第4話: 『ハント王国国立魔術学校レスト王国校』
第4話です。
「……ねぇ、聞いた?今日からうちのクラスに新しい先生来るんだって」
「えっ、ほんと?イケメン高身長の若い男子で!」
「いや、まだ男か女かも分からないんだけど……」
*
一昨日。
校長の話が終わった後、俺は『魔術学校理事会』に所属する女に連れられ、俺が何の教科ならば教員として働けるかを試すための試験を行った。
その結果、俺は
・『異世界学』
・『魔術実戦』
・『算術』
の計3教科を教えることになったわけだが……
「……流石に少し緊張するな」
『異世界学』はまだ始まらないからひとまず置いておくとして、他の2教科への緊張が高まる。
(数学……いや、この世界では『算術』か。一応俺はこの世界で教員が達するべきレベルには達していたらしいが……この世界は少し数学教育の段階が遅れているのだろうか?……)
俺はその場に立ち止まった。
(いや……俺の元いた世界みたいに、誰でも学問を学べるわけではないのかもしれないな。調べた所によれば、この世界には小学校、中学校、高校のように分かれているわけではないらしいからな)
この世界は元いた世界……いや、元いた国というべきか。それよりも貧富の差などが大きいのは間違いない。
誰でも簡単に教育を受けられるわけではないのだ。
「よし……頑張るか!」
*
「……今回入ってきたあの非常勤講師大丈夫なのか?聞くところによればまだ17歳だと聞いたが。しかも、教員としてもただの素人なのだろう?」
『ハント王国国立魔術学校レスト王国校』校長、”レイト・タイド”は、校長室にて、魔術学校の理事会員である女と会話していた。
「成人の年齢には達しているのですから、規則上特に問題はありません。それに素人、とおっしゃられましたが、彼は適性検査でほぼ満点を取っていました。適性検査で合格していれば、教員として働くことが認められます」
女は言う。
「はぁ……そういう問題ではないわい。わが校は伝統ある『レスト王国校』なのだ。『魔術学校』の中でも二番目に古く、各界へとエリートを放ってきた。当然、その生徒は皆難関の試験を突破した特別優秀な者。そして、だからこそ教員もエリート揃いというわけだ」
しかし、レイトは反論する。
「その中で17歳の少年──しかも教員経験すらない者を採用するなど……理事会は何を考えておるのだ!?はっきり言わせてもらうが、これは生徒のためにも、ましてはその非常勤講師のためにもならんぞ!!」
(……はぁ、いっそのこと全て話してしまいたい……)
女は、レイトが苛立っている前で、どこか諦めに似た感情に包まれていた。
(……上からの命令で、ヨルカワオサムが異世界の英雄──それも最高ランクのSランクの英雄だということは伏せておかなければならない。そのことを言えればどんなに楽なことか……)
現在、平が異世界の英雄であるということは理事会のメンバー以外知らない。
ハント王国からの命令により、各地へと飛んだ異世界の英雄の素性を明かすことは禁止されているのだ。
よって、異世界の英雄ならともかく、ろくに素性も知れないような少年少女たちを教員として働けるようにするということは、かなりの苦難であった。
(はぁ…………)
思わずため息が出そうになる女なのだった。
*
──時刻は8時25分。
俺は、教室へと入る心の準備を行なっていた。
どうやら俺は、この2年Cクラスの臨時の担任という形で授業をするらしい。
どうも元いた担任の先生が急遽辞めることになったらしく、ちょうど良いということで臨時の担任を任された。
(……普通、初心者に担任を任せるか?……いくら俺が異世界の英雄と呼ばれているからと言って……)
校長の話によれば、2年Cクラスは成績不審者や素行不良者が集まってるとか。
(……成績不審者ごときは素人の教師で十分だろ、みたいなことではないと良いのだが……)
流石にそんなことはないと願いたい。
「……時間だな」
始業は8時30分だ。
「……」
2年Cクラスと書かれたドアに手をかける。
「よし」
そして俺は、ドアを開けた。
ー第4話 完ー
お読みいただきありがとうございます。
毎回短くてすみません。できるだけ長く書きたいのは山々なんですが……、私はそこまで書くのが早くないので……。
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