第7話:魔術師『ズィガ・ア・レスト』
第7話です。
食堂の一件後、30分経った午後2時。
本来なら俺は、2年Cクラスで授業をしているはずだったのだが……
「……どうしてこうなるんだか」
俺は今、王国一だという魔術師と対峙していた。
*
「……えっ、授業中止ですか?」
俺は、校長室に呼び出されていた。
「はい、午後の授業は全て中止となり、その時間全校生徒が貴方とズィガ・ア・レストの試合を観戦する時間になります」
しかし、校長室にいるのは校長先生ではなく、初日に会った理事会の女性だ。
「はあ……」
俺は思わずため息を漏らす。
「……あのですね、ため息をつきたいのはこっちなんですよ……なんで、勤務初日から王族に目を付けられるんですか……」
「それはすみません」
そんなことがあって、俺は今学校のスタジアムの上にいるわけだが……。
「さあ……、始めるとするかぁ」
ズィガが試合の合図を今か今かと待っている。
正直、本当に30分後にスタートするとは思わなかった。
(用意が早すぎるだろ……。これが王族の力なんだろうか?)
俺がどうでも良いことを考えていると、審判がそろそろ始まる雰囲気を醸し出してきたので、俺も戦闘態勢をとる。
(本当のことを言えば使いたくはないが……)
俺は杖を取り出した。
相手がどれほどの強さなのか分からないため、下手に油断するよりは良いだろう。
……とはいえ、うっかり殺してしまった、なんてことが絶対にないようにしなければならない。
魔法の威力には十分注意しなければ。
「ズィガ様、ヨルカワ様、準備はよろしいでしょうか?」
俺が真剣に考えていると、審判が尋ねてきたので、「できてます」と答えた。
ズィガも同じように答えたことによって、ついに試合が始まろうとしていた。
*
「始め!!!!!!」
「!」
審判の大声で、試合が始まる。
「ははっ、『力』の差というものを教えてやろうじゃないかぁ!!」
先手はズィガ。
平が動くよりも先に、魔法の発動準備を開始した。
少し補足しておくと、この『魔術戦』では、原則として『魔法』のみ攻撃の手段として良いことになっている。
ただし、身体強化魔法を自身にかけて、そのまま攻撃することはルール上問題ない。
「少し遊んでやるよぉ!!『フレア』!!」
ズィガは平に対し、まずは小手調べとばかりに『フレア』という炎系の基本魔法を発動した。
『フレア』は簡単に言えば炎を生み出す魔法なのだが、流石はレスト王国一の魔術師というべきか、基本魔法の威力が他の生徒とは段違いである。
しかし、ズィガはあえて平が避けられるような打ち方をした。
「……」
平は、取り敢えず『フレア』の軌道上から離れるため動く。
「ふっ、ならばこれでどうだい!!『ハイ・フレア』!!」
「……」
──10分後。
「さてぇ、残念ながらぁ、そろそろ遊びも終わりだが、何か言い残しておくことはあるかぁ?」
ズィガが放った魔法を延々と俺が避け続ける時間が終わると、ズィガがそう言った。
「……随分と含みのある言い方だな。まるで俺が死ぬみたいじゃないか」
俺がそう言うと、ズィガは「ふふふっ、ははっ!!」と嗤いだした。
「知っているか?『魔術戦』における『不慮の事故』は、犯罪にはならないんだぜ?」
「……なるほど?」
俺は構えを取る。
「……ふふふっ、はははっ」
ズィガの目の前に魔法陣が形成された。
「見せてやろう。この俺の究極の魔法を!!!『帝王の業火』!!!」
そして、ズィガは究極の魔法とやらを、俺に向ける。
(……これは、どうやら本気で殺しにかかっているな)
その魔法の威力は、これまで放たれてきた魔法とは段違いの威力だった。
「……もしこの魔法が耐えられたなら、お前は見逃してやろう!!!!」
耐えられるものなら耐えてみろ、みたいな勢いでズィガは魔法を放った。
「………」
その瞬間、ズドンッ、という効果音が、スタジアムに鳴り響いた。
「ひひぇひひひっ!!ははははっ!!」
そしえ、スタジアムには、ズィガの嗤い声だけが残る。
生徒、教員の誰もが、ズィガの勝利を、そして新人講師の死を、確信しただろう。
だが、それは、相手が本当にただの新人講師だった場合の話である。
スタジアムに立ち昇っていた炎や煙が晴れた。
「……はっ?」
ズィガが、初めてそんな間抜けな声をだした。
「さて、そろそろ終わらせよう」
ズィガの前に立っていたのは、死体になった人間でも、ましては死にかけた人間でもなかった。
ズィガの前に立っていたのは、五体満足どころかそもそも無傷の人間だったのだ。
「……っ!?」
ズィガは、かつて経験したことのないような恐怖に襲われる。
「『束縛』」
「なっ!?」
そして、気づくとズィガは身動きが取れなくなっていた。
「……これでチェックメイトだな」
そして平はズィガへと近づくと、自身の杖を強めにズィガの喉元にあてた。
「……っ!……」
『殺しを嫌う者』が発動していないことを考えると、完全な無力化にはなっていないようだったが、ズィガは動くことができなかった。
「……っ!、そ、そこまで!!勝者、ヨルカワ様!!!!!!!!!!」
そして、審判は試合の終わりを告げたのだった。
ー第7話 完ー
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