第8話:『2年Aクラスvs2年Cクラス』③
今日は早めの投稿です。
第8話です。
────魔術戦大会の少し前。
魔術学校の廊下にて。
「──夜川先生、少しよろしいでしょうか?」
一人の男子生徒が、俺に話しかけてきた。
「……?ああ、ハウセさんでしたね。どうしましたか?」
「実は……先生に相談があります」
「なんでしょうか?」
「ある魔法について、教えてもらいたいのです」
***
──8年前。
レスト王国の王城にて、王族貴族が一同に集まるパーティーが行われていた。
王城の大広間。バイキング方式の食事会にて。
当時7歳だったグリンド伯爵家の長男、『ハウセ=グリンド』は、父親に連れられてその場に訪れていた。
「──ハウセ、お前はできる限り王族、貴族に挨拶をしてきなさい。挨拶は大事だからな?」
「はい、お父様」
ハウセは、父親の言う通りに、あちらこちらに挨拶に回っていく。
「……あれ?」
そして、大広間の端の端に、一人の少女がいるのに気付いた。
「……?」
その少女は、この広い大広間の端で、一人椅子に座っていた。
この場に居るということは、彼女も王族か貴族なのだろう。
しかし、誰も彼女に近づこうとしない。
基本的に、どの人も挨拶に回る、会話を楽しむなどしているのだが。
ハウセは、気になったためその少女に近づこうとする。
その時だった。
「──はぁ……あの『アイ』とか言う娘……忌々しいやつだ。目が見えないのも、教皇が言うには『氷の神』による呪いだそうじゃないか」
「──それに、『氷属性』とは……まるで魔人ではないか」
「──本当に、こんなのがこの国の公爵家から生まれてしまうなど……」
「……いっそのこと、殺してしまえばいいのではないのか?」
「いや、しかし、さすがに公爵家の人間である以上、簡単に始末することなどできんぞ……?」
そんな数人の会話が、どこからか聞こえてきたのだ。
「……」
(ずいぶんと酷い言い方だ)
ハウセは、その『アイ』という人のことが少し気になったのだが、とりあえず目の前にいる少女に挨拶をしておこうと思い、少女へとさらに近づいた。
「……!」
そして、ハウセは気づいた。
目の前の少女は、椅子に静かに座ったままどこか遠くを見ているようだったが、よく見ると生きている人間にあるはずの瞳の輝きがなかったのだ。
***
第二回戦、第一試合。
シンシアが勝利したことにより、2年Cクラスは一勝二敗となった。
残りは副将戦と大将戦。
──さらなる激戦が始まる。
***
「──さて皆さん!!ここまで2連敗となっていた2年Cクラスが、中堅戦で勝利したことで、また分からなくなって参りました!!!!────」
司会の女性が、ここまでの試合を振り返る。
「────ここからはそれぞれ未知の領域となります。昨日の一回戦では、2年A,Cクラス共に中堅戦で試合が決着したため、お互いに全くデータのない生徒が戦うことになります」
「……」
「……」
スタジアムに両クラスの副将が入場する。
<2年Aクラス副将:『アイ=ア=フォート』>
銀髪に銀色の瞳のフォート侯爵家の次女。大将のフレディの妹。
身長は155cmほど。服装は制服。
種族は『人間』。
目が見えないが、特殊な魔法により日常生活を送ることはできる。
魔法属性:氷
<2年Cクラス副将:『ハウセ=グリンド』>
水色がかった白髪に、水色の瞳の少年。グリンド伯爵家の長男。
身長は175cmほど。服装は制服。
種族は『人間』。
成績が良い(座学も実戦も)。
魔法属性:闇
─────────────────────
副将戦
『アイ=ア=フォート』対『ハウセ=グリンド』
─────────────────────
「──やぁ、『アイ=ア=フォート』さん」
そんな中、2年Cクラスの副将、『ハウセ=グリンド』は、明るい口調で相手の女子生徒に話しかける。
2年Cクラスのハウセは、Cクラスの男子たちのまとめ役である。
成績は座学ではシンシアと並んでクラストップ。
実戦もクラスでは唯一学年の半分よりも上位だった。
そして、平によってステータスが解放されたことで、クラスでは相手がいないくらいの魔法力を手にしたのだった。
「…………」
2年Aクラスの副将である『アイ』は答えない。
「──2年Aクラスの大将は、君の実の姉である『フレディ=ア=フォート』さんだったよね?」
「……………………ええ」
無言の後、アイは言葉を発した。
「……でも、その割には関りがなさそうに見えるんだ。それって何でなのかな?」
「……………………」
「それは、君のその『目』が、関係しているんだよね?」
「……………………っ」
「────では、準備ができました!!!!これより試合を開始します!!!!」
司会が試合の開始を宣告した。
それと同時に、両者戦闘態勢に入る。
「……見えてないんだよね、その目」
だが、それでもハウセは話を続ける。
アイは、生まれつき目が見えていない。
その銀色の瞳に、光は灯されていない。
「……」
「その目は、君の属性が関係していると、言われているんだよね?」
「……」
「君はかなり珍しい『氷属性』の魔法使いだ」
「……」
「そして君は、生まれつき目が見えない。──それは、氷の神の『呪い』だと、そう言われて育ったんだよね?」
「………………そうね……もう良いかしら…………?」
アイは、もういいと言わんばかりに、魔法の構築を始める。
「ああ、そうだね。じゃあ最後に一つだけ」
「……?」
「ようやく、貴女を助けられます」
「…………え?」
アイは困惑した。
「──話が長くなってしまいましたね。さぁ、試合を始めましょう」
***
──再び8年前。
「初めまして」
瞳の輝きが失われていたその少女に、ハウセは話しかけた。
「……」
だが、少女は答えない。
「私はグリント伯爵家の長男、『ハウセ=グリンド』と申します」
それでも、ハウセは話続ける。
「……」
少女はやはり無反応だ。
そしてここで、ハウセは気づいた。
どうやら、この少女はハウセが自分に話しかけていることに気づいていなかった。
その態度は、自分に話しかける人間がいるわけないとでも言っているようだった。
「お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
そう聞いても、少女は無言のままだった。
(名前を呼ばないといけないようですね……。お父様に聞いてみましょう。お父様は情報通ですからね)
ハウセは、父親のもとに行った。
ハウセがその少女のことを話すと、父親はやはりその少女のことを知っていたようで、知っていることを全て話した。
(なるほど……やはり先ほどの人が『アイ』さんだったのですか。しかもこの国の公爵家の人間……)
ハウセは、すぐさま先ほどの少女の元まで歩いて行った。
「初めまして。『アイ=ア=フォート』さんですよね?」
今度は、名前で呼んでみる。
「……え?」
すると、今度は反応があった。
「──僕の名前は『ハウセ=グリンド』です。よろしくお願いします、『アイ』さん。」
***
「──さぁ、試合を始めましょう」
「………………え、ええ…………そうね……【─」
アイは、少し困惑していたが、魔法の構築は完了しているため、詠唱を始める。
「──────【───】『アイス・ショット』!!!」
そして、特に珍しい氷属性の魔法、『アイス・ショット』を発動した。
とてつもない威力、速度の魔法がハウセに襲い掛かる。
だが──
「【闇よ、この空間に宿れ】『ダーク・フィールド』」
その瞬間、このスタジアムの人間の視界が、一瞬黒く塗りつぶされる。
「──僕の勝ちですね」
そして、会場の多くの視界が晴れたころには、既に勝敗は決していたのだ。
-第8話 完-
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