第18話:魔の襲来
遅くなってすみません。第18話です。
朝早く。
生徒がまだ来ていない授業前。
「──よし。これで良いな」
俺は、早くもあと2週間まで迫った『魔術戦大会』の準備に勤しんでいた。
準備も当日の仕事も、盛りだくさんである。
ちなみに、俺は一応非常勤の講師という扱いのため手伝わなくても良いらしいのだが、何もしないというのはあまり気分が良くないので、こうして仕事を受け持っていた。
「……あいつら、勝てるだろうか」
ふと、そんなことを呟く。
俺が来たことによって生徒たちは本来の力を使えるようになったとは言え、俺が来なければ『賭け』をさせられることもなかったわけで、なんとも言えない気持ちだった。
「──まぁ、あいつらなら大丈夫だろう」
『賢者』としての能力を生かし、とことん指導したことにより、2年Cクラスの生徒の魔法力は俺が来る前とは比べ物にならないほどに上がっていた。
「さてと、これで今日の仕事は終わりだな」
俺は、作業を終えて、教室へと向かった。
***
そして、2時間目。
俺は、『魔術実戦』の授業中だった。
「──では、これからいつも通り1対1で試合をします。ルールは基本『魔術戦』と同じですが、相手に一般的な治癒魔法で直さないようなケガを与えることは禁止です」
『魔術戦大会』があと2週間まで迫ったため、俺は試合形式での授業を始めていた。
「では最初は、シンシアさんとイディアさん、お願いします」
「「はい!」」
俺が来て色々とやってから、Cクラスの生徒は大きく成長した。
だがその中でも、特に実力を伸ばした生徒が数人いる。
その中の2人が、シンシアとイディアだ。
「では、始め!」
俺の合図で、試合が開始される。
「──っ!」
まず先手を取ったのは、イディアだ。
イディアの魔法属性は『水』である。
「【水神の檻】」
イディアは、水属性の上位魔法でシンシアの退路を塞ごうとする。
だが、シンシアは慌てない。
「させません!【炎の壁】!」
シンシアは、炎の壁によってイディアの水魔法を妨害する。シンシアの魔法属性は『火』である。
そして、次の魔法を展開しようとする。
ここで、気づいた人もいると思うが、2人ともあの長ったらしい『詠唱』をしていないのだ。
俺が積極的に勧めた結果、クラスの中の数人は簡単な魔法であれば『無詠唱』で魔法を使えるようになっていたのである。難しい魔法でも、構築速度は飛躍的に上昇している。
Aクラスの生徒の現在の実力がどの程度か分からない以上、Aクラスとの直接対決に向けて少しでも勝率を上げるために魔法力を上げておかなければならない。
基本的に強くて困ることはあまりないからな。
俺がいるうちにできるだけ強くしておかなければ。
(──さて、勝負はどちらが勝つか)
現在、シンシアとイディアの実力は同じくらいだ。
どちらが勝つかは分からない。
「「はっ!!」」
(おお……)
俺は2人の激闘を見つめるのだった。
***
2時間目の授業も終盤。
ちなみに、先ほどのシンシア対イディアの試合は、とても良い勝負だったがギリギリのところでシンシアが勝利した。
さて、これで一応全員の対戦が終わった訳だが……俺はそろそろ、『クラス代表』を決めなければならない。
まぁ、とは言えある程度はもう決まっているのだが。
「──さて、では代表を発表しますね」
俺がそう言うと、生徒全員の視線が一気に集まった。
「代表は…………ん?」
だがその時、あれが鳴った。
そう、緊急地震速報のような、あの『通信魔法』だ。
『緊急通信です!レスト王国北の海岸に、魔物の大群が発生!!ヨルカワ様は直ちに現場へ急行して下さい!!!』
(……何?)
魔物の大群が発生だと?
……よりにもよってこのタイミングか。
『なお、この通信魔法の直後に、この都市レメディ全域に警報を鳴らし、全ての人間に避難してもらうことになります。よろしくお願いします』
そう言ったあと、通信魔法は途切れた。
『レスト王国北の海岸に魔物の大群が発生──────皆さん。避難をお願いします』
そして、その代わりに大音量の警報が、レメディに響いた。
***
俺はまず、生徒たちの避難を信用できそうな先生に任せた後、レスト王国北の海岸に向かうべく、まず魔術学校の隣にある冒険者ギルドへと向かった。
王女様から、『もし緊急事態が起きた場合、まず魔術学校の隣にある冒険者ギルドへ行く』ように言われている。
なお、今は道に迷っている場合ではないので、人にしっかりと聞きながら向かった。
──数分後。
俺は冒険者ギルド『レメディ支部』へと到着していた。
どうやら俺の顔はギルドの支部長には知らされていたようで、割とすんなり受け入れられた。
「────というように、レメディ支部の中〜高ランク冒険者35名が、あんたの援護をする形になる。ハント王国の王女より、『ヨルカワ様の邪魔をしないようにするだけで良い』と言われている」
「分かった」
と言うことは、俺は俺で好きなように動いて良いってことだろう。
「──なら、俺は好きに動かせてもらう。冒険者の人たちには住民の避難の誘導や、もし街に入っていった魔物がいた場合の討伐を頼みたい」
「……分かった。……だが、本当に大丈夫なのか?これだけ言われている以上、あんたの実力を疑うことはしないが……相手は……」
俺の言葉に、ギルドの支部長は不安気に呟く。
それもそうだろう。俺は確かに異世界の英雄だが、だれも俺の戦闘を見たことはない。
と言うか、そもそも俺だって本当に勝てるのかは分からない。
だが──
正直、俺が勝てないのであれば他の異世界の英雄を連れてくるしか、方法はない。
それは、俺がこの世界に来てからの経験で簡単に分かってしまう。
「──大丈夫だ。何としてでも、勝つ」
俺は、俺の使命を果たす。
***
レスト王国の都市『レメディ』。
その町は城壁のようなもので覆われている。
そしてその北には、『海』が広がっている──
「さてと……そろそろか」
俺は冒険者に協力してもらい、無事に町の北の城壁までたどり着いていた。
門は今閉ざされており、俺が向かうときだけ開けるようだ。
(……しかしこれだと、相手がどのくらいの数、強さなのか見えないな。なるべく早く出なくては)
「──門を開けてください」
「……っ……、お気をつけて」
俺の合図で、門番は門を開けた。
「────────────」
ゆっくりと開けられた門。
その先に待っていたのは──
「──なるほど……」
海岸を埋め尽くすほどの、化物たちだった。
―第18話 完―
お読みいただきありがとうございます。
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