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不殺の賢者〜高校生は不殺主義で異世界を生きる〜  作者: 水坂鍵
第2章:魔の襲来と魔術学校
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第13話:バグと陰謀③

 第13話です。




「……神様に伝えるって……一体どうすれば……?……あっ!」


 シンシアだけではない。

 クラスにいる全員が首をかしげていた。

 そんな中、シンシアがひらめいたようだ。


「『詠唱』ですか?」


 そして、シンシアは答えを導き出した。


「はい。その通りです。ただ、正確に言えば『詠唱』からの一連の動作──魔法構築にはなるのですが。皆さんはちなみに、何故『詠唱』をしているのか知っていましたか?」

「…………」


 生徒が黙り込む。

 どうやら、知らなかったようだ。


「先程言った通り、それぞれの属性の神に魔法発動を伝えるためです。これをすることで飛躍的に『神』に届きやすくなるようです。無詠唱が難しいのはそのためでしょう」

「えっ、でも……」


 ここで、生徒の1人が手を上げた。

 その生徒は、俺にとって衝撃的な発言をすることになる。


「で、でも、小さなときから、親や大人の人は『詠唱』は『教会』の教皇様の力を借りさせてもらうことを許可してもらうためにしてるって言ってましたよ?」

「……?」


 『教会』?


「それはどういうことですか?」

「えっ?どうもこうも……、この世界で最も神に近いと言われている教皇様の力を借りなければ魔法は発動できないんじゃないんですか?」


 ……なるほど。

 確かに、この世界には絶大な権力を持つ『教会』とその『教皇』がいるとは書いてあったが……。


「魔法発動に『教皇』は必要ないはずなんですが……、みんなそう教えられてきたのですか?」


 俺がそう言うと、みんな首を縦に振った。

 俺の知っている限りでは、魔法発動に必要なのはあくまで『神』であって、宗教のトップではない。


 しかし、現にクラス全員が首を縦に振った。

 もしかして、この世界の人間は俺たち『異世界の英雄』とは違うのか?


 いや、仮にその方法で魔法を発動できるとしよう。

 その場合、そういう方法もあると言うだけであって別に俺と同じ方法でもできるのではないか?


「……じゃあ、取り敢えずやってみましょう」




「じゃあまずはシンシアさんから。あの的に向かって何か魔法を発動してください。まずはいつも通り、『教皇様』?に伝えて下さい」

「はい」


 俺が合図を出すと、シンシアは魔法を発動するための詠唱を開始する。

 

「【炎よ、この手に宿れ。神よ、我に力を与えよ。我、ここに魔法発動を宣言する】」


「おお……」


 その時点で、すでにその魔法の威力は前回の比ではなかった。ステータスの鍵を開けたことによって、魔力を解放されたからだ。

 それにより、この学校でやっていくのに申し分ない魔法が発動することが容易に想像できた。


 しかし──


「『ファイアー』!!……えっ!?」


 発動するはずだった強力な魔法は、()()()()()()()()()()()()的へと着弾した


 これは……まさか。


「魔法が弱体化された?」


 そんなことがありえるのか?


「……シンシアさん、もう一度同じものをお願いします」

「……は、はいっ!!【炎よ、この手に宿れ。神よ、我に力を与えよ。我、ここに魔法発動を宣言する】『ファイアー』!!」


 しかし、やはりシンシアのファイアーは最初大きかったのだが、途中から急激に小さくなってしまった。

 一応、たまたま魔法の発動をミスしただけの可能性も考えたのだが……。


(本当に妨害されているのか?)


 俺は賢者となり、魔法の発動などの先人の知識をとても良く理解できるようになった。

 だから、俺の魔法についての判断は比較的正しいと思う。


「……シンシアさん、では次は『神』に伝えて下さい」

「……は、はいっ!【炎よ、この手に宿れ。神よ、我に力を与えよ。我、ここに魔法発動を宣言する】」


 俺の合図で、シンシアは再び魔法を発動する。


「『ファイアー』!!」

「……おお!?」


 誰かが声を漏らした。

 シンシアが放った魔法は、先程とは比べものにならないような威力だったのである。


(……)

 つまり、()()()()ことなのか。

 俺は王国図書館で知識を、賢者として魔法の理解を得た訳だが、この世界の常識には残念ながらまだまだ疎い。『教皇様』とやらも、そういう人間がいるという知識しか俺にはなかった。


 だが、それでも、何となくは想像することができた。


「『教皇』か、厄介かもしれないな……」




     ***




 その後。

 俺は、取り敢えずクラス全員に対して、シンシアと同じことをさせた。


 その結果、全員『神』に伝えたときの方が圧倒的に魔法の威力が上がった。

 これならば、もう落ちこぼれなんて言われることはないだろう、と思わせる。


 ……とは言え、もし仮に他のクラスの生徒もこのことを知らなかったのであれば、この力の差は一時的なものになるだろう。

 自身の能力を最大限生かすことができるように、俺はとにかく『正確な構築』を生徒に教えなければならない。この子達が、将来下に見られてしまわないように。


「まぁ、一応は良かったな」


 正直、かなりプレッシャーを感じていたのだが、ひとまずは成功してほっとした。

 生徒たちも喜んでいる。

 俺は珍しくへとへとになりながら、寮へと向かって行った。




 ー第13話 完ー

 お読みいただきありがとうございます。



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