫んだ。


 「王子!悪魔の声に惑わされてはいけません!それにその悪魔は自分でこう言っています。『人間を騙す』と!だから騙されてはいけません!」


 「ほう、なかなか賢いヤツがいるんだな。ま、そんなの如何でもいいんだけどな・・・オレ様は約束通りナーサ様にとって邪魔なこの女を排除しただけだからな。その為にこの女に憑りついて色々やったんだからな。感謝して欲しいもんだぜ」


 そう話しながらオレ様がチラリと目を向けると、ナーサがヒッと悲鳴を挙げてバカの後ろに隠れてしまう。その姿にオレ様の笑みが益々深まる。笑いながら見つめていると、


 「憑りついていた?・・・ま、まさか?!マリリア様の今迄の行いは!!!」


 鉄面皮のマーカスが叫んだ驚きの声に合わせて、オレ様は笑いながら叫んでやった。


 「アーッハッハッハッ!!!その通りだよ!!!この女に憑りついていたオレ様の仕業だよ♪」


 盛大なネタ晴らしに会場中が愕然とする中、オレ様は優しく説明してやる。


 「そのナーサ様はな、如何しても自分が王妃様に成りたくてな。オレ様が封印されていた秘密のはずの封印の間に無断で入り込んだ挙句、オレ様を封印から解放したんだよ。夜中にこそこそと出歩いていたのを危ないからと注意する為にやって来たこの女を生贄にしてな。『私がアークス様の前から去りますから、それだけは止めてください』って言ってたのにな」


 「・・・!そ、そんな馬鹿な?嘘だ!そんな訳ない!ナーサが!ナーサが、そんなことする筈がないんだ!!!僕を騙そうとしたってそうはいかないぞ、悪魔め!!!」


 「おーおー。さっすが10年もの間王妃教育を耐え続け、お茶会の誘いやらパーティー会場へのエスコートどころか週一回の顔合わせすらサボって逃げ出した挙句、出会って僅か数ヵ月のご令嬢に本当ならこの女が受け取る筈のプレゼントを渡しまくった王子様だな。さっすが聖女様を騙し討ちしたヤツの子孫だぜ。ご立派ご立派」


 ナーサが蒼い顔をして震えバカが真っ赤な顔で喚き散らそうとするより前に、今度は悲しみを滲ませた声で語り始める。


 「それに比べてこの女は健気だよな。10年も蔑ろにされ、勝手に生贄にされた挙句、ナーサ様を助ける為にオレ様の行動に邪魔をしてきたんだからな。お陰でこんな小さい嫌がらせしかできなかったんだからな。本当に忌々しいったらなかったぜ」


 そう言うと自分の胸元に両手を持ってきて、その両手を合わせてキュッと握りしめて見せ


 「でも、それももう終わり♪彼女の魂は消え、この身体はオレ様のモノとなり、そしてここに悪魔ベルナンデス様は復活した!全てここに居る皆様のおかげでな!一応感謝の証として礼を言わせて貰おうかな♪皆様、私が復活する為にお力添え頂いて本当にありがとうございました」


 そうして綺麗にカーテシーをして見せればそこかしこから「「「ふざけるな!!!」」」、「「私は何もしてないわよ」」、「悪魔風情が勝手に何を言っているんだ!」と不定の叫びが上がるが、


 「この茶番劇を見物していて、わが身可愛さに何もしないどころか一緒になって王子様のお言葉に拍手で答えたのはどこの誰ですか?」


 その言葉に全員が下を向くか忌々しそうに睨みつけてきたが、事実なので誰も言い返せない。


 「・・・何が望みなんだ?」


 暫く見つめていると耐えきれなくなったのだろう、バカが質問してきた。


 「あん?何言ってんだ?」


 「?!アークス様!いけません!悪魔と取引などされるのは!」「ダメです!危険すぎます!」「神に背くというのですか?!」と、取り巻きの三人が慌てて引き留めようと声を掛けてくる。治療を漸く終えた最後の一人も声を上げることはできないが、目だけで止めるように語りかけている。そんな取り巻き共に頷いてみせ、上着の端を握りしめているナーサに「大丈夫だよ」と囁くとオレ様に向かい公然と言い放つ。


 「もう一度言わせてもらう。貴方の望みを言ってくれないか?私もこの国の王子であり、王族だ。貴方の望みを可能な限り叶えて見せよう」


 「ほう、オレ様と契約しようっていうのか?」


 「そう取ってもらっても構わない。但し間違いがあってはならないから契約を交わす為に契約書を作成してサインを交わすんだ。その為にそちらに行ってもいいだろうか?まさか、たった一人の人間が近づくのを断るなど、貴方のような方が断るのですか?」

 

 「・・・・ふん、いいだろう。来な!但し奇妙な行動をしたら」


 「ええ、解っています」


 それからバカがゆっくりと近づいて来る。一歩ずつゆっくりと近づいて来るのにオレ様が「おい、何ちんたらしてるんだ?」声を掛ければ、「精神的に苦しいのでこれが精一杯なんですよ」と笑いながら近づいて来るのを見て満足気に頷いて見せる。


 (・・・あともう少し・・・もう一歩で・・・・今だ!!!)


 ゆっくりと近づいて行き、あと一歩まで来た瞬間!助走無しで一気に飛び込み右手に握りしめていた魔石が嵌められた指輪を突き出す!!強力な加護の力を込められており、これで殴りつければ多大なダメージを与えることが出来るはず!上手くいけば弱体化どころか消滅させることができるかもしれない。その際マリリアの身体に傷がつくとか最悪の場合消え去ってしまうかもしれないことは、この際目を瞑ることにする。この国の為とか世界の為とか言い訳は幾らでもあるが、ナーサの行動どころか自分の非情な振舞いをここでなかったことにする!その為にはこの悪魔と名乗っているヤツを倒すか、封印するしかない!その思いで繰り出した右手の指輪は狙い違わず彼女マリリアの身体に吸い込まれるように


 「な~~んてな♪」


 軽い声と一緒に左手でバカの手首を握ると軽~く力を込める。


 「ぐっ!」と呻き声と共に零れ落ちてきた指輪を素早くキャッチして取り巻き共へと突き放す。


 「残念だったな~。オレ様を騙そうなんてな、テメエ如き若造ができるわけねえんだよ!そうだな、この指輪はオレ様を騙そうとした罰として貰っておくぜ。だいたいそんな見え透いた罠に掛かるわけねえだろ♪オメエ、バカだな~~♪」


 悔しそうに睨みつけてくるバカを笑いながら見下ろすと会場の床全体巨大な魔方陣を展開し、そこに膨大な魔力を注ぎ込んでゆく。魔方陣全体から淡い紫色の魔力が立ち昇り、バカや取り巻き共に参加者達、更に警備の者等の身体に纏わりつくと溶け込むように身体に染み込んでゆく。悲鳴を上げたり逃げ出す暇すら与えず一瞬にして終わってしまった奴らが慌てて自分の身体に何か異常が無いか確認を始めて何も無いことに困惑し始めるのだが、突如上がった叫び声で事態が一変する。


 「キャッ!な、何かそこにいます!」「ヒッ!なんだこれは?」「ち、違うぞ!あっちだ、あっちにいるぞ!」「そこだ!そこにいるぞ!何を言っているんだ?!」


 「キ、貴様!何をしたんだ!!」


 会場中が騒然としてあちこちを指さして悲鳴を上げたり、言い争う光景にオレ様は、最高の笑顔でもって答えてやる。

 

 「なに、オレ様の復活記念にな。視界の隅、ほんのちょこっと端っこにな。靄が見えるようにしたんだよ。苦悶に歪む人間の顔が張り付いた黒い靄をな♪オレ様からのささやかな祝福だが、如何やら気に入ってくれたようで安心したよ」


 「オノれ!この悪魔め!!!」


 悲鳴を上げて縋りついてくるナーサを抱きしめながら青ざめた顔で叫ぶバカに向けて優雅に微笑んで見せると最後に締めの言葉を贈らせてもらう。


 「それではみなさん。これから先の皆様に安寧の日々と穏やかな生活が続くことを心の底から願ってどうか末永くお過ごしくださることを見守らせて頂きます」


 そうしてオレ様はその場から姿を消したのだった。


===========================================-==


 夜中。


 月の光が降り注ぐ小高い丘に一組の男女が佇んでいた。


 「あ~~、スっとした!!!」


 男性--ベルナンデスが笑いながら叫べば、隣りに立つ女性マリリアが頭を下げてお礼の言葉を述べる。


 「ありがとうございます。私を助けてくださったばかりか、私の名誉まで回復してくださいまして。本当に感謝の言葉しかございません」


 「いいってことよ。オレ様にとっても渡りに船だったからな」


 マリリアに手の平を振りながら気楽に答えながらシルエットでしか見えない魔法学園を眺めて満足気に頷く。


 「オ~オ~、皆すっげ~罵りあっているな。特にあの王子様と男爵令嬢様が酷いな。周りの連中に抑え込まれているから口喧嘩になっているけど・・・さっき迄の仲良しさんが信じらんね~な」


 「元々見栄と打算でしか考えられない方に他者を蹴落とすことしかできない方ですから、所詮こうなってしまうのは自明の理です。加えて病床で国王様が何もできないのをいい事に大臣連中に言われるがまま好き勝手していましたから・・・この国ももう終わりです」


 「・・・後悔しているか?」


 「いえ、国王様が倒られた時点で既にこの国に未来はありませんでした」


 「ふ~~ん。オレ様としては、こんなカワイ子ちゃんを蔑ろにしていただけで極刑もんだけどな」


 オレ様の言葉にマリリアは顔を赤らめて俯いている。そんな彼女に向けて真面目な顔付で確認する。


 「で、もう一度契約を確認するぞ。マリリア、お前は婚約破棄されてこの国からの追放と引き換えに悪魔ベルナンデスにその身全て、髪の毛一本に至るまで捧げるんだな」


 「はい。私のことを政治の為の駒としてしか見ない父や母の為に生きることにもう疲れました。死後の安息が無くともかまいません。貴方様のお好きになさってください」


 覚悟を決め目を瞑って佇む彼女にオレ様は鷹揚に答えてみせる。


 「よ~~し、判った。なら契約通りお前の全てを貰う。これがその証だ」


 そう言い放つとマリリアの左手を手に取りその薬指にさっき奪い取った指輪を嵌める。


 オレ様の行動と自分の指に嵌められた指輪を見て、心底解らないと混乱した顔をする彼女にオレ様はニヤニヤと意地の悪い笑顔を向けて見せる。それで漸く解ったのだろう、顔どころか全身を真っ赤に茹で上がった姿にして驚いて見せた。


 「ハッ?エッ?!な、なんで?何がどうなってこうなってしまうのですか?!」


 「何かおかしいか?ちゃ~んとお前を貰ったぜ、契約通りにな♪」


 「だからって!何故、こんな事をするのですか!意味を理解しているのですか?!」


 「別におかしくね~だろ?お前をどうしようがオレ様の勝手だぜ♪ペットとして飼おうが、妻として可愛がろうがオレ様の自由だろ。・・・なんだ、ペットの方がいいのか。それなら」


 「い、いいえ!そんな訳ありません!で、ですが・・・その・・・突然のことでして・・・」


 縮こまってしどろもどろに答える彼女にオレ様は気軽に笑いかける。


 「心配すんなって。何かあったとしてもオレ様がいるんだぜ。大船に乗ったつもりでいな」


 「・・・その根拠の無い自信が気に懸かるのです。そもそも2000年も前の封印だって」


 「お、おいおい!その話を今更言うなよ。お前とオレ様の仲だろ~~」


 マリリアが渋面で話し始めるのを慌てて遮る。2000年前の封印、聖女様の伝説と云えば聞こえはいいが実のところ聖女様なんて人は存在していない。当時何も無いこの地に国を作る為何かしら実績が必要だった為の作り話だ。その為にわざわざオレ様を呼び出して十日程封印されてくれと契約してきただが、


 「まさか、本気で封印してくるとはな~~」


 「当たり前です!悪魔の言葉とはいえ、そんなことが噂話でも広がったら国として成り立ちません。その時の方々が本気で封印をするはずです」


 ため息と共に呟くと怒りながらも心配した顔付で見つめてくるマリリア。云ってることは真っ当で相手を思いやる優しさと厳しく叱りつける気丈さもあるのだが、あのバカ共はそれが気にいらなかったらしい。正論であればある程尚更無視してくるのだ。オレ様にしてみれば別に何とも思わないのだが。


 「もう!聞いているのですか?!貴方様の為に話しているのですよ!」


 「はいはい、聞いてますよ~」


 「真面目に聞いてください!ですから、キャッ?!!」


 尚も煩く言い募ろうとするのを、不意打ちに抱きしめて黙らせる。そうしてオレ様の腕の中で真っ赤になってパニックしているマリリアの耳元で優しく囁く。


 「だからマリリアに一緒に居て欲しいんだ。オレに教えてくれないか?2000年の間に何があったのか?今の世の中について何をしていいのか?何が不味いか?何にも解らないオレを傍で支えて欲しいんだ」


 「・・・ずるいです。こんな風にされてそんな風に言われたら・・・何でも許せてしまうしかありませんよ」


 「悪魔はずるいんだよ」


 そう言って優しくキスしてやった。


お約束通りこの後この国は地図上から消えてしまいます。


一方国を出た二人は冒険者夫婦として活躍し後世に名を遺したりしたとか。


・・・・・すみませんが、登場人物の容姿は皆様の想像で補ってください。

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