第21話:殺せない賢者、新メンバーとの初依頼をこなす④
遅くなりました。第21話です。
〜Bチーム視点〜
時は愛花たちBチームが平たちAチームと分かれ、別方向へと歩き出した時まで遡る。
「今回は夜川君のサポート抜きでの戦闘になります。気を抜かないで下さい」
委員長こと立山は、2人にそう注意喚起をする。
(今まではほとんど夜川君のサポートありきの戦闘でしたが……、今回は違う。敵の動きを完璧に封じてくれる人はいない。例え相手がそこまで強くない敵であっても油断は禁物……)
前にゴブリンと戦ったときは平のサポートがあるときとないときで討伐数に大きな差が生まれてしまっていた。何せ剣を突き刺すだけで良かったのだから。
「自分たちだけでも敵を倒していけることを証明していかなければ」と立山が思っていたその時、進行方向に何かの気配を感じた。
「……っ、気をつけて。何かいます」
下水道の奥で、何かが動いている。
3人は、いつでも戦えるように杖や剣を構えながら慎重に進んでいった。
王都地下下水道は、進めないほど暗い訳ではないが、決して明るくはないので、近くまで行かないと動いているのが一体何なのかよく分からない。
3人の間に緊張が走る。
「ふぇ?」
しかし、そんな空気になったのも束の間。
愛花が抜けた声を出した。
目の前にいたのは、大毒ネズミや他の魔物ではなかった。
「……っ!何だよおめーらっ!!こっちくんじゃねぇ、しばくぞ!!」
目の前にいたのは、愛花たち3人より少し年下くらいの少年少女たちだった。
*
「……えーーと、何でこんなところに子供が?」
愛花は思っていたことを口をする。
「あ゛っ!?子供だとっ!?俺はもう15歳の成人なんだよ!!」
「あー……、そういえばこの国って15歳で成人なんでしたっけ。あっ、ってことはルックくんたちもあと一年で成人なんだ!!」
愛花は、今更この国の決まりを思い出した。
この国──ハント王国では、15歳になると成人と認められ、飲酒などが可能となる。
(でも、15歳には見えないですね。痩せてるから余計小さく見えます)
少年は、誰の目にも明らかなほど痩せ細っていた。
いや、この少年だけではない。
少年の周りにいる者たちも、皆背が低く、痩せ細っていた。
ただ、気になるのはそこではなく──
「何でこんなところにいるんですか?確かここは関係者以外立入禁止だったはずですけど」
立山が前に出て聞いた。
「あ゛っ!?何で俺が答えなきゃいけねーんだぁ!!とっととうせろ!!」
少年はヤンキーのような口調で話しているが、体が小さく痩せててはっきり言って弱そうなので、全く迫力がない。
「そういうわけにはいきません。もし貴方達が無許可でここに入っているのなら、貴方達を外へ誘導する必要があります」
「何だと、てめぇっ!」
少年は、立山へ殴りかかる。
「はぁ……、暴力は良くないですよっ!」
立山は、殴りかかってきた少年の動きを、いともたやすく封じてみせた。
「ぐぅ〜!!!」
「ちょっと大人しくしておいて下さい。龍太郎くん、頼みました」
「おう」
立山は少年を龍太郎に預けると、他の少年少女たちのもとへ向かう。
「で、何でこんな所にいるのか教えてもらえるかしら?」
*
5分ほど経ち──
「わははは!」
「あいかおねーちゃんすごいーーっ!!」
愛花は見事に子供たちと馴染んでいた。
最初、立山が子供たちに話しかけたのだが、子供たちは怖がって一言も発してはくれなかった。
そこで、愛花が救済に入ったわけだ。
何というか"ほわわん"としている愛花は、ルックたち2人のときと同様に子供たちの心を掴んでいた。
「……何故……、、、」
一方、立山は愛花に完全敗北したような気がしてならならず、立ち尽くしていた。
しかし、いつまでも立っているわけにもいかないので、ようやく動き出した。
「愛花、その子たちは何て?」
「えーーとですね、どうもこの子たちはスラム街に住んでるみたいなんです。ちなみに、さっき殴りかかってきた男の子が15歳で、他の子は9歳から12歳くらいです。スラム街は遊ぶにはいろいろ危険みたいで、遊んでいる最中不審な男に追いかけられて逃げてたらたまたま王都地下下水道の非常口?にたどり着いたとか。そのまま隠れてたみたいです」
愛花がそう言うと、立山は思う。
(スラム街だと子供が遊ぶことにすら危険が生じると言うの?)
立山は、この世界に来てからこの国を観察していた。……愛花とショッピングしているときも、魔物を討伐するときも。
それから得た結論は、『この国は歪んでいる』ということ。
一見すると、この国は豊かで人々も幸せに暮らしているように見える。
しかし、スラム街のような、普段目にしない所に目を向けてみれば、この国の歪みが見えてくる。
幸せと貧困が混在しているのが、不気味なのだ。
(もちろんまだこの世界に来てから数日しか経っていないから、この国、そしてこの世界をまだ全部見たわけではないわ。だからまだ結論を出すには早すぎることは分かってる。私はこれからこの世界をもっと知らなければならない。……それでも、やはりこの国の貧困問題はなんとかすべきよ)
「そう……、その子たちも悪気があるわけではないみたいね。……でも、ここにいるのは危険だから避難させましょう」
「そうですね。でかいネズミもいますし」
「というわけだから、私たちが外まで案内するわ。なんなら家まで送り届けるし、安心して」
「そうですよ。安心してください。この私がいるんですから!!」
「あ……、そうね。」
「ちょっと!なんですかその反応!」
*
子供たちは、殴りかかってきた勇気ある少年を入れると8人いた。
最年長は例の少年で、15歳。名前は"ライト"というらしい。他の子供たちの遊びの付き添いで一緒にいたんだとか。
ちなみに、さっきこちらを威嚇してきたのは追いかけてきた男の仲間かと思ったからみたいだ。彼なりに子供たちを守ろうとしたんだろう。
他の子供たち7人は、9歳が3人、10歳が1人、11歳が2人、12歳が1人だ。
「じゃあ、ここから出ましょう。出口はあっちです」
「はい。お前ら行くぞ!」
最初は殴りかかってきた彼も今は落ち着いている。
ちなみに、さっきまでの態度は舐められないようにするためのようで、普通に丁寧な言葉も使えるらしい。
*
──歩き始めてから30分ほど経った頃。
愛花と立山が異変に気付いた。
「……おかしい。一向に出口に近づいてない。愛花……、やっぱり変よね?」
「……未来もそう思いますか?実は私もそう思ってました。」
そう。
子供たちがいた場所は、出口からそこまで遠くはなかったはずだった。
……しかし、平たちと別れた場所を過ぎると、途端に出口が遠ざかったのだ。
いや、遠ざかったというより一向に出口に近づいていない、と言った方がいいだろう。
平たちと別れた場所から出口までは一本道だ。道に迷うことは絶対になく、しかも出口まで大した距離ではない。
実際、出口は明かりがあるのでここからでも見えている。
しかし、一向に近くに行くことができない。
「……愛花、龍太郎くん、念のため戦闘準備をお願い」
「はい……」
「おう」
龍太郎も気付いていたらしい。
誰かが唾を飲み込んだ。
3人の間に緊張が走る。
──その時だった
「やあっ、こんにちは!」
空から声が聞こえてきたのだ。
「……っ!?」
いつも以上に警戒していた。
しかし、それに気づくことができなかった。
ー第21話 完ー
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