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第23話:殺せない賢者、新メンバーとの初依頼をこなす⑥

 第23話です。





「貴様……一体何をした!?」


 "上位魔人ベノム"は訳がわからずそう尋ねる。


 ──それもその筈、一瞬にして自分の右手がなくなったのだ。



「……答えてやる義理はないな」


(ちっ……!)


 内心舌打ちしながらも、ベノムは冷静に何かの魔道具を使ったのではないかと予測した。


 何故なら、目の前の男からは()()()()()()()()()()()()からだ。

 とても自分の腕を消し飛ばせる実力があるとは思えない。



「まず、お前の相手をする前にやらなければいけないことがあるな」


 ベノムが目の前の男の持っているであろう魔道具を警戒していたところ、突然男がそう言った。


「は?」



 男は倒れた仲間?3人の方へ手を翳す。


「『フル・ヒール』×3」


 男がそう唱えると3人に変化が起きた。


 腹に小さな穴が空いていた立山は、腹の穴が一瞬にして塞がり回復した。

 壁に激突し何箇所か大きな骨折をしていた龍太郎だが、一瞬で元通りになった。

 首を絞められ意識を失った愛花は、苦しそうな表情のまま意識を失ったにも関わらず今や心地良さそうな表情に変わっている。



 ベノムは驚愕した。


(……なっ!?致命傷だったはず……。この男……高位の回復魔法使いなのか?でも……それにしてはやっぱり力を感じない……)


「……」


 驚きを隠せていないベノムとは対照的に、その男──夜川平(よるかわおさむ)は平然と佇んでいた。




            *




 〜夜川平(よるかわおさむ)視点〜


 

 ライトに連れられて目的地に着いたらこの有様だった。


 愛花、龍太郎、委員長、全員瀕死。

 正直あと少し遅かったら3人とも死んでいただろう。

 しかも目の前で子供が締め殺されそうになっているときた。

 もう訳が分からない。



「お前がやったのか?」


 俺は目の前にいる子供?に話しかける。

 子供は答えない。


(答えないということはこいつが犯人なんだろうか?)


 俺の仲間にこんなことをしてくれたのは……。


(落ち着け……、まずは仲間の命が優先だ)


 珍しく感情が表に出そうになっていたが、理性でなんとか食い止める。



「『フル・ヒール』×3」


 俺は3人に『フル・ヒール』を放つ。


 『神の治癒』はやめておいた。前みたいに俺が倒れそうになったらまずいからな。



「ミルスさん、ライト、愛花たちと子供を頼んだ」

「了解だ、オサム殿」

「あ、分かりました!」


 よし、これで大丈夫だな。

 子供たちと3人の安全が確保できた。これで俺は目の前の少年に集中できる。



「で、これは一体どういうことだ?あんたが噂の『魔人』なのか?」


 少年に一番大事なことを質問する。



 すると少年は、


「……あっ、ああ。そうさ僕こそがこの王都地下下水道の支配者にして上位魔人である"ベノム=ディラーション"様だ。ひれ伏せ、魔道具頼りのザコが!」


「……?」


 魔道具頼り?

 何の話だ?


「とぼけんじゃねぇー!!さっき僕の腕を消し飛ばしてくれたが、それは魔道具のおかげだってことぐらい分かってんだよ!何故ならお前のオーラからは僕の腕を消し飛ばせるほどの実力があるとは思えないからな!お前ごとき魔道具さえなければどうということもない!!」


 そう言いながら、少年は腕を再生しだした。



 オーラか……。

 そういえば、王国騎士団でも弱者扱いされたな。どうやら俺は他人から弱く見られるらしい。


 もしかしてこれもステータス偽装の効果だろうか?それとも、所詮この力は貰い物の力だということなのだろうか?

 今はどうでも良いことだが。



「お前がどれだけ凄い魔人なのかは知らないが、俺の仲間を瀕死にしてくれたんだ。お前には反省してもらう。あと、俺は別に魔道具なんて使ってないぞ」

「はっ、ザコが調子に乗ってんじゃねえよ!!くらいやがれっ『幻想弾』!!」


 少年の周りに何やら透明な球のような物が現れた。


(何だあれ?)


「このベノム様を侮ったこと、あの世で後悔するが良い!!!」


 少年がそう言った瞬間、突如として(おさむ)の目の前に透明な球が現れた。

 その球は、そのまま(おさむ)の体にぶつかり、爆発した。


「……」

 爆風と霧のような物が(おさむ)とその周りを包んでいく。


「はっ、僕の前で偉そうにしてるからそうなるんだ!!大した実力もないくせに偉そうにしてんじゃねぇーー!!!!!」


 数秒後。

 霧が晴れた。


 ベノムは爆発によってズタボロになっている男を想像する。

 

「………………はへっ?」


 だがら、ベノムは気の抜けた声を出した。

 彼の前にいたのは、爆発によってズタボロになった男ではなかったのだ。


「……もう勝った気でいたのか。言っておくが、俺はお前が思っているよりは強いぞ」


 男は無傷だった。

 ベノムは理解が追いつかない。


(……はっ!?ちょっと待て、どういうことだ!?僕は確かに『幻想弾』を放ったはずっ、これは僕の『幻想空間』では無敵の魔法のはずだ!?魔道具か!?こいつ一体どんな高性能な魔道具を持っているんだ!?)


 まだ魔道具のおかげだと思っているベノムだが、それ以外は正しい。


 上位魔人"ベノム・ディラーション"の魔法属性は"幻想"。これは非常にレアな属性であり、戦闘能力において最強の属性の一つである。


 さらに、ベノムは幻想魔法に非常に相性の良い固有スキル『幻想空間』を持っており、これによってベノムは魔人としても上位の存在として君臨することができているのだ。


 『幻想空間』は、簡単に言えば自分から半径50メートル以内の空間の中ではベノムが最強となる能力である。例えば、ベノムに攻撃をしても自動的にベノムの防御力が上回り、大したダメージにならなくなる。この空間にいるベノムは言わば幻想であり、自分の理想の能力を得ることができるのだ。


 ただし、例外はもちろん存在する。例えば立山の『完全凍結(パーフェクトフリーズ)』のように、相手に元から固定されたダメージを与える技であれば有効だったりする。とは言え、固定ダメージを与えることのできる技などほぼなく、それこそ固有魔法クラスでないと存在しない。


 しかも、『幻想空間』でのベノムの能力値は最大になっているため『完全凍結(パーフェクトフリーズ)』でもベノムのHP.を削りきることができず、回復されてしまった。


 結局のところ、ベノムに『幻想空間』を使わせてしまった時点でほとんどの相手の敗北は決定しているのだ。


 『幻想空間』を使う前ならば彼に勝てる者は存在する。しかし、彼にこの技を使わせてなお勝利できる者は"上位魔人"のさらに上の存在である"魔人王"くらいのもので、実際のところ魔人社会においてベノムは上から10番に入るほどの実力なのだ。

 

 

「ありえない……ありえないっ!!!僕の力が通用しなかった相手なんて魔人でも本当に上位の方々だけなんだぞ!?……やつの魔道具が一体どんな物なのかは知らないが……それをどうにかしなければ……」


 ベノムがいろいろとぶつぶつ言っている中、(おさむ)はと言うと…… 半分呆れていた。


(こいつ話が通じないタイプだな……)


「お前、今すぐ俺の仲間に真摯に謝罪するなら少なくとも俺は許してやる。でも、これ以上こんなことを続けるなら容赦はしない。死なない程度に教育をしてやる」


 その言葉を聞いて、ベノムは激怒した。


「あ゛っ!?人間みたいな下等動物が偉そうにしてんじゃねぇ!!!!!もう怒った、お前は本気で潰してやる!!!!」


 そう言って、ベノムは魔法の詠唱を開始した。


(謝罪して反省してくれるならやられた本人たちはともかく少なくとも俺は許すんだが。まぁ、そんなことができたら、初めからこんなことにはならないか。これは俺が戦うしかないみたいだな……)


 (おさむ)がそんなことを考えていると、ベノムの詠唱が完了した。


「『幻想世界』!!!!!!!」

「……?」


 ベノムが魔法名を唱えた瞬間、世界が一変した。


「ははっ、どうだ。これこそ僕の最大の奥義。これでいくら魔道具を使おうがお前の負けは決定した!!」

「……どういうことだ?」

「ふんっ、バカなお前に特別に教えてやろう!僕の魔法である『幻想世界』は、固有スキルの『幻想空間』とは次元が違う。『幻想空間』は自分に有利な空間を作るだけだが、『幻想世界』は()()()()()()を作るんだ。この世界は幻の世界で、この世界では僕は無敵の存在。例えどんな強者でも僕に勝つことはできない!!!」


 ベノムは自信満々に説明する。



(……いや、そもそも俺は『幻想空間』すら何のことか知らないんだが……。良く分からないがここはあいつに超有利な幻の世界ってことなのか)



「命ごいをするなら今のうちだよ?まぁ、しても助けてなんかやらないけどねー!!!」

「……そうか。どのみち俺は命ごいなんてしないから安心してくれ」

「……ちっ、じゃあ死ねぇぇぇぇ!!!!!」


 ベノムは、無数の魔法を展開した。


(……流石にこの数はまずいかもしれないな。しかもここは相手のフィールドだ。注意しないと……)


 (おさむ)は、取り敢えず魔法を使って応戦することにした。

 

(こんなときのための魔法……ああ、そういえば、あれがあるじゃないか)


 

 (おさむ)がそう考えているうちに、魔法の展開が終了し、ついに放たれる。


(念のため杖も使うか。今までオーバーキル過ぎて使っていなかったが、ここなら使っても大丈夫だろ。)


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


(ステータス・オープン)



──

 <使用可能魔法>


【魔法名】幻想解除


【属性】光


【魔力消費】5000(1分間あたり)

──



 魔力消費はえげつないが、この魔法を使う。


「『幻想解除』」


 俺がそう唱えると、ベノムが作り出した『幻想世界』が消滅した。そして同時に、ベノムが展開した魔法も消滅した。

 どうやらあの魔法も『幻想』だったようだ。


「……っ!?な、なに!?」

 突然のことにベノムは混乱した。


(……どういうことだ!?僕の『幻想世界』が消された?そんなことがあるはずが……。『幻想解除』だと?そんな魔法をあいつは使えるというのか!?)


「どういうことだ!?お前は魔道具がなければ大したことないはずなのに……そ、そうか!その杖の効果か!!なるほど、ならばその杖を奪い取ってやるまで!!」



(……今度は杖のおかげだと言い出したな。さて、どうしようか?殺すのはなしとして、死なない程度に教育するとは言ったが、具体的に何をすれば言いのだろうか。俺は別に人を更生させる仕事についていたわけではないからな。……俺にできるのはせいぜいあいつを痛めつけて心を折ることぐらいか。……本当にそれが最適解かは置いておいて)


「もう良い、終わらせる。『束縛』。」

「……っ!?何だ、う、動け……ない!!」



 

 ー第23話 完ー

 お読みいただきありがとうございます。


 いよいよ本格的にバトルシーンが増えてきました。私の力不足で下手な文が出来上がってしまっていますが、より良くできるよう、これからも頑張ってまいります。


 最後に、この作品を読んでくれている方々へ感謝を。pv、ブックマーク、ポイントが少しずつ増えていることが、私の支えになっています。

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