第29話:戦いの後
第29話です。第二章の最終話になります。
戦闘開始から、数時間が過ぎた。
俺は今、魔術学校の教員寮のベッドに横たわっている。
「──流石に……疲れた……な」
色々な意味で疲れた。
本当に、疲れた。
寮に着いたから、ずっと戻していたので無理はないか。
「…………」
俺はあの後、急いでレメディへと帰還した。
幸いなことに、俺が魔物を見逃していた、なんてことはなかった。
俺が無事レメディに戻ると、歓声が上がった。
門の方から歓声は上がっていたのだが、俺に直接お礼を言ってくれる人もいた。
俺はあくまで異世界の英雄の役目を果たしただけなので、そこまでお礼を言われると少し複雑な気分にはなったのだが。
ただ、逃げてくれと言ったはずなのに、何故か警備の人間以外も多く混ざっていた。腑に落ちない。
そして、俺が門の前で一通り何か言われた後、1人の女性がこちらへ来た。
彼女の名前は『エレナ』と言うらしい。
なんでも、最上位のSランク冒険者なんだとか。
彼女は、俺の側まで来ると、何故か急に謝罪した。
なんでも俺のことを恐ろしい人間じゃないかと疑ってしまった、と。
俺としては、急にここまでの力を与えられた子供がいたら危険じゃないかと思うのは当然だと思うので、謝罪はいらないと言った。
あと、何故か「また会いたい」と言われた。
とりあえず、怪しい人ではなさそうなのでレメディの魔術学校にしばらくいる、とだけ言っておいた。
「──さてと……そろそろか?」
ピロン
「──どうも、夜遅くに失礼致します」
そんな声が、夜の寮に響いた。
「──で、俺はどうすれば良いんだ?」
俺は、通信魔法で話しかけてきた王女様に、1番重要なことを尋ねる。
「──あっ、いえ、特にこれから何をしてもらうということはありません。そこはヨルカワ様の好きなようにやっていただいて結構です。」
王女様は、ハキハキとした声で答える。
「──今日、こうやって連絡を取ったのは、これから大々的に『異世界の英雄』が現れたことを発表することを、伝えるためですから」
*
平が戦った少し後。
「───っ、報告です!!王女様、例の異世界の英雄が、魔物の大群を退けたとのことです!!!」
王城の一室に、騎士と思われる男が駆け込み、朗報を伝える。
「「──おお!?」」
「──例のものはやったのか!!」
「──これで計画も問題なく進むな!!」
そして、一室は一気に歓喜に包まれた。
「───皆さん、落ち着いて下さい。これで、大々的に発表することができますね」
そんな中、王女は平然と言う。
だが、内心は周りと同様に歓喜に満ちていた。
その横で、王女に使える大臣もまた、笑みを浮かべる。
(──これで、我が国の地位は確固たるものとなる。一つの都市を救った『異世界の英雄』を、全て保有しているのだから)
そして、その歓喜の中には、黒い感情が混ざっていたのだ。
───後日。
王女は、ハント王国の城の最上部で通信魔法師の横にして高々に発表した。
「皆様、お聞きください。この度────」
それにより、この世界に誕生した『異世界の英雄』のことが、全人類に知らされることになったのだ。
(──今のところ計画は順調ね。……でも、唯一の懸念は、あれを解除した者が見つかっていないことぐらいかしら……)
*
─────平が戦った次の日。
場所:????
「……さてとっ、じゃあ聞かせてくれるかな?セルフィシュ君?」
青い服に身を包んだ女性が、昨日平と戦ったセルフィシュと大きな机を中心として向き合っていた。
「…………」
「あれ、どうしたのかな?」
「……いや、何でもない」
「ふーーん、まぁ、いいや。あっ、そうそう。セルフィシュ君魔人王になったでしょ!ねぇ、何をやったの?人間を殺しまくった?」
青い服を着た女性──魔人王の1人『アトラ=タイラント』は、実に興味深そうに話す。
「……何故か分からないが、例の人間と戦っている最中に、『上位進化』を使うことに成功した」
セルフィシュは、淡々と答える。
それを聞いて、アトラは更に興味を持ったのか、「へー!!」と食いつく。
「──だが、それで尚、やつには全く敵わなかった。俺には、自分以外が使う俺を対象とする魔法を無力化できる固有スキル【魔法除去】もあるのにだ」
「──ふむふむ、そうだね。私の【ワープ】は厳密に言うと魔法じゃなくて固有スキルだから効果あるからね〜。私だったら魔法以外の攻撃手段なんてたくさんあるから大丈夫だけど、魔法しか使えないとセルフィシュ君には全く太刀打ちできないもん。……で、その人間は固有スキルを持っていたの?」
アトラは、セルフィシュに問いかける。
「…………いや、分からない」
「おやおや?」
「……少なくとも、あいつが固有スキルを使って攻撃する所は見なかった。持ってるのかもしれないが、俺は身体強化された物理攻撃で負けた」
「へーー!!!面白いね!じゃあ彼は、余程強力な身体強化が使えるんだ!」
「………まぁ、そう言うことになる」
「いやー、これは戦ってみたくなってきたなぁ〜!!今度私の方から行っちゃおうかな〜!!」
セルフィシュの話を聞いて、アトラは目を輝かせながら、そう言った。
*
ハント王国王女の発表により、平の功績は当然クラスメートへも伝わっていた。
「──ちっ、先を越されたか。……まぁ、良い。俺の活躍の場はそんな魔物の群れの前などではないのだからな」
高野英斗は、自身が派遣された『サネア帝国』の帝都(沿岸部に存在する)にある、最も豪華なホテルの一室で、優雅に飲み物を飲んでいた。
「……ひひひ、今に見てろよぉ」
英斗は、腰に刺した短剣を手に取り、ニヤニヤと笑い出した。
*
「おー……平頑張ったんだな……、あー……だるい……寝たい……」
一方、平の親友である中田翔は、自身が派遣された『ケース帝国』の帝都(同じく沿岸部)にて、沿岸部の見回りを行なっているのだが、眠くてそれどころではなくなっていたのだった。
「……俺の寝る時間を奪いやがって……絶対許さん……」
翔は、そう呟いた。
*
「──そうですか。夜川君がやってくれたんですね!……これは僕ももっと頑張らなければなりませんね!」
学級委員長の秀坂優一は、くじ引きの結果ハント王国の警備に当たっていた。
ハント王国の警備には、彼の他に数名のランクS未満の異世界の英雄、騎士団などが就いている。
(……また先を越されたか。だが、俺は俺でやることをやってやるさ……悪いがこの前までの俺とは違うからな)
クラスの学級委員長は、密かに闘志を燃やしていたのだった。
―第29話 完―
お読みいただきありがとうございます。
これにて第二章の本編は終了です。
投稿まで時間が経ってしまい、申し訳ありませんでした。
次回は登場人物紹介です。




