番外編9:裏側
久々に番外編です。
【ハウセ=グリンド】
──エキシビションマッチが始まる少し前。
2年Aクラスと2年Cクラスの対戦後、2年Cクラスのハウセ=グリンドは、2年Aクラスのアイ=ア=フォートの元へと来ていた。
「アイ=ア=フォートさん。ハウセです。少々よろしいですか?」
ハウセは、アイに笑顔で話しかける。
ちなみに現在、フレディは医務室だ。
「……っ、は、はい……」
だが、アイはハウセのことを少し警戒していた。
今まで、人が自身に話しかけて来ることなどなかったからだ。
「……」
彼の口ぶりから、私は過去に彼に会ったことがあるらしい。
けれど、覚えていない。
声だけしか聴いたことがないのだから、そんな前のことなんて、覚えていなくても仕方がない……よね?
「……えーと……?」
私には、こんな返ししかできなかった。
まともに話すのは、いつぶりだろうか。
「単刀直入に申し上げます。アイ=ア=フォートさん。おそらくですが、貴女の目は、治ります」
「……え?」
私は、その言葉を理解できなかった。
氷の神によって呪われてしまった人間の目を、治すことなどできるわけない。
だが、目の前にいる人間の声は、真剣だった。
「一回、僕に試させてはくれませんか?もし、効果がなかったり、失敗したりしたら、僕はここで自害いたします」
「え、そんな、ちょっと、待って」
「一度、試させて、くださいますか?」
「……」
アイは、しばらく沈黙する。
「……いい、ですよ。……自害もしなくて良いです。……私のために、そこまで言ったくれるのは、貴方……だけなので」
沈黙の後、アイは承認した。
「──では、いきます。『解呪』」
ハウセは、『解呪』を使用した。
この魔法は、平に教えてもらった、ハウセの使える魔法の中では現在最強の魔法である。
「……え!?」
その瞬間、アイの灰色の瞳に、光が灯される。
その瞳は既に、灰色ではなく、美しい蒼へと変わっていた。
「……う……そ……見え……る……?」
「上手くいったみたいですね!」
ハウセは珍しく、少し大きめの声を挙げる。
地道に練習と研究を続けていたのもあって、内心、自分のことのように喜んでいた。
「……あ、貴方が、ハウ……セ……さん?」
アイは、目の前にいる人間の顔を見て、そう言った。
「……はい、アイさん。──初めまして、ハウセ=グリンドです。……もしよろしければ、友達になってくれませんか?」
***
【ズィガ=ア=レスト】
「────はいっ、どうも、こんにちハァァァァァァ!!!!」
男の甲高い声が、スタジアムに響く。
それと同時に、スタジアムは謎の人間たちによって占拠された。
(……なんだぁ、こいつら)
ズィガは、占拠された観客席に、眠そうな顔で座っていた。
(……はぁ……めんどくせぇ……)
「さ・ら・にぃー!!!!こんなものまでプレゼント!!!!!!!!」
スタジアムの中央部で、リーダーと思われる男が何やら宣言すると、スタジアムを囲むように黒い幕が貼られる。
(……ん……?結界か?)
「私は支部長でリーダーの『ザーク』!!我々の要求は2つでぇーす!!!1つはこの『ハント王国国立魔術学校レスト王国校』に保管されている〈秘術の書〉。もう一つはここにあるありったけの『魔力石』でぇす!!!!!もしも、それらを渡してもらえないのなら、ここにいる者を1人ずつ公開処刑して差し上げましょう!!!!」
男が、大声でスタジアム全体にそう言い放った。
(……あー……そういうやつらか……まじで面倒いやつじゃねーか…………しかも、あの男、結構やるな)
「……貴様ら、見ておれば随分と勝手なことをしてくれたじゃないか。全員拘束させてもらう!!『サンダーウォール』!!!」
そして、それを聞いた校長が、『サンダーウォール』を放つ。
「……何……?」
「──へへっ!!残念ですねぇーー!!」
「──ぐはっ!?」
だが、魔法は不発に終わり、校長はザークに蹴りを入れられる。
(……へぇ。なかなかやるじゃねーか)
「──はいっ、もう一度ちゅうもーく!!!!我々が先程皆様に差し上げたプレゼント!!!その中身は何と!!『我々以外の人間のステータスを100分の1にする空間』でございますっ!!!!!」
(……ああ、そういうことか。確かにさっきからさらに体が重くなったわけだなー)
だが、状況を理解してなお、ズィガは余裕の表情を崩さない。
(──俺の『力』、解き放ってみるか?)
自身の奥底に秘めている『力』。
それこそが、ズィガが王国最強の魔術師であると言われる所以。
(前にあの新任教師と戦ったときは油断して、『力』を解き放たなかったがな……)
「……まぁ、あの新任教師が何とかするだろ……どこに転移したのかはしらねーけど」
(……最悪、俺が出れば良いんだしな。俺はなるべく楽させて貰うぜ。あの教師の力量、こっちから観察してやるよ)
ズィガは、あの新任教師なら転移されても戻ってくるだろうと、本能的に理解していた。
***
【メーレス=ア=レスト】
「──あらあら。これは大変なことになりましたわねぇ?」
占拠されたスタジアムの王族用観客部屋で、メーレスは紅茶を飲みながらくつろいでいた。
会場が占拠させたとは思えないほどの緊張感の無さだが、それもそのはず、メーレスは既に、部屋へと入ってきたテロリストを壊滅させていたからだ。
(さて……これでしばらくはこの部屋は安全だとは思いますが……あのザークという男、かなりやりますねぇ……ステータスが低下した状態だと厳しいでしょうねぇ……下っ端に関しては、常備している魔道具で何とかなりましたが)
「……しかしー、『あの新任教師』の実力をまた見れるかもしれませんねー」
(この試練をあの新任教師が乗り越えられたとしたら、もしかしたら『あの男』にも……)
メーレスは、何かを祈るかのように、瞳を閉じた。
-番外編9 完-
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