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不殺の賢者〜高校生は不殺主義で異世界を生きる〜  作者: 水坂鍵
第2章:魔の襲来と魔術学校
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第15話:いじめin異世界 case.2 没落貴族①

 遅くなって申し訳ありません。

 第15話です。




 昼。

 3時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り、生徒たちは思い思いに昼食をとる。

 そして、それは先生も同じであった。



「……さて、食堂に行くか」


 俺は、チャイムが鳴ったのを確認すると、食堂へと向かった。


「…………」


 実は、教員は別に自分の授業が空いているときならいつでも食堂に行って良いのだが、俺はあえてチャイムが鳴るまで待っていた。


 理由は単純だ。


「セイレみたいに、いじめられてる奴がいないとも限らないからな……」


 生徒と同じときに行かなければ、問題が起こっていても知ることができないからだ。



「……さてと」


 俺は食堂で素早く昼食うどんを注文すると、そのまま教員用の席へと向かった。

 そしてもちろん、生徒たちのことが1番よく見える席に座った。


(……まだ食堂に大して来てないからな。正直、自分の生徒の様子はよく分からない。これからはちゃんと見ておかないとな)


 またいじめられでもしたら嫌だしな。


「……しかし、このうどんなかなか美味しいな」




    ***




 俺がしばらくうどんを堪能していると、何やら食堂内が騒がしくなってきた。

 俺は嫌な予感がして、辺りを見回す。


「……あれは……『イディア・エンブル』さんと……誰だ?」


 俺の視線の先には、2年Cクラスの『イディア・エンブル』と、見たことのない女子生徒が何やら言い合いをしていた。



「……何の御用でございますか?『メーレス・ア・レスト』()()殿()()?」


 2年Cクラスの生徒である女子生徒、イディアは、ややイラついた様子で、目の前にいる王女メーレスに話しかけた。



「いえー、実はですねぇ、今日は『良いニュース』があったものですからー」

 対する王女メーレスは、全く動じることなく、ニヤニヤとしながら言葉を返す。

 また、その後ろには、数人の女子生徒の姿もあった。

 そして、メーレスはイディアにさらに近づくと、耳元で()()()()()


「……どういうこと!!?」


 それを聞いて、イディアはメーレスのことを睨みつけた。


「そのままの意味ですよー。私としても非常に残念なのですが……、イディアさん、貴方には退学してもらいます。そして、退学してからは、分かっていますねぇ?」


 そして、誰にも聞こえないくらいの声で「貴方は邪魔なんですよ」と付け足した。


 その瞬間、イディアの手がメーレスの首元を掴む。


「……っ、ふざけんなよ!!」


 イディアは、激昂する。


「おやおやぁ?イディアさんは何にそんなに怒っているのかしら?ここは食堂よー?」


 対するメーレスは、何でもないかのごとく振る舞い続ける。

 そんな中、イディアはメーレスを掴んでいる方とは逆の手で杖を取り出すと、魔法発動の準備を始めた。


「少し痛い目にあった方が良いんじゃないですか?王女殿下!──『ウォータースラッシュ』!!」


 そして放たれようとしていたイディアの魔法は、以前の比ではなかった。

 数日前まで2年Cクラスの落ちこぼれとして扱われてきた生徒が放つ魔法とは思えないほどに。


「……あらあらー」


 だが──


「……っ!?ぐばっ!?」


 魔法によって吹き飛ばされたのは、メーレスではなく、イディアだった。

 メーレスは、イディアが魔法を発動するより前に魔法を発動したのだ。


「貴方が私に勝てるとでも思って?」


 メーレスは、落ち着いた様子でイディアを見下げた。




     ***




「……っ!?ぐばっ!?」


(くっ……!)


 俺が慌てて向かっていったときには、すでにイディアは吹き飛ばされていた。

 ここは食堂であり、生徒たちがいる。俺が魔法を使って本気で駆け抜けることなどできない。


「……う」

 イディアが気絶する。


「イディアさん、大丈夫ですか?今治療します」


 俺は、一刻も早くイディアを治療するべく、回復魔法を発動する。

 幸い、俺がステータスを解放した甲斐があってか(イディアも一部のステータスに鍵がかかっていた)、威力の割には怪我は軽かった。


「『フルヒール』」


 俺がそう唱えると、イディアの体が少し明るく光り、怪我は治っていた。


「……」


(何とかなって良かったが……、これは一体どういう状況なんだ…….?)


 情報が少なすぎて全く分からない。

 何故イディアが王女様?なんかとこんなことになるんだ。


「……先生……?」


 そんなことを考えているうちに、イディアが目を覚ました。


「イディアさん、大丈夫ですか?」

「……はい」


 体の傷はもうない。

 大丈夫そうなので俺は取り敢えずイディアをちゃんと横にならせた。


「……さて」


 俺は、イディアを吹っ飛ばした王女?の方を向く。


「何でこんなことになったのか、説明してもらえますか?」


 俺がそう尋ねると、王女はニコニコしながら答えた。


「あらぁ?貴方は確か新任の先生でしたかしら?初めまして、私はこの王国の第一王女メーレス・ア・レストですわ。貴方は、確か、あの愚弟(ズィガ)を倒してくださった方でしたわねぇ。あの子、本当に()()だったので助かりましたわー?」


「……そうですか」


「ああ、そうそう!貴方、私の()()に加わりなさい。ズィガを倒した貴方なら歓迎いたしますわよー?とっとと、その女を捨てて、こちらにいらっしゃいな?」


 そう言って、王女は手を差し伸べてくる。

 だが当然、俺はその手を拒否した。


「……他人を傷つけるような人の()()()()気はありません。さっきの魔法、わざと吹き飛ばすほどの威力にしましたね?イディアさんの攻撃を避け、彼女を無力化するだけただったら、貴女ならもっと上手くやれたはずです」


 俺がそう言うと、一瞬王女の顔から笑みが消えた。


「ああ、そう。……この騒ぎについては申し訳ないと思っておりますわよ?……でもぉ、悪いのは私ではなく先に手を出したあのイディアさんですからぁ、私はこれで失礼いたしますねー」


「……」


 そう言い残し、王女は食堂を後にしていった。




     ***




 放課後。

 俺は、イディアとの個人面談を実施していた。

 その中でイディアは、自分自身の境遇について語ってくれた。


「……私はもともと、エンブル伯爵家の1人娘でした」



 ―第15話 完―

 お読みいただきありがとうございます。


 すみません。思っていたよりも時間がかかってしまいました。


 これからしばらくは週何回かの更新になると思いますので、よろしくお願いします。

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