第15話:とある獣人の反抗
第15話です。
「……そうかぁ……いいねぇ……その表情!!!」
(自分の方が上だと思って調子に乗ってる人間を倒すのは…………本当に愉快だ!)
「……貴様、どうやら我々の実力が分かっていないようだな。まぁ、良い。さっさと終わらせてやろう!!」
そう言って、騎士団長はザークへと剣を振り下ろす。国王の申し出もあってその剣は致死性のない剣だ。
とは言え、相手を殺すためではない戦い方をしていてもかなりの威力である。
「────何?」
しかし、その剣がザークへと届くことはなかった。
ザークへと届く前に、ザークはその場から消えていたのだ。
「どういうことだ?どうやら、逃げ足は速いらしいな………………だが、これならばどうだ?あらかじめ構築された魔法を剣に纏わせた全体攻撃。これを避けられるものなら避けてみろ!!『炎剣』!!!!」
騎士団長は、自身の得意技を発動させ、たのだが──
「──な、何!?」
騎士団長はここで、初めて動揺を見せた。
その手に持たれた剣には、炎など一切見ることができない。
それどころか、先程から魔法が発動している様子が見られない。
「だからぁ、言ってるでしょ?この結界は私たち以外の人間全員のステータスを100分の1にするの。魔力、攻撃力、速さ、全てが100分の1なんだから、そんな高度な攻撃、できるわけないだろぅ?」
ザークはナイフを手に取ると、そのまま騎士団長の首に突き刺した。
「……なっ!?はっ、?」
騎士団長は、そのまま崩れ落ちた。
そしてその後ろでは、『暗黒の救済者』の構成員と王国騎士団、王国魔術師の戦闘が行われているのだが、それは本当に酷いものだった。
ステータスが正常でかつもともとの戦闘力がかなりのものである構成員たちは、騎士や魔術師を遊ぶように殺していく。
「──な、何が、起きているのだ!?我が国最強の騎士と魔術師たちだぞ!?何故やられているのだ!!!早く親玉を仕留めんか!!!」
国王は、その光景を見て動揺を隠せていない。侵入した騎士団、魔術師が次々と殺されていくこの光景を信じられていないようだった。
「……さて、そろそろかな」
ザークは、国王の方を向いて話しかける。
「──じゃあこれから、観客席にいる魔術師の卵たちを、殺していきまーす!!国王様が要求を飲むまで、この虐殺は終わらないぞ〜?」
「──なっ!?」
その言葉は、スタジアム全体に響いた。
「いやああああ!!!」
悲鳴を上げる生徒もいる。
だが、観客席周辺は構成員たちが大勢待機しており、身動きが取れない。
「──さてぇ、じゃあ、そっちにいる子たちここに連れてきて!!」
ザークは、観客席のうち、2年Aクラスの生徒がいる場所を指さす。
「……っ」
その場所には、試合で負傷したメンバー以外は全員いた。
その全員、ステータスが100分の1になり、初級魔法すら発動できないため、大人しく着いていくほかなかった。
***
「──はーい、では、これから1人ずつ殺していきます!!」
そうザークが言うと、連れてこられた2年Aクラスの女子生徒の1人がザークに引き渡される。
「ひっ……」
「──さぁ、国王様、この少女含め未来のある若者たちを助けたいと思うのならば、要求を飲んで下さい!!」
ザークは、再び国王へと視線を向ける。
「……く……ならん!!……貴様のようなものの要求など、絶対に認められんわ!!!」
だが、国王は頑固として、要求を認めない。
「……っ、王よ、ここは少しでも生徒たちの命を優先していただきたい!!」
国王の後ろで立っているレイトは、自分たちの生徒が殺されそうになっている現状に耐えられず、国王にそう進言した。
「……な、レイト!?貴様、我が国の力よりも未完成な学生などが重要だとでも言うのか!?……ならん!そんなこと、絶対に認めるわけにはいかんのだ!この非国民がぁ!」
だが、国王はその言葉に逆上した。
「──ははっ、ここまでくると愉快だ!!じゃあ、そっちの気がすむまでたくさん殺しちゃうぞ〜!!」
国王が完全に冷静さを失っていることを、ザークは声を出して笑った。
そして、女子生徒の首を掴むと、そのままナイフを女子生徒に振り下ろした。
「……ひっ」
「──っ!!『ロック・バレット』!!!」
だが、そのナイフが女子生徒を貫くことはなかった。
どこからか、魔法の詠唱が聞こえてくる。
気づけば、スタジアムの中央部の端に、1人の女子生徒が立っていた。
「セイレさん……」
観客席にいるシンシアは、小さな声で心配そうに名前を呼んだ。
そう、スタジアムに降り立ったのは、2年Cクラスのセイレ=アビュースだった。
「──ん……?」
ザークは、一瞬思考を停止させられたのだが、すぐさま状況の理解のために再び頭を働かせる。
(……魔法……?『ロック・バレット』……かなり強力な魔法のはずだ……何故この空間で使えるんだ……?100分の1にしても戦えるだけの戦力?まさか、他にも異世界の英雄がいたのか?)
そう思い、詠唱が聞こえた方を見た。
そして、理解する。
「──そうか、なるほど……これは驚いた。」
ザークは、納得した表情を浮かべる。
「獣人様ってわけね」
***
(……俺としたことがなぁ……これは予想してなかった。まさか差別意識が特に強いこの国の……しかも魔術学校に『獣人』がいるとはなぁ……。たしかに、『獣人』は種族上は『人間』ではない。同じような外見、中身なのに、だ。つまり彼女はこの結界の影響を受けない)
「──いいねぇ、じゃあ少し、楽しもうか」
そう言って、ザークは女子生徒を放り投げる。
「…………許さない」
ザークが例の獣人──セイレに近づくと、セイレは小さくも芯の通った声でそう呟く。
「ん?どうかしたのかい?」
「……こんなにみんなを傷つけて、苦しめて……そんな酷いことをするなんて、絶対に許さない…………でも、私だけじゃ多分この状況を全てなんとかすることができない」
「へー?」
「……だから、私は────先生が帰ってくるまで、時間を稼ぐ。……誰も、殺させない」
「……そうかい、じゃあ、はじめよっか!!」
「……っ!!【大地よ──」
セイレは、ザークへと土属性の攻撃魔法をひたすらに繰り出していく。
一方のザークは魔法を使わずに、ひたすらナイフを片手にセイレを襲う。
土属性の魔法は発動まで比較的時間がかかるため、ザークの方が有利だが、セイレはその不利をものともしない戦いぶりで、ザークと互角、とはいかないが、かなり善戦する。
「……おいおい、どうしたんだい!」
「……っ!?」
──だが、10分が経過する頃。
次第にセイレが押され始めた。
どうやら、ザークはここまでかなりの余力を残していたらしい。
「……ぐぁ!?」
ついに、ザークのナイフがセイレの腕にぐさりと刺さる。
「──ほらほら、もっと頑張って!!」
ザークは、子供を弄ぶかのように、セイレを少しずつ貫いていく。
「あ゛あああ!?……っ!!」
「おっ!?」
セイレは悲鳴を上げるが、ナイフが刺さったままの体を無理に動かし、ザークに向かって近距離で『ロック・バレット』を発動した。
突然の魔法により、ザークの頬に少し傷がつく。
「──ふふふ、良いですねぇ!!」
「……あ゛!!!!」
そのセイレの奮闘ぶりに、観客席は、次第に声援に包まれる。中には、自分も戦おうと乗り出す生徒までいるが、構成員たちが立ち塞がる。
これまで獣人差別を行っていた人間、観客席の2年Cクラス、Aクラスの人間、皆がセイレを応援していた。
──しかし、現実は厳しい。
「セイレさん!!!?」
気づけば、セイレは、ナイフを刺されたまま、ほとんど動かなくなっていた。
この場にいたほぼ全員が絶望したことだろう。
2年Cクラスの生徒は、セイレのことが心配で顔を青くしている者もいる。
「……なんだぁ、もう終わりですかぁ……。まぁ、じゃあ、殺すの再開するかぁ………」
「じゃあ、今度は俺の相手をしてくれないか?」
「んー?別に良いけ…………………!?」
ザークは、突如として現れた人物に、一瞬気付かなかった。
(……なんだ!?)
その人物は、先程までザークと瀕死になるまで戦っていたセイレを、大事に抱えている。
「──誰だ!?」
ザークは、セイレを抱えながら近づいてくる男を警戒する。
「………俺か?──俺はこの子の『担任』だ」
―第15話 完―
お読みいただきありがとうございます。
やはり2日に1回が限界でしょうか……。
pv、ブックマーク、ポイント評価等、ありがとうございます。




