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第24話:殺せない賢者、新メンバーとの初依頼をこなす⑦

 第24話です。火曜日の分です。



「……ぐぁぁっ!!!!」


 ベノムは必死に『束縛』に抵抗する。



 本来ならば、『束縛』は低レベルの魔物しか捕まえることはできない。



──

 魔法名:束縛レベル2


 効果:低ランクの魔物の身動きを取れなくさせる。レベル1よりも成功率が上がる。


 魔力消費:10


 属性:光/状態異常

──



 しかし、今(おさむ)の手には杖が握られている。

 この杖によって『束縛』の効果が高まり、ベノムを捕らえることに成功したのだ。



「さて……お前は俺の仲間にずいぶんと惨いことをしてくれたみたいだが、何か言うことはあるか?」


 (おさむ)は、そう問いかけた。

 だが、ベノムはまだ必死に『束縛』に抗おうとしている。


「……はぁ、少し頭冷やしたらどうだ?そもそもなんでこんな所に魔人がいるんだ?どうして俺の仲間を襲った?」


 (おさむ)の問いかけに対して、ベノムは答えない。


「……何か答えたらどうなんだ?」


 そう言いながら、(おさむ)は『束縛』によって動けないベノムに軽い魔法を放つ。


「ぐはっあ!?」

「おっと」


 『束縛』によって身動きが取れないベノムが倒れそうになったのを、(おさむ)が受け止めた。


(『束縛』だけだとバランスを崩して倒れるな。鎖で補強しておこう)


 (おさむ)は、『世界鎖』を発動した。



──

【魔法名】世界鎖


【効果】別世界から伸びる鎖によって、相手を拘束する。


【魔力消費】1000


【属性】闇/攻撃

──



 『世界鎖』によってベノムを拘束したその瞬間、(おさむ)の固有スキルが発動した。



──

 報告


 『殺しを嫌う者』が発動可能です。


 発動しますか?

──



(ああ)



──

 報告


 レベルが上がりました!


 1291→1321

──



「……で、とっとと俺の質問に答えたらどうなんだ?」


(拷問のようだが、こいつから情報を吐き出さなければならない。また愛花(あいか)たちがこんな目に会うことがないように……。それに、俺の仲間が受けた分のダメージはしっかりと返しておこうじゃないか)


 そう思い、(おさむ)は魔法を再び軽めの魔法をベノムに放つ。



「……ぐぁっ!?」


(愛花たちはほぼ瀕死になるまで追い詰められていた。愛花たち3人分の総合ダメージは約──というところか。ステータスの値はチェックしてあったしな。)


「ぐぼぇ!?」


 何発か攻撃したところで、ベノムは胃の中のものを吐き出した。


(あれだけ腹の方に攻撃したらそうなるか)


 (おさむ)は、一旦攻撃をやめた。

 そして、ベノムを見る。


「……うえっ!!ごえ゛っ!?おぼっ!……ごんのぉ!!ザコがぁ……うぉえっ!?絶対……許さない………!!!……」


 ベノムは、全然反省してないようだった。


「……そうか。お前が許そうが許すまいが俺の知ったことじゃないが……お前、そんな態度で良いのか?まだ終わらないぞ?」


 『束縛』と『世界鎖』によって、立った状態のまま動けないベノムは、吐き気を何とかしようと奮闘していた。


「いつまでも吐かれてると困るから()()楽にしてやる。『フル・ヒール』」


 ベノムの顔色が急激に良くなっていく。


「へ?」


 ベノムは意味が分からず間抜けな声をだした。


「俺はな、元の世界にいたとき割と『勉強家』だったんだ。普通なら必要ないような知識もいつか役に立つかもしれないから割と良く覚えていた」


「お前……何が言いたいんだ!!僕のことを回復させて何をするつもりだ!!」


「いや、別に簡単なことだ。俺はな、一応人体の仕組みについてそれなりに勉強しておいた。どこが人体の弱点だとか、あと骨や筋肉の位置もな。……お前がいつまでもそれじゃあ困る」


 (おさむ)がそう言うと、ベノムは顔を青ざめる。


「……や、やめろっ!!!!」

「なら、俺になんでこんなことをしたか説明してくれないか?」

「……ひっ……」


 平が睨むとベノムは失禁した。


「汚いな……」

 平はまた、魔法を打ち始める。


「ぐはっ……ひっ……」

「まだあと──ダメージ分くらい残ってるから、頑張れ」

「嫌……やめ……ぐっ……おえ……」

「『フルヒール』」

「はぁっ……はぁっ……あ゛っ!?」

「もう少しだ。『フルヒール』」




          ***




 結局、あの魔人は怯えるばかりで何も聞くことができなかった。


「これくらいやればこいつの意識も変わるだろうか……。取り敢えず起きたらまた話を聞くか。さて、ミルスさんたちの方は……」


 俺は、ミルスさんたちを少し離れたところまで遠ざけていた。


「流石に子供たちにあれを見せるのはな……」


 自分でもやってて良い気分はしなかった。

 俺がミルスさんのところまで行くと、ミルスさんが出迎えてくれた。


「オサム殿!!無事でしたか!!」

「ああ、まぁ何とかなった。あの魔人は今気絶してる」

「そうですか!良かったぁー……、あっ、3人はあそこにいます」


 子供たちがいるところの奥に、愛花、龍太郎、委員長の3人がゆったりと座っていた。


「ルックくんとリーフちゃんが3人を介抱してくれたんです」


 そうだったのか……!

 あれ?でもちょっとまて


「……ん?愛花たちが飲んでるあれって何だ?」


 3人は、何故かコップでお茶?のような物を飲んでいたのだ。


「俺たちが持ってきたのって水筒に入れた水だけだよな?っていうかコップなんて持ってきた記憶ないんだが……」 


 この世界には、元の世界ほど高性能ではないが水筒のような物が存在し、俺たちはそれに宿で無料で提供されている水を入れてきたはずなのだが……


「それなんですが、実はルックくんとリーフちゃんが作ったんです」

「ルックとリーフがか?」

「はい。2人が何かパーティの力になれないか聞いてきたので、昔資料で見たことのある魔法を教えたんです。術師のルックくんは『簡易創造』を、治療師のリーフちゃんは『健康水創造』を覚えることに成功しました」


 なるほど、じゃああのコップはルックが『簡易創造』で作ってお茶みたいなのはリーフが『健康水創造』で作ったってことか。


「普通に凄くないか?」

「そうなんですよ!術師も治療師も"役立たずの職"なんて呼ばれてはいますが、そもそも魔法を覚えていないだけか、目立ってないだけでできることはたくさんあるんですよ!」


 そうか。

 まぁ確かに他の職業の方が見栄えがするというのはあるかもしれないが、こういう能力だって大切だよな。


「後でお礼言わないとな」




           *




 俺は、皆の無事を確認したので魔人が拘束されている場所まで戻った。


「……まだ気絶してるみたいだな」


(……悪いことしたな。目が覚めたら少し優しくしてやるか……)


 そんなことを思っていたまさにその時だった。



 ズドンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!



「……何だ」


 突然天井から何かが降ってきたのだ。



「はっはっはっ、これは実に驚いた」

「……!」


 それは、一言で言えば「人間に似た何か」だった。


 見た目こそ人間と大差ないが、秘めた魔力量が人間の比ではない。それに、目の前にいるそれには頭にツノが生えていた。


「何だ?」

「おっと、これは失礼。私は上位魔人第一席にして破壊の王と呼ばれております"レイク・ディストラクション"と申します」


「魔人……こいつの仲間か」


「ええ。どうも、私の親友であるこのベノムの危機を感じまして、ここに助けにきた次第でございます。……しかし、まさかここまで一方的にやられているとは思いませんでしたが」


(ベノムって言うのかあの魔人……。結局会話にならなかったから知らなかったな)


「お前はどうするんだ?そいつの敵を討つために俺と戦うのか?」


 俺がそう尋ねると、目の前の魔人は笑いながら答えた。


「まさか。私がそんなにバカに見えているんですか?私は勝てない戦いをするほどバカではない。明らかに分が悪い。というか悪すぎる。……ですから!!」


「……っ待て!」


 魔人が動いたので警戒していたが、目の前の魔人はベノム?を抱えると、そのまま空いた天井から脱出した。


「逃げるが勝ちというやつです!」


 そう言い残して。



「……何だったんだ、一体……」


 納得できない結果だったが、皆んなの安全を考えて追うことはなかった。一応、勝利ということで納得した。




          ***




 全ての戦闘を終えて俺たちは冒険者ギルドへと戻ってきていた。



 結局大毒ネズミは2匹しか討伐できなかったのだが、それを担当のミレイアさんに話すと何故かミレイアさんに謝られた。


 どうもミレイアさんが言うには、王都地下下水道には1年前くらいから魔人が住み着くようになったらしい。その後くらいに大毒ネズミの討伐に来た高ランク冒険者を大怪我させたことがきっかけで、冒険者ギルドでは決して手を出してはいけない依頼として放置されていたんだとか。


 今回、手違いでこの依頼を俺たちのパーティに受注させてしまったということでミレイアさん含め冒険者ギルドの偉い人から物凄く謝罪された。


 ミレイアさんが担当を辞任すると言ってきたが、別にわざと受注させた訳ではないみたいなので、辞任の必要はないと皆から言った。


 

 ちなみに、仲間が魔人に襲われたから俺がほぼ倒したということは伏せておいた。

 面倒なことになりそうだし、久しぶりに俺のスキル『感覚強化』がそうするように言ってきたのだ。



 結局俺たちは大毒ネズミ2匹と慰謝料を貰い、冒険者ギルドを後にしたのだった。



 

 ー第24話 完ー

 お読みいただきありがとうございます。


 主人公のレベルが間違っていたので修正しておきました。申し訳ありません。

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