第11話:バグと陰謀①
遅れて大変申し訳ありませんでした。
8時25分。
俺は、教室の前でスタンバイしていた。
「……さて、あと5分か」
(そろそろ入っておくべきか……。いや……でもクラスメート同士の交流を邪魔したくはない)
「……ん?」
俺が悩んでいると、廊下の端からドタバタと音が聞こえてきた。
「遅刻するぅ……!!」
そんな声が廊下に響く。
しばらくすると、俺の目の前までその男子生徒はやってきていた。
「……あっ!!……お、おは、よ゛う゛っござい゛……ます……。」
そして、盛大に転んだ。
「……大丈夫ですか!?」
あまりに良い転びっぷりだったために、俺は少し動揺する。
「……あはは……大丈夫です……先生……」
「……そうですか……?……無理しないで下さいね、アーロンさん」
男子生徒の名前は確か『アーロン・ウォーラー』だ。
明らかに顔からダイブした割には確かに平気そうだが……。
「あ。はい、先生」
「……分かりました。そろそろ授業が始まるので、教室に……」
『キーンコーンカーンコーン』
と、ここでチャイムが鳴った。
俺は早く教室に入るように促そうとした。
──しかし……
「……」
彼はなぜか、絶望したような表情で立ち尽くしていたのだ。
俺は良く分からなかったので、取り敢えずそのまま『アーロン』を教室へと連行した。
「……!?」
「…………」
そして、俺が教室に入ると何故か、皆揃って困惑に似た表情を浮かべていた。
「……どうかしましたか?」
「あ!あ、あの……先生……」
彼はようやく口を開いた。
「……その……僕は……退学……ですか?」
そして、意味不明なことを口にする。
「………?」
俺は、しばらく彼の言ったことを理解するために頭を働かせた。
そして、ようやく理解した。
(ああ、そういうことか)
確か、校長が言うには、2年Cクラスの生徒──つまり学年で下から数えられるような生徒は、少しのことでも退学になる恐れがあるくらいギリギリなんだとか。
だから、『遅刻』一回ですらきっと退学になる恐れがあるレベルなんだろう。
(……でもそれって結局は教師の裁量次第だよな……。なら俺は、わざわざ……)
「……私が呼び止めたせいで遅れただけです。皆さん気にしないように。『遅刻』はつけません」
***
さて。
俺は昨日、自分自身に『宿題』を出した訳だが。
「……正直、かなり難しかったな」
思っていた以上の仕事量であったため、昨日はほぼ徹夜だった。
しかし、その甲斐あってか、かなり良い『答え』を導き出すことができたと思う。
「さて、今日皆さんに話しておきたいことが一つあります。心して聞いてください。最重要なので」
今は1時間目の『魔術実戦』である。
俺は、全員が聴いているのを確認した上で話しはじめた。
「皆さんがいわゆる落ちこぼれになってしまっている理由は、実は簡単なことです」
俺は、宣言した。
当然生徒たちは、かなり食いつく。
「それは主に2つです。『魔法の構成に問題がある』か、『ステータスがおかしくなっている』かです」
「……どういう意味ですか?」
俺の言葉にシンシアが反応した。
「簡単に言ってしまえば、異常なことになっている、などということです」
「は、はぁ……?」
まぁ、当たり前か。言葉だとなかなか上手く説明できない。
クラスの誰もまだ分かっていない様子だ。
「私は魔法について、かなり正確に知ることができます。ですから、これから皆さんの魔法の欠陥について、テストの結果をもとに、個別に話したいと思っています。では早速始めたいと思います。では1番のシンシアさんから、私と一緒に話をしましょう」
***
俺はシンシアを違う教室に移動させた。
「さて、『シンシア・ハード』さん。貴方は──」
俺は、シンシアに自身の置かれている状況をまず説明した。
まず根本的な話としてシンシアは、『算術』に関してはそれなりの成績を修めているのだが、『魔術』の成績が壊滅的だ。
本来なら1年生でやるような内容の魔術すらできていなかった。
だが、それには理由があった。
俺は『賢者』であるためなのか、非常に魔法について深く理解ができるようになっていた。
そんな『異世界の英雄』である俺が、シンシアの魔法を見たときに思ったこと、それは彼女の能力値に異常が発生しているということだ。
実は俺は実力テストが終わった後、全員のステータスボードを見せてもらっていた(他人のステータスボードを勝手に見ることはできないが、本人が見せようとすると他人にも見えるようになる。やはり奇妙な存在だ)。
その中で、何人かステータスそのものの内容がおかしい生徒がいたのである。
その生徒の一人がシンシアだ。
「……『ロック』ですか?」
「はい。貴方のステータスの一部に原因不明の『ロック』がかかっています」
そう、シンシアを含めた数人は、ステータスに『ロック』のようなものがかかっていたのだ。
それによって、魔法を使う上で弊害が生まれてしまうことになった。
しかも、原因は不明。何故そのようなことになっているのかも分からない。
「……どういうことですか?」
「簡単に言えば、貴方が魔法を使う上で必要なスキル、能力値に自分で解除することのできない鍵がかかっているということです」
シンシアのステータスはこうだ。
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名前:シンシア・ハード
職業:魔術師/ランクC
レベル:12
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まず見るべきは、その職業だろう。
この世界において、職業にはランクが存在するのだが、『異世界の英雄』の職業と、『もともとこの世界にいる人間』では、そもそも職業が異なっている。
『異世界の英雄』の職業は、ランクSからランクBまでが多く、その職業には、この世界の人間たちはなることができない。
そして、『もともとこの世界にいる人間』の職業は、ランクEから、ランクCまでが多く、ランクBの人間はほぼいない。
これは、俺がこの世界を知るために勉強した結果得た知識だ。
正直言って、『異世界の英雄』と『もともとこの世界にいる人間』との差が酷すぎることに違和感を覚えていたが、今それは重要ではない。
話を戻すと、シンシアはランクCの『魔術師』であり、この世界にもともと住んでいる人間としては、かなり高水準な職業である。
この時点で、他のクラスの生徒と大きく離されていることなど理論上はありえない。
そして、次に見るべきはレベルだ。
現在のシンシアのレベルは12。
これは、この学校にいる生徒として『普通』のレベルである。
この世界において、成人(15歳)の平均レベルは5である。
これは、経験値が普通戦うことなとで手に入るためだ。戦わない人は基本、一生戦うことはないということが多く、戦う人はそれなりにレベルを上げてくる。
成長によっても多少はレベルが上がるのだが、とは言えそれは戦うことに比べれば大したことのないものなのだ。
つまり、何が言いたいのかと言えば、シンシアのステータス自体はこの学校の魔術師として『普通』のレベルなのである。
なのにもかかわらず、シンシアは『落ちこぼれ』となってしまっていた。それは何故か。それこそが、先に述べたものだったのだ。
俺は、シンシアのステータスを、『賢者』の特性を生かし、シンシア自身すら見ることのできないステータスの限界まで開ききった。
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状態異常〉〉〉〉ロック・封印『魔力低下60%』『使用可能スキル減少70%』
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そして、出てきたのがこれだった。
つまり、
「シンシアさん、つまり貴方は、本来の魔力6割、スキル7割を使えていないんです」
それこそが、全ての原因だったのだろう。
ー第11話 完ー
お読みいただきありがとうございます。
ようやく、再開することができました。
書きだめをしたので、しばらくは止まることはないはず……
そう言えば、今回から書き方を少し変えてみました。何か意見などあればよろしくお願いします。




