第19話:ある冒険者の記録
第19話です。短め。
「──はぁ……。本当、この町もああならなきゃ良いけど……」
ある女冒険者が呟く。
彼女は、このレメディの近くの海岸にて魔物の襲来を監視していた。
「でも……いつそうなってもおかしくないのよね…………ねぇ、どう思う?……勝てると思う?」
「……正直、難しいだろうな。相手の数にもよるだろうが、この町には高ランク冒険者はいるとは言ってもみんながみんな高ランクってわけじゃない。それこそ、最高ランクの冒険者は俺とお前だけなんだからな」
もう1人、監視にあたっていた冒険者の男が、そう答える。
「……」
「────だが、話によると強力な助っ人がハント王国から派遣されたと聞く。あの王国が派遣してくるくらいだ、きっとかなりの実力者なんだろう」
「ああ……そう言えば……。……でも、それって頼りになるのかしらね……。少し強いくらいじゃ、むしろ足手まといになるだけよ……」
女冒険者は、半分諦めにも近いような表情だった。
だが、男の次の発言により、その表情は一変した。
「確かにな。────だが、これは俺が極秘に聞いた情報なんだが、その助っ人ってのは──
『異世界の英雄』らしい」
*
──レメディへの魔物襲来が平に伝えられることになる日。
その日は、住民にとっては何と言うこともない普通の日だった。
例のごとく2人の冒険者は、レメディ近くの海岸にて、魔物の襲来を監視していた。
「──おい、なんか、あっちに何か見えねぇか?」
「ん?……あ、本当だ、何かしらあれ?」
2人の視線の先には、レスト王国に接する海があった。
「俺には黒い点みたいのが集まってるように見えるんだが……」
「……そうね、たまたまそう見えるだけなら別に良いんだけど。もし、あの辺で何かが起きてるなら、注意しなくてはダメね。……念のためギルドから魔道具を持ってきてて良かったわ」
そう言って女冒険者は、持っていたカバンから双眼鏡のようなものを取り出した。
「……よしっ」
女冒険者は、それを目に当てる。
すると、一気に視界が狭まり、代わりに遠くが鮮明に見えるようになる。
言ってしまえば、魔法で動く双眼鏡とでも言った所だろう。ちなみに、とても高価な物のため冒険者ギルドに各1個程度しか置いていない。
「えーと、あの黒い点の所は────────ん?」
何かを見つけたのか、女冒険者は双眼鏡(仮)を凝視した。
「──どうかしたのか?」
それを見て、男冒険者は尋ねる。
「…………」
だが、女冒険者は答えない。
「おい、どうしたって…………っ!?おいっ、大丈夫か!?」
その時。
女冒険者が突然、膝の力が抜けたように崩れ落ちた。
「……あれは……だ……め……」
「──どうした!?何が見えたんだ!?」
女冒険者の動揺の仕方に驚いた男冒険者は、双眼鏡を女冒険者から受け取ると、黒い点がある場所を見た。
「────は?」
そこにあったのは────無数の化物たちが、円のようなものから湧き出ている様子だった。
そして、その化物たちは────こちらへと向かってきていた。
*
「──なん……だと……?」
レメディの冒険者ギルド支部長は、頭を抱えていた。距離からして1日もかからずに、無数の化物たちがこのレメディへとやってくると言う。
「……やむを得ないな……『警報』を発令せよ!!!」
ギルド支部長は、住民全員の避難を決定する。このような場合、ギルドは国の許可を取らずに警報を出すことができるのである。
「──願わくば……こちらへ来ないことを……」
そう言っているが、後から確認に向かった者の話では、その化物たちは着々とこちらへ向かって来ているという。
「──『彼』なら大丈夫ですよ、支部長。何も心配することはない」
スーツを着た女が、支部長へ語りかける。
「おそらく今日、世界が、『異世界の英雄』の存在を見ることになりますよ」
―第19話 完―
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