第5話:殺せない賢者、冒険者ギルドに登録する。
第5話です。
(アニメやゲームで見た通りだ)
冒険者ギルドの中は、1階が酒場になっており、2階に受付や依頼の掲示板などがある。
……いや、ここまで見た通りだとそれはそれでどうかとは思うのだが。
もしかして、どっちかが真似たんだろうか。
「やっと着きました……」
「とっとと登録しちまおうぜ」
「三河君に同意します」
「じゃあ早速登録しよう」
*
「冒険者ギルドへようこそ!初めて見る顔ですね。冒険者ギルドへの登録ですか?」
そう言ったのは、受付のお姉さんだ。
どうやら冒険者全員の顔を覚えているようだ。
「はい、登録をお願いします。登録には登録料がかかるんですよね?」
「はい。ただ、登録するには試験を行い、合格した場合のみ登録料を払っていただきます。不合格なら払わなくて大丈夫ですよ。このハント王国王都冒険者ギルドでの登録試験は難しいことで有名ですからね〜。大体の新人さんは1回目の試験で落ちて2回目か3回目の試験で受かることになります。とは言え、4回目になっても受からない人もいるにはいますが」
「……ちょっと待て。試験があるって本当なのか?」
驚いて敬語が使えなくなった。
王女様は登録料を払えば良いと言っていたはずなんだが。王女様が勘違いしていたのか?
……いや、よく考えたら簡単な"作業"があると言っていたな。ただ王女様は、簡単すぎるから特に気にしなくて良いと言っていたはずなんだが。
「はい。……もしかして知らなかったんですか?」
「あっ、いや。簡単な作業だと聞かされていたんですが」
「あはは、まさか。もちろん場所によって難易度の差はありますがどの支部も簡単な作業ってことはないですよ……。特にこの王都ギルドの試験が難しいってだけではあります。このギルドで試験を受けて1回で受かった人は現在Sランク冒険者の"風魔神"や"炎皇"、現Aランク以上のエリートたちだけなんです。ですから1回で受かるなんて思わない方が良いと思いますよ。皆さん何回もチャレンジして受かるわけですから。ファイトです!!」
「……分かりました。それで、試験の内容はどのようなものなのですか?」
受付嬢は、俺たちに試験の内容を説明してくれた。
それによると、パーティとして登録する場合にはパーティのリーダーが合格すればOKだという。
そして、肝心の試験内容だが、どうやら試験官との1代1だそうだ。ちなみに試験内容はギルドごとに異なるようで、この王都ギルドの合格率が低いのは"Aランク冒険者である試験官と1対1で戦って認められたら合格"というかなり困難な試験だからである。
「俺たちはパーティとしての登録だから、俺が戦えば良いのか……。でも……、勝たなくても良いとはいえ、レベル1の俺が相手になるのか?王女様はレベル上げより先に冒険者ギルドに登録した方が良いと言っていたが……。どうするべきだと思う?」
俺は班員に意見を求めた。
「とりあえず受けてみたらどうでしょうか」
「良いんじゃね。まあ不合格ならレベル上げしてからまか来ようぜ。別に不合格でも誰も責めねーよ」
「私は2人の意見に賛成です」
よし、とりあえず受けるのは無料らしいしとりあえず受けてみるか。
「試験お願いします」
「はいっ!わかりました。では、あちらの部屋にどうぞ」
***
俺は受付嬢に誘導され、小部屋へ入った。
「──おっ、来たか。俺がこの王都ギルドの試験官だ。」
「よろしくお願いします。」
「まあまあそう堅くなるなって。俺はAランク冒険者の"ガラン"だ。あっ、そうそう。冒険者は基本的に敬語なんて使わねーから、逆に浮くぜ?そもそも学がねーから正しい敬語なんて使えるやつ見たことねーけどな!早速だが対戦用の部屋があるから着いてきてくれ」
「分かりま……、分かった。」
*
(ここが対戦用の部屋か。)
ガランの案内で連れてこられたのは、高校の体育館並の広さを持つ部屋だった。
闘うためか部屋には何もない。一応観戦できるように上にスペースが設けられているが。
「ん?お前らいつからそこにいたんだ?」
観戦スペースに班員が全員座っていた。
「受付の人に案内してもらったんです!頑張ってくださいねーー」
「応援してんぞーー」
「別に不合格でも構いませんから!」
みんな思い思いに応援してくれている。
多分。
(……よし、頑張るか)
「準備は良いか?」
正直に言えば、全然準備はできていない。俺は結局まだ一度も魔法を使ったことがないのだ。
とは言え、ステータスボードを見ているので今自分が打てる最高の魔法が何なのかは分かる。だから、とりあえずその魔法を打ってみるしかない。
だが、もし相手が死んでしまったら?と考えてしまうので、レベル1のやつの魔法なんてたかが知れているだろうが念のため相手が死なないような魔法を使おう。
実際の威力はともかく致死性のありそうな魔法を使うことができるからな。
「ああ、よろしく頼む」
「じゃあ、いくぞ。審判は俺とお前らの仲間たちだ。始め!」
試合が始まった。
ガランさんはまだ動いていない。
どうやら、最初の一手は新人に譲るようだ。
ステータスオープン。
────────────────
<使用可能な通常魔法(一部)>
・ダークボール/魔力消費:5/攻撃
・ダーク/魔力消費:5/状態異常
・スーパーダーク/魔力消費:50/状態異常
・ハイパーダーク/魔力消費:500/状態異常
・スリープ/魔力消費:10/状態異常
・ダークスラッシュ/魔力消費:10/攻撃
────────────────
よし、これで良いだろう。
「『スーパーダーク』」
『ダーク』や『スーパーダーク』は相手の視界を防ぐ技だと書いてある。
俺はまず手始めに、相手の視界を塞ぐことにした。
相手はAランク冒険者だ。『ダーク』だと効かないかもしれないから念のため『スーパーダーク』にしておいた。
「おっ、お!?」
突然視界を遮られて混乱しているようだ。
よし。効いているらしい。
「『ダークスラッシュ』」
ダークスラッシュは黒い刃を飛ばす技だ。とは言っても、ステータスボードによれば致死性はないらしい。相手を吹き飛ばすようだ。
「ぐはっ!?」
結果、黒い刃がもろに直撃してガランさんは部屋の端まで飛ばされた。
「……う……」
動かない。
(勝ったのか?)
「う……?」
ゆっくりと彼は目を開ける。
「大丈夫か?」
「あ、ああ……?」
大丈夫そうだ。
「試験ってこれで大丈夫なのか?」
「……ああ、これで終わりだ。ただ……」
「……?」
「……お前やるじゃねぇか!受付の話ではレベル1だって書いてあったのに。俺は内心試験をなめているのかと思っていたんだが。本当にレベル1なのか?」
「あ、ああ……間違いなくレベル1だが。」
「それであの威力かよ……。とりあえず試験は文句なしの合格だ。これでお前らも立派な冒険者だな」
(良かった……受かったのか。……最初は難しい試験だと言っていたからどうなる事かと思ったが、王女様の言った通りだった。受付のお姉さんの話は本気じゃない者を払い落とすためのもので、試験自体はさほど難しくなかったんだな。……まぁ、さすがに作業というのは言いすぎだが)
とにかく受かって良かった。
「すごいですね。やりましたね」
「おー、やったじゃねーか!」
「これでレベルを上げてからまた来る手間が省けましたね」
みんな祝福してくれているみたいだ。
「5分後くらいに受付に行ってくれ。ギルドのカードやらなんやらを貰えるはずだ。じゃあな、期待の新人」
ガランさんは良い人だな。
新人のやる気を引き出してくれようとしている。
「よし、じゃあとりあえず受付の方に戻るか」
***
〜ギルドの奥にて〜
「えっ、新人の方がガランさんを倒したんですか?」
「おう、俺も信じられないんだがな……。しかもそいつレベル1なんだよ。ステータスボードを見せてるから間違いねぇ」
「だとしたら……、すごいのが入って来たんじゃ……」
「ああ、間違いなくあいつは化け物だな。……何か隠してるのか?」
ー第5話 完ー
お読みいただきありがとうございます。
全く話の方向性が違いますが、良ければもう一つの作品もどうぞ。