第21話: 決勝戦『2-C対S』③
第21話です。1ヶ月ぶりです。
「えー……爆風などにより、会場が現在めちゃくちゃになってしまっているため、急遽修繕を行うことになりましたので、しばらくお待ちください」
中堅戦。
ズィガとハウセが死闘を繰り広げた結果、会場はパニックに陥ってしまった。
そのため、中堅戦は引き分けとし、破壊された会場の整備を行うために大将戦を延期する事態に陥っていた。
「……まずいですね……どうしましょうか……」
会場の整備には、高い魔法力を持つ魔術戦大会のスタッフがあたっているのだが、会場の被害が大きすぎてなかなか整備が終わらない。
他の魔術師の力も借りることができればいいのだが、会場の修繕作業を行うためにはそれに適した魔法属性が必要のため、他の魔術師はせいぜい掃除をすることぐらいしかできない。
回復属性のポーラもまた、掃除をすることぐらいしかできることがなかった。
「……あ」
そんな中、ふと思い出す。
『彼』ならなんとかできるのではないか?
──数分後。
(……なんか思っていたよりも甚大な被害がでてるな)
ポーラからの要請により、急遽平が駆け付けた。
平は本来警備をしているはずなのだが、このようなときは仕方がない。どのみち今なら中に一般客はいないので、誰か侵入してきてもさほど問題はないだろう。
(さて、どうするか……)
俺の魔法適正は闇、光、回復だが、その中で使えそうな魔法は──これか。
「『完全なる修復』」
─────────────────────
【魔法名】完全なる修復
【属性】光/サポート
【消費魔力】12000
【範囲】認識できる範囲にある無生物全て
【効果】無生物を特定の時間の状態まで復元する。
─────────────────────
「……よし」
俺が『完全なる修復』を唱えると、会場はみるみるうちに元に戻っていく。
どうやら、上手くいったようだ。
見た感じ、修復できていない場所はないようだ。
「……………………」
ポーラは、自身の目の前で起きている状況を理解できず、絶句する。
平ならばどうにかできるかも、とは思っていたが、これはそのようなレベルをはるかに超えていた。
「では、そろそろ決勝戦を再会しましょうか」
平はポーラのそんな心情など全く知らないため、決勝戦の続きを行うことだけを考えていた。早く生徒たちの試合が見たくてたまらなかったのである。
「……え?……あ……は、はい!!」
***
──スタジアムの修繕開始から約1時間半。選手や観客たちがスタジアムへと戻ってきていた。
どうやらここまでの規模の破壊はなかなかないとは言え、スタジアムが破壊されてしまうことはなくもないらしい。そのため、観客の中には意外と慣れている者も多かった。
今、スタジアムの中央部に、大将戦の出場選手が揃っていた。
一人は、2年Cクラスの大将イディアだ。
彼女は、この魔術戦大会で2年Aクラスに勝つため、平の指導の下で死にもの狂いに特訓を重ねた。また、ステータスを開放したことにより、今まで結果に現れていたかった部分のステータスも現れるようになった。
その結果、大将の名に恥じない強さを手に入れていた。
もう一方は、この学校の最上位クラスであるSクラスの大将メーレス。
彼女は、イディアの因縁の相手。
ズィガの実の姉であり、この国の第一王女である。
「おやおやぁ、まさかここまで勝ち上がってくるとは思いませんでしたよ?イディアさん?」
「……。」
メーレスの言葉に、イディアは無言を貫く。
「しかし、よく頑張りましたねー。2年Aクラスという格上の相手に勝利をおさめ、退学を回避してみせたのですからぁ?」
「…………そうね」
「あらぁ?せっかく私と話ができるのに、何か言うことはないのかしら?イディアさん?」
メーレスは、いつも通り笑みを浮かべながら、不思議そうに首を傾げた。
「……悪いけど、あんたに言うことはないわ。私は、この試合で貴女に勝つ、それだけよ。貴女に勝って、私は私を認めさせるわ」
イディアの瞳は、既に覚悟ができていることを物語っていた。
「……あらぁ。それは良い心がけかもしれないわねー」
「……」
「両者、準備はできていますか?では、決勝戦大将戦、試合開始です!!!」
「……っ【水よ──
「──でも、今回は、ちょっと違うわよ?」
メーレスは、不敵に笑う。
「え…………!?」
そのすぐ後のことだった。
メーレスとイディアの周りを囲うように、突如として光の膜が出現した。
***
「……メーレスの魔法か?」
大将戦に異変が起きていることに気づいているのは、平のみだった。
試合開始直後。
突如として光がメーレスとイディアを包んだ。
そして次の瞬間、観客の目には魔法による激しい戦いを繰り広げるメーレスとイディアの姿が映し出されたのだが…………これは幻覚だ。
実際には、二人ともスタジアムの中央で会話をしているのだが、それに気づいているものは、今のところ自分以外いない。
これは……魔法ではなく、固有スキルによるものなのだろうか?
「……様子を見るか」
***
「──え……?ちょっと、聞こえなかったんだけど……なんですって?」
「言葉の通りですよぉ?イディアさん。今まで、本当に、貴女には悪いことをしたと思っているわ」
メーレスは、いつもの『他人を心の奥では見下しているような』笑顔を見せなかった。
「……どういうことよ、本気で言っているの!?」
「私はいつでも本気ですよぉ?イディアさん、貴女とこうして二人きりで話すことができる瞬間を、ずっと待っていたわ」
そう言いながら、メーレスは観客席を指さす。
「今この瞬間、私と貴女がこうして話していることは、私の固有スキル【幻覚者】によって、完全に隠蔽されているわ。観客席にいる人間──校長や弟を含めて全員が、私と貴女が激戦を繰り広げていると思っているわ」
「……」
イディアは、メーレスの指差す方へと目を向ける。
(……本当に気付いてないのね。固有スキルって、通常人間族が手に入れることはできないはずだけれど、これじゃあ疑えないわね……)
「──というわけだから、今から私と、お話を始めましょう?」
メーレスは、どこか疲れたような笑顔で、イディアに目を向けた。
***
──これは、今から5年前に遡る。
レスト王国第一王女であるメーレスは、王城の応接室に呼ばれていた。
応接室には、国王を含め、この国の重鎮たちが集まっていた。
(……なんだろう、これ)
メーレスは現在とは違い、内気な性格で、普段はあまり外へ出たがらなかったのだが、今回だけは緊急事態ということで応接室へと連れてこられていた。
(……なにがあったんだろう)
応接室の中は、やけに険悪な雰囲気に包まれていた。
そんな中、第一王子であるフール=ア=レストが、王の耳元で何か囁いたかと思うと、次の瞬間、大きくはないが、良く響く声で、こう言った。
「エンブル伯爵家の家族が昨日殺害されたらしい。これは、お前が指示したんじゃないのか、メーレス?」
その言葉に、辺りがざわめく。
「え……?違います、どういうことなんですか、お兄様!?」
メーレスは当然ながら、何が起きているのか理解できず混乱する。
「しらばっくれるな、メーレス。お前の部下がエンブル夫妻を殺すようにお前から命令されたと名乗り出たのだ」
フールは、メーレスに詰め寄る。
「お前の派閥との間で何かあったのだろうが、こんなやり方が認められる訳がない!」
「……そんなっ、私はそんなことやって…………ひ!?」
メーレスは、否定はしたのだが、フールが見せた人を殺すような目に怖じ気ずく。
「──やったのはお前だ、メーレス。お前が、責任を取りなさい」
そう言ったフールの顔は、酷く嗤っていた。
-第21話 完-
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