第16話:殺せない賢者、紹介する。
第16話です。
今回は登場人物紹介ではなく本編です。お待たせしました(待っていた人がいるのかはさておき)。
俺たちは、待ち合わせ場所である宿の入り口へと来ていた。あの後、スラム街の例の店で少し休憩してから宿へと戻ってきたのだ。
俺たちが到着してから15分ほど経過し、時刻は既に6時10分なのだが、メンバーの3人はまだ到着していない。
「今日も待ち合わせの時間をオーバーしてるな……。まあ遅れることも想定して時間を設定しているから問題はないが」
「むう……、時間はなるべく守るのが常識だと思うのだが……」
そんな話をミルスさんとしていると、龍太郎がやってきた。
「おー、わりぃー、遅れたわー」
龍太郎は相変わらずである。
「おっ?何だそいつ?」
ミルスさんに気が付いたようだな。
「紹介する、元王国騎士団副団長のミルスさんだ。みんなの了承を得られれば今日からパーティーメンバーに加わる予定だ」
「よろしくお願いいたします」
「ほぉおー……?まあ良いんじゃね。メンバーが増えたところで俺にはあんま関係ねーし。お前が良いなら良いぜ別に」
「そうか」
龍太郎のOKはでた。
残りは愛花と委員長だが……。
「すみませーーーん!!!遅れましたぁ!!」
どうやら愛花も来たようだ。後ろに委員長もいる。
「また買い物か?」
「はいっ、立山さんとショッピングです!!」
「そうか……?、で、その子たちは?」
愛花と委員長は、それぞれが1人ずつ子供を抱っこしていた。子供は、俺たちより5歳くらい年下に見えた。10歳〜12歳くらいだろうか?
「まさか、ショッピングって……」
「違いますよ!!」
「実はですね──」
愛花と委員長は、2人について話し始めた。
その話をまとめると、どうやら2人はスラム街にいた奴隷らしい。なんでも主人と思われる男から暴力を受けていたところを愛花と委員長が発見したんだとか。それを許せなかった愛花と委員長は、2人をその主人から購入して助けたらしい。かなりの額を渡したら喜んで売ったそうだ。
「それで、この子達を家族の元に帰してあげようかと思ったんですが、どうやら家族はみんな既に亡くなっているみたいなんです。だから、どうするか悩んだ結果、私たちのパーティーに加えちゃおう!ということになりました。奴隷紋はこれからどうにかしましょう」
なるほどな。確かに下手にどこかへ渡すよりも俺たちと一緒にいた方が安全だもんな。
「良いんじゃないか?なら俺からも一つ……」
俺は、ミルスさんを2人に紹介した。
2人がOKを出したので、これで正式にミルスさんと新入り2人(仮)は俺たちのパーティーメンバーとなった。
*
「じゃあ改めて自己紹介しましょう!!」
夕食の前に、愛花が声高々に宣言した。
「そうだな。じゃあまずは班長の俺から。俺の名前は"夜川 平"だ。夜川が苗字で平が名前だ。この班の班長をやっている。自分でも信じられないくらい方向音痴だから俺に道案内は絶対に頼まないでくれ。職業は賢者だ。ミルスさんには言ったが俺たちは一応これでも異世界の英雄らしい。この世界を守れるように頑張るつもりだ。改めてよろしく頼む」
こんな感じで、まず俺たち異世界の英雄4人が自己紹介を行った。
そして、次はミルスさんの番だ。
「私の名前は"ミルス・アライヴ"と申します。諸事情により今日王国騎士団をクビになったところをオサム殿に、拾っていただきました。微力ながら一生懸命働いていきますので、宜しくお願いいたします!」
ミルスさんが自己紹介し終わると、愛花がミルスさんに質問した。
「平さんとはどこで知り合ったんんですか?」
「ああ、それについては俺から」
俺は、昨日あったことを説明した。
「林くんが……?そう考えると恐ろしいですね……王女様が『この世界の人間では異世界の英雄に勝てることはほぼない』と言っていましたし、もし林くんみたいに暴走する生徒が他にも出たら……」
「ああ、だからもし他の生徒を見かけたらその様子には気をつけてくれ。今のところは何も起こっていないが、いつ誰が狂うかも分からないからな。愛花も注意しろよ、お前は狙われやすい顔してるから」
「ちょっと、どういうことですか!!」
「さて、新入り(仮)の2人にも自己紹介をしてもらおうかな。じゃあ……、まず兄の方から」
「無視ですか!!」
俺は、2人の方に目を向ける。
2人は、少年1人と少女1人だ。愛花の話によれば、2人は兄妹らしい。
「はい……。……僕の名前は"ルック"です。14歳で、職業は……術師です……。なんでもしますのでよろしくお願い……します……」
なんか凄い自信なさげだ。怯えているのか?
っていうか14歳って……。俺と3歳しか違わないのか?とてもじゃないが14歳には見えない。
年的には中学二年生くらいのはずだが、身長は150cm程度あるかないかくらいだ。
「あー……えっと、次、妹の方」
俺が呼びかけると、妹の方は怯えた様子で、喋ろうとせず、そのまま兄へと抱きついていた。
「えっと……ルックだっけ?妹さんの名前は?」
「あ……、はい、妹の名前は"リーフ"で、同じ14歳です」
妹も14歳なのか……妹は兄よりさらに15cmは小さい。一般的には女子の成長期はもう過ぎているはずだが……。
「2人ともあまり満足にご飯食べれてなかったのか?」
「……」
ルックは、答えずに俯いた。
スラム街にいるくらいだ。食事を満足に取れていなくても不思議ではない。それに、主人から暴行を受けていたとも愛花が言っていたしな。
2人の身長、そして痩せ具合を見れば、2人が満足に食事を取れていなかったことくらい分かる。
……俺たちが彼らを買い取った以上、俺たちには彼らを保護する義務があるだろう。
「俺たちのことは信用してもしなくても構わない。だがこれだけは言っておく、俺たちがお前たちを引き取ったからには、お前たち兄妹の安全、健康は保証する。だから取り敢えず安心してくれ。俺たちはお前ら兄妹の味方だ」
「そうですよ。私たちはあなたたちに危害を加えたりなんかしませんから!!そんなに怯えないで下さい!!!」
俺が言ったあと、それに続いて愛花も笑顔で兄妹に語りかける。
「……!はい」
(何と言うか、「ほわわん」としている)愛花が言ったことで、兄妹の緊張が少しほぐれてきたようで、死にそうだった表情が少し明るくなった。
俺の時との反応の差を見て、俺は少し落ち込んだ。
*
その後、夕ご飯を食べた俺たちは、人数が増えたためもうあと2部屋を借りた。兄妹2人は同じ部屋が良いということだった。
ちなみに、やはり兄妹2人ともお腹が空いていたようで、とにかくたくさん食べていた。
(さてと……、明日からはまた異世界の英雄としての活動をしていく予定だが……どうしていこうか)
俺はベットの中でそんなことを考えていると、気づくと眠りに落ちていた。
ー第16話 完ー
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