表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/157

第22話:決勝戦『2-C対S』.メーレスの記憶

 第22話です。




「──やったのはお前だ、メーレス。お前が、責任を取りなさい」

 そう言ったフールの顔は、酷く嗤っていた。



「……分かり……ました……」

 メーレスは、フールの威圧感に耐えきることができず、認めることしかできなかった。


 ──その後、責任を問われたメーレスは、永久に王位継承権を失うこととなった。

 本来レスト王国は、王位継承の際に、国民投票によりもっとも王に相応しい者を王にすることがしきたりになっていたが、メーレスはその対象から外されたのである。




           ***




「──フール様、()()は完全に達成することができました」


「ああ。ご苦労だった」


「……いえ、私などにはもったいないお言葉でございます」


 王城のある一室。

 そこで、フールは部下数人と会議をしていた。


「第一王女は、これからも監視を続けろ。少しでも俺に反抗する予兆が見られたら、早急に対処しろ」


「了解致しました」

 そう言うと、部下は全員その部屋から出ていく。



「……」

(さて、邪魔者を排除するに絶好のチャンスだった。計画通り、俺に反抗的な取っていたエンブルの連中を暗殺し、その罪をメーレスに着せることができたわけだ)



 ──あと二人。

 残るはズィガとカインだけだ。


 第三王子のカインは、人望がない以上何の問題もないだろうが、問題はズィガだ。

 あいつは人望は俺の方が上回っているが、戦闘力がずば抜けて高い。

 この俺でも、()()()()では勝ち目がないだろう。

 

「……とは言え、問題はない」


 俺が保有する固有スキルがある限り、俺が負けることは絶対にあり得ない。


「俺の固有スキル【犠牲の(サクリフィシャル・)支配者(ルーラー)】には、何人たりとも、敵うことはない」





           ***





(……これじゃあ、だめだわ)


 そして、時は今から1年前の、新入生が入学する時期。

 メーレスは1人、暗い廊下を歩いていた。



(……あれから4年、()()()()を倒すために努力した……けど、どうしても、どうにもならない。……第一王子の強さは、明らかにおかしい)



 メーレスは、自身が王位継承権を失ってから四年が経過した。

 当時幼かった自分は、それについてそこまで悲観していたわけではなく、自分が王になる必要はそもそもないと思っていた。


 しかし、成長していくごとに彼女は第一王子に悪い印象を持つようになっていった。


 彼は、自身が王になるために、手段を一切選ばない。

 時に、いや、常に悪魔のような所業を見せた。

 実質彼に殺された者も、数えきれない。

 

 メーレスは、こんな人間を王にしてはいけないと、心に誓った。



 だから彼女は、第一王子を国王にさせないため、策を講じた。

 自身が国王になれない以上、誰か他の人物を国王にしなければならない。

 その際、誰を王にするか?

 それははじめから決めていた。自身が最も信頼し、気に入っていた人物。第三王子のカインだ。

 彼は弱虫な性格で、統率者としてはあまりにも正直で素直な人間だった。

 だからこそ、彼女はカインこそが『王』に相応しいと確信したのだ。


 とは言え、厳しいことは分かっていた。


 人望は圧倒的にフールが一位。

 魔法の強さは圧倒的にズィガが一位。


 そんな中で、カインが勝つのは難しいだろう。



(……でも本当は、そんなことは第一王子の強さの一つでしかない)


 だが、本当の問題は他にあったのだ。


 第一王子フールが保有する『固有スキル』。

 メーレスにとってこれは間接的に知った話だが、フールの固有スキル【犠牲の(サクリフィシャル・)支配者(ルーラー)】は、人間族にあるまじき強力な効果を持っているという。


 メーレスが集めた情報によれば、【犠牲の(サクリフィシャル・)支配者(ルーラー)】は、フール自身の勝利のために払う『犠牲』を()()することができるという。


 『犠牲』を固有スキルがほぼ自動的に生み出し、正当化する。


 それこそが、第一王子フールの真の力なのだという。



 ──それは見方を変えれば、フールがメーレスが自身の勝利のために犠牲になるべきだと思えば、メーレスはいつでも消されてしまうということになるのだ。


「……っ、どうしたら……!」

 唇をかみ苦悩する。そんな時だった。



「──……すみません、少しよろしいでしょうか?」


「おやぁ?何でしょうか?」

 メーレスは、突然話しかけられ内心動揺するが、鍛えたこともあり、顔には出さない。


「────」

 話しかけてきた少女──イディアは、包み隠すことなく、メーレスに問いかけた。



「おやおやぁ、貴方、あのときの小娘でしたかぁ。せっかく生かしてあげたというのに~」

 メーレスは、イディアのことを嘲笑うかのように答えた。

 これは、フールに自分がフールを王にしたくないことを悟らせないためだ。


「……それは……どういう……」


「そのままの意味ですわよぉ。貴方の父親は、私に協力しなかった──だから、ね。」


「…………」


「……それって……ただ、自分のことを拒んだから……殺したって事ですか……?私の父と母は……そんなことだけで、殺されたんですか!?」


「……おやおやぁ、『殺した』なんて、そんな下賤なことを言わないで下さいな。私は自らの手を汚したりなんかしませんわよぉ?貴方の父親と母親、使用人、全員──────『ただぁ、運が悪くてぇ、炎魔法が誤爆してぇ、運が悪く、家が全焼してぇ、運が悪く、たまたまそこに入ってきた強盗に襲われて、亡くなってしまった。』それだけの話なのですからぁ」


 本当のことは、絶対に言ってはならない。


「……っ!!」

 耐えきれなくなったイディアは、メーレスに魔法を繰り出した。


(……まぁ、そうですよね。貴女の中では、貴女の仇は私なんですから。……ごめんなさい)


「ぐばっ!?」

 メーレスの反撃により、イディアは吹き飛ばされた。



(……これからは、なるべく関わらないようにしないと、この子にためにもならないわね)



 ──この後、イディアとメーレスは、メーレスの仕込みにより約1年の間会うこともなかった。


 1年後、2年Cクラスに得体のしれない新任教師が入ってくるまでは。



 -第22話 完-

 お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ