第22話:殺せない賢者、新メンバーとの初依頼をこなす⑤
第22話です。
それは、一言で言うならば"子供"だった。
小さな体、高い声、幼い顔。
どれをとっても、まだ小さい子供にしか見えなかった。
しかし──
(……何なの……こいつ……威圧感が尋常じゃない……!)
見た目が子供であるとは思えないほどの存在感、オーラを放っていたのだ。
「どうしたの?せっかく来たんだから遊ぼうよっ!」
「えっ……遊ぶ?」
愛花が聞き返す。
すると、目の前にいる子供?はニヤリと笑うと、こう言った。
「そうっ!遊ぼうよっ!……見たところ、そこの3人っ!君たちとても強いよね?!僕と勝負しよう?」
(勝負……?)
「うーーん、そうだなぁ、じゃあこうしようっ!!『今から3対1で戦って君たちが僕を楽しませられたら、この幻想空間から出してあげちゃうよぉー!!…………でも、君たちが僕を楽しませられなかったら……、君たちの後ろにいる子供たちもろとも皆殺しだっ☆』」
(……は?)
「あっ、そうそう。僕の名前は"ベノム・ディラーション"だよ。上位魔人なんだ。短い間だけどよろしくねっ!!じゃあ、行くよぉー!!バトル……開始っ!!!」
*
突如として始まった勝負。
愛花、立山、龍太郎の3人は、全く意味の分からないままの戦闘を強いられていた。
(くっ……!こいつ強い……!)
戦いが始まって3分。
ようやく状況が飲み込めてきた3人だったが……。
「はぁっ、はあっ……」
前線で戦っている龍太郎、立山はすでに体の限界が近づいていた。
「くそがっ!!!」
龍太郎が上位魔人だという少年を斬りつけようとする。
しかし、最高スピードで放たれた剣技は、あっさりとかわされ、龍太郎はカウンターの拳を正面から受けてしまう。
「ぐほっ!?あ゛っ」
だが、その隙に立山は魔法を少年に向かって放つ。
魔法名は『フリーズボール』。習得難易度が非常に高い技で、氷属性の魔法使いの中でも限られた者しか使うことができない。しかし、立山は異世界の英雄であるというアドバンテージを最大限に生かし、魔法の習得に成功した。
『フリーズボール』を受けた生物は、全身が凍りついていき、数分後には絶命する。
だが──
「嘘でしょ……」
確かにあの少年に当たった。
しかし、フリーズボールは少年に着弾すると、そのまま溶けて消えていってしまったのだ。
「……っ!!」
立山は、自身が今使える最上級の魔法が通用しないと分かった途端、後ろに下がった。
そして、後ろで子供たちと一緒にいるライトに合図を送る。
それを見たライトは、一目散に後ろにかけていった。
「ん?子供が1人逃げたな、助けでも呼ぶつもり?まぁ、良いや。僕を楽しませられるならねぇ!!」
(ライト君……頼みます!!)
立山は、念のためライトに保険をかけておいた。
もし、自分たちの手に負えない敵が現れた場合、ある人物を呼んで欲しいと伝えたのだ。
*
戦いは更に激化した。
激しい運動により体力が限界にきていた龍太郎を、愛花の回復魔法でできる限り回復し、魔力が尽きかけていた立山の魔力と体力を愛花が回復する。
そして回復した2人がまた少年へと向かっていく。
(……正直、このままだと確実に負ける。今は愛花の回復魔法が間に合っているから良いけれど、間に合わなくなったら終わる……)
立山は、持てる力を全て使って少年と応戦する。自分の属性である水・氷の魔法を巧みに操り、攻撃と防御をしている。
龍太郎は、超高性能の剣を手に持ち、もともとあった類まれな身体能力を生かし、少年を追い詰めようとする。
しかし、攻撃は当たらなくはないが全くダメージが入っている様子はない。
(どういうこと?何でここまで攻撃しているのに効いてないの?……何かカラクリがある?)
3人はこれでもAランクの異世界の英雄なのである。攻撃が全く効かないというのは流石におかしい。
(そう言えばさっき……『この幻想空間』と言っていたわよね?それが何か関係している?)
しかし、もしそれが関係しているのだとしても立山にはどうすることもできない。
(どうすれば……?やっぱり夜川君が来るまで持ち堪えるしか……あっ)
立山が戦いながら思考を重ねていたとき、一瞬だけ意識が逸れてしまった。
「……っ」
少年は、瞬時に立山へと攻撃魔法を発射する。
立山は腹のあたりに激しい痛みを感じ、そのまま倒れてしまう。
腹に小さな穴が空いてしまっている。
「……っ!?ぐはっ!?」
立山がやられたことにより、意識がそっちに向いてしまった龍太郎も、少年の近距離魔法によって吹き飛ばされ、壁に激突した。
「未来、龍太郎くんっ!?」
愛花は、一度に2人がやられたことにより、混乱してしまう。
そんな中、少年が言う。
「はぁ〜……、久しぶりに楽しめる相手かと思ったんだけどなぁ……、なんか期待ハズレだったなぁ。まぁ、僕とここまで戦えたことだけでも上出来なのかな?じゃあ、今回は特別に生かしておいてやるか……、子供はね。僕優しいなぁ〜」
そう言って、少年は愛花に立山のときと同じ強力な魔法を放とうとする。このままこの魔法が直撃したら、ヒーラーの愛花はほぼ確実に死ぬだろう。
そうはさせない、と立山は腹に小さな穴を開けられながらも立ち上がる。
「『完全凍結』!!」
『完全凍結』。自身のHP.が残り1割以下のとき、残りの全魔力を消費することで発動できる立山の固有魔法である。
これが使えることは、立山がすでに虫の息だということを意味する。
しかし、その効果は絶大だ。
「……これは少しヤバイかなっ!!」
危険を感じ、魔法を避けようとする少年だが、直後少年の体が凍っていった。
「なっ!?」
少年も驚いている。
避けようとしたはずなのにいつのまにか体が凍っていたからだ。
「この魔法は……相手を直接凍らせる……いくらあんたが避けようと無駄よ……」
一度発動すれば回避不可。まさに異世界の英雄と言わんばかりの能力だ。
「ぐああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あっ!?!?」
そして、少年は凍りついた。
立山は、何とか勝てたと思い安堵する。
しかし……
「あ゛あ゛あ゛あぁぁ……、なんてねっ!!」
(なっ……、うそ……でしょ……?)
「確かに今のは危なかったぁ。ほらっ、少し氷が残ってる。傷もあるよ!でもー、僕は体を凍らせられたくらいじゃ死なないよ!!!」
まさに理不尽。
異世界の英雄3人がかりですら倒すことのできない存在。
立山は絶望する。
そして、魔力を使い果たし限界を迎えたのかその場に倒れたまま動かない。
少年は、愛花の前までくると、その首を掴む。
「僕はさぁ、戦うのも好きなんだけどぉ、弱い者いじめも大好きなんだよね。僕に傷を付けてくれたお前らはやっぱり皆殺しだ!!」
掴んだその首を少しずつ締めていく。
「んっ……ぐっ……!!」
苦しそうにもがく愛花。
「ふふっ、どうした?もうおしまいなのかぁ?」
「……ふっ……ぐ……あ……な……」
愛花は、何かを言おうとしていた。
「ん?なんだい?」
少年は尋ねる。
「……あなたなんかじゃ……あの平さんには勝てない……ですよ……」
そう言い残し、愛花は意識を失った。
「なんだつまらないなぁ……。って言うか、オサム?って誰だよ。……はぁ、もっともがき苦しんでくれれば良かったのに。……じゃあ残りもやっちゃいますか!!」
そう言って、子供の方を見る。
怯える子供たち。
少年は、子供の1人を捕まえると、そのまま首を掴んで殺そうとした。
しかし、そうする前に、子供は開放された。
少年は、意味が分からず手元をみる。
「……は?」
首を掴んでいたはずの右手は、一瞬にして消え去っていたのだ。
「お前、何してるんだ?」
通路の奥から男の声が聞こえてくる。
少年は、未だかつてないほど警戒を強めた。
──男が目の前に現れた。
少年はゴクッと唾を飲む。
──男は倒れた仲間を見た。
「お前がやったのか?」
あまりの威圧感に、少年は答えることができない。
「……そうか。俺は意思疎通できる生き物を殺さない主義なんだ。例え敵であっても、"可能性"を奪うわけにはいかないからな。」
その男──平は言う。
「ただ中には『死んだ方がまし』なんてこともあるみたいだが」
ー第22話 完ー
お読みいただきありがとうございます。
これからは毎週火・木・土更新にしていきたいと思っています。場合によってはズレます。
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