第16話:反撃
第16話です。
「………俺か?俺はこの子の『担任』だ」
目の前に突然現れた男は、自分が先程嬲り殺した女子生徒の『担任』だと言った(正確にはまだ死んでいないようだが、時間の問題だろう)。
「……担任……?」
(……どういうことだ?教員は全員拘束したはずだが……)
だが現に、男は何の拘束もされておらず、とても大事なものを扱うように、その女子生徒を抱えている。
「すまない……俺の不注意でお前たちを傷つけてしまった。────『フルヒール』」
男は小声で女子生徒にそう言うと、そのまま魔法を唱えた。
「──なっ……!?」
男が魔法を唱えると、血まみれでボロボロだった女子生徒はまるで元から死にかけてなどいなかったかのように回復した。
無数に刺さっていたナイフは消滅し、体に空いた穴は見当たらない。
ザークは、初めて驚きの表情を見せる。
(……何故この結界内で魔法が使えるんだ!?)
この結界内では、自分たち以外の人間のステータスは100分の1になる。
つまり、魔力値も100分の1になり、どんなに優秀な魔法使いでも、初級魔法すら使えるのか怪しいレベルだった。
しかし、目の前の男は、瀕死の生徒を一瞬で全回復させるほどの魔法を、この結界内で放ったのだ。
その時──
「……支部長、そいつはまずいです!!──その男は、『例の対象』です……!!!!」
どこからともなくそんな声が聞こえてきたのだ。
「……っ!?」
ザークは、瞬時に男から距離を取る。
『例の対象』──すなわち、『異世界の英雄』。
(……まじかよ……『転移の魔力石』を使ったんだぞ?自力で戻ってくるなんて、できるわけが……)
「──さて、何やらお前達は生徒たちを怖がらせているみたいだが、何が目的なんだ、お前たちは?」
目の前の男──夜川平は、淡々としていた。
(……っ、これはまずいな……。『異世界の英雄』はそもそもこの世界の人間とは『格』が違う。ステータスが100分の1になっても戦えるだけのステータスは残っているはずだ)
「──先生!!!セイレさん!!!」
そんな時、観客席から声が聞こえる。
2年Cクラスのイディアだった。
イディアは、平の乱入により混沌とし始めている観客席からスタジアムの中央へと飛び降りてくる。
「……イディアさん?」
飛び降りたイディアは、そのまま平の方へと走ってくると、そのまま飛びついた。
「……っ!?」
セイレを抱えていた平は、それによって少し態勢を崩すが、倒れることはなかった。
「──本当に、心配したんです……!セイレも……本当に良かった……」
イディアは涙を流しながら、戦った者、そして帰ってきた者の無事を喜んだ。
***
「──なるほど」
俺は、観客席から飛び出してきたイディアから事情を聞いた。
どうやら『暗黒の救世主』という組織が国の大事なものを要求した結果、国が拒否し、人質が殺されようとしていた、と。
それに、国王の命令でやってきた王国騎士団員や王国魔術師たちはほぼ死亡、と。
(……はぁ。もちろん、その組織は気に食わないが、それ以上に気に食わないのは国王だな。話を聞く限りだと、ただの無能でしかないな。……騎士団員も魔術師も学生もみんな死んで良いと思っているようなものじゃないか)
「ただ……不幸中の幸いというかなんというか。『良い』タイミングではあったかもしれないな」
「?」
イディアはセイレを平から引き取る。
「──さて、じゃあザーク。お前がリーダーってことで間違いないんだな?」
「…………。ちっ!!!」
しばらく様子を見ていたザークは、先手必勝とばかりに平へと刃を放つ。
「……っ。『魔剣』!!」
だが、平も、魔法によって生成した『魔剣』でそれに応戦する。
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【魔法名】魔剣
【効果】魔法で剣を生成する。
【魔力消費】1000
【属性】闇/攻撃
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「──ちっ!!まだそんな魔法を使えるだけの魔力が残ってやがるのかよ!!」
ザークの顔には焦りが見える。
「……ああ、そう言えばこの結界内ではステータスが100分の1になるんだったか」
(正直、レベルが上がりすぎたせいで100分の1になってもよく分からないんだが……)
ちなみに、現在の俺のレベルは192,201という訳の分からない数字になっている。100分の1にしても十分すぎるステータスなのは間違いない。
「……」
(しかし──この男、強いな)
俺が異世界の英雄でなかったら、確実に負けていただろう。
しかし、俺は異世界の英雄だ。
負けないし、負けるわけにはいかない。
「対戦は終わりだ」
俺は、魔剣をザークに突きつけた。
―第16話 完―
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