番外編6:似ている
番外編です。
ちょっとファンタジー要素が増えます。
これは、ある一日の出来事だ。
「……はぁ、休みにしたものの、どうしたものか」
魔人との戦いがひと段落した後の休日。
俺は何かないかと王都へ飛び出したのだが、特にやることと言ったやることがなかった。
(……そういえば、まだこの世界について知らないことが多かったな)
俺はふと、そんなことを思った。
「……この世界についてもっと知るためにはどうすればいいだろうか?」
俺はしばらく考えた。
しかし、なかなか良い案が浮かばない。
「……どうしたものか」
そんなときだった。
「あっ、あのときのお兄さん!!」
「……ん?」
誰だ?
「あの時はありがとうございました!」
「……ああ、スラム街のお店の」
俺の前にいたのは、俺がこの世界に来てすぐ、道に迷った結果たどり着いたスラム街の喫茶店の店主だった。
「偶然ですね」
「……?」
(あれ?なんか反応がおかしいな)
俺は、辺りを見回した。
(……あっ)
俺の目の前には、例のスラム街の喫茶店があったのだった。
(どうやら、またやらかしたらしいな)
俺はスラム街とは違う方向に歩いていたはずだったのだがな……。
「……すみません。また方向音痴が発動してしまったようで」
***
「この世界について知りたい、ですか?」
「ええ。何か良い方法はないでしょうか?」
「そうですね……」
俺は、この店主には自分の立場をある程度話している。信用できると思ったからだ。
「単にこの世界について詳しく知りたいのであれば、『王国図書館』を利用するのはいかがでしょうか?」
店主は、そう提案した。
「『王国図書館』?そんな場所があるんですか?」
「ええ。この『人間の領域』における最も優れた図書館と聞きます」
「店主さんは行ったことは?」
俺がそう聞くと、店主は何とも言えないような顔をした。
「……実はですね、前に実際にこの国の獣人差別を目にしたと思うのですが、それは施設の利用に関しても同じなんですよ」
「……なるほど、申し訳ないです」
「いえ……悪いのは貴方ではありません。ですから謝る必要なんてありませんよ。……結局のところ、この国では獣人は奴隷階級。これはどうすることもできません……」
「……」
店主は獣人だ。
もともとは『獣人の領域』に住んでいたらしいが、一族もろとも奴隷として連れていかれたらしい。
(……差別って、どうしたらなくなるんだろうな)
いっそのこと、俺が覇王にでもなれば良いのか?
***
俺は店主に言われた通り、『王国図書館』へとやってきていた。
「……」
俺は、とりあえず図書館の中をうろうろしていた。
非常によくできた作りの施設だ。
細部まで作りこまれている。
壁に施された装飾は、さながら美術館にある芸術品のようだった。
そんな中。
「……ん?」
俺は、図書館の中の『あるもの』に目を奪われていた。
「……これは……?」
俺の前にあったのは、俺が昔、いや、本当に昔に、やったゲームに出てきた彫像だったのだ。
変わった色使い、そして形の彫像。
記憶違いではないはずだ。
「……は?」
俺は何故か、突然思い出した。
今まで全く意識していなかったのに。
「……似ている」
そう、この世界は──あのゲームに似ている。
***
俺がそのゲームについて思い出すのに、さほど時間はかからなかった。
そのゲーム、確か名前は『神世界12ー攻略ー』だったはずだ。単純なタイトルだが、そんなゲームはあまりないので思い出すことができた。
──だが、ゲーム自体をどこで手に入れたのか思い出せない。
(……この彫像で思い出したが……良く考えてみれば、あのゲームとこの世界は共通点が多い気がする)
例えば、この王国図書館だ。
昔やったゲームなので記憶が曖昧で、最初は良く分からなかったが、この図書館も見たことがあった。
そのゲームでは確か、この図書館が行動の中心になっていて、そこから旅立つような形だったはずだ(なお、図書館に情報が集まりすぎていて、調べようとするとほとんどのことが分かってしまい、そこについてはあまり面白くなかった記憶はある)。
また、それ以上の細かいことは思い出せないが、何というか、『雰囲気』がそっくりなのだ。
これに根拠はないが、何故かそう思わずにはいられない。
これはなんというか、『デジャヴ』のような何か。何かのきっかけで、突然それを見たことがあるように思えるあの感じそっくりなのだ。
(あのゲームの世界とこの世界は、実はどちらかがモデルなのではないか?)
そんなことまで考えてしまう。
(……いや、でも待て。本当にそうか?ただ、たまたま似ているだけではないのか?それとも、俺の記憶違いか?)
「……」
(……いやそもそも、仮にどちらかがモデルだとしたら、一体誰があのゲームを作ったんだ?)
「俺の勘違いか……」
現実的に考えて、そんなことはあり得ないだろう。
(……だが、かなり似ているのは確かだ。これからに生かしていけるかもしれない、くらいに思っておくか……)
ただのデジャヴだとは思うが、自分にしては珍しく、少し動揺してしまった。
俺は、若干の心のもやを振り払いつつ、この世界について知るため本を手に取った。
ー番外編6 完ー
お読みいただきありがとうございます。
本章では、構成の都合上どうしても番外編が多くなってしまっています。お許しください。
次回は登場人物紹介です。その後すぐに本編に戻ります。




