第14話:殺せない賢者、騎士団の闇に触れる。
第14話です。短めです。
「ぐ……んあ……?」
団長が目を覚ましたようだ。
「俺のことを雑魚だの弱者だの言っていたが、他人にあの言い方は感心しないな」
俺は団長へと話かける。
「人類最強というのは知らないが、相手の力量も測れないなら所詮その程度ということだ」
「ぐあ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!」
団長は、体の痛みを無視して立ち上がった。
「オ、オサ……ムゥッ!!!!!お前は殺スッ!!!」
どうやら怒っているらしい。
これを逆ギレというのだろう。
「お前は俺に負けたんだ。俺がミルスさんを助けた者に相応しいと認めて、大人しくミルスさんのクビを取り消せ」
「うるせエッ!!!」
だめだ、話合いにならない。
まるで子供だ。
「良い加減にしろ。周りのやつらも何か言ったらどうなんだ?お前らこんなやつが団長で本当に良いのか?」
俺は外の騎士へと語りかける。
だが、外の騎士は呆然として反応を示さない。
それどころか、少し経つと、俺のことを睨みつける者もいた。
俺に罵詈雑言を浴びせる者もいた。
驚いた。
俺には意味が分からなかった。
何で彼らが怒っているのかも、何で彼らがこんな団長を認めているのかも、何一つ分からない。
今日1日で、俺の中での王国騎士団の評価が大幅に下がった気がする。
俺は何か悪いことをしたのだろうか?
別に俺は王国騎士団や王国騎士団長に理不尽な暴力を振るったわけでもない。
団長が、『俺が弱いから俺に助けられたミルスさんを辞めさせる』などと訳のわからないことを言うから、俺が弱くないことを証明しただけだ。
こうやって戦ったあとで今更だが、ミルスさんはこんな場所に残って本当に幸せなのだろうか?
少なくとも、俺はこんな職場は嫌だが……もういっそのこと辞めてしまった方が良いのでは。
そんなことを考えていると、団長がこっちへ来た。
「オラッア゛ア゛ア゛ア゛ア!!!!!」
「……っ」
団長は俺の服を掴むと、俺を地面に叩きつけた。
背中に衝撃が走る。
「オサムゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!無視すんじゃねぇエ!!」
「……」
馬鹿力だ。
レベル上げで防御力を上げていなかったら軽く何本か骨が砕けてただろう。
異世界の英雄の力は偉大である。
「オサムゥゥ、お前は絶対に許さンッ!!もう一度勝負しやがれやアッッッ!!!どんな手を使ったのか知らんガッ、もう絶対に負ケナイ!!!!」
団長は、俺を見下ろしてそう言った。
(もはや狂気だな……。この男がなぜ怒っているのかまるで分からない。ミルスさんを辞めさせるのを撤回してくれればそれで良かったのに……)
「……悪かった。謝罪はするからこの話は終わりにしないか?今の状況は互いにとって損でしかないはずだ」
俺は立ち上がると、謝罪をして場を収めようとした。
しかし──
「煩いわッ!!!ゴミのくせに調子に乗りやがってぇー!!!!」
あっ、これは何言ってもダメなやつだな。
どうするか。
「団長!!落ち着いて下さいっ!!」
俺が悩んでいると、後ろからミルスが団長に話しかけていた。
「あ゛っ!?部外者は引っ込んだろ!!!!こうなったらもう絶対にお前のクビは取り消さん!!!とっとと何処かへ行くんだな!!」
「ですから落ち着いて下さい。私は辞めますからっ!!オサム殿にこれ以上突っかかるのは辞めて下さい!!」
こんな時にまで、自分の職ではなく俺の安全を選ぶあたり彼は本当に良い人だ。
だが、今の団長は話の通じる相手ではない。
「はぁぁあ゛ッ!!あいつは俺を不快にさせたんだよ!!潰すのは当然だろうが!!」
もう訳がわからない。
これが騎士の姿か?
もうダメだな。
ここにいると気が滅入りそうになる。
「ミルスさん、俺は王国騎士団を辞めることを勧めます。とりあえずここから出ませんか?団長は今話が通じていないようなので」
「えっ……、あ、ああ。だが、ここから出れるのか?」
第1訓練場の入り口付近は、騎士たちが塞いでいる。
窓などもないし、事実上閉じ込められているわけだ。
よし、倒すか。
理不尽な『大人』にお灸を据えよう。
「分かった。もう一度勝負しよう。ただし、俺に負けたらこの話はもう終わりだ。俺はミルスさんを連れて出ていく」
「あ゛っ?」
「ミルスさんはこんなブラック企業には相応しくない。ミルスさんに相応しいのは、世界を救う仕事じゃないか?」
「オサム殿………(ブラック企業?)」
「という訳で、勝負開始といこうか」
*
一応結果を言っておくと、俺の圧勝だった。
身体強化魔法をマックスまでかけた上、相手は冷静さを失っているのだ。俺が負けるわけがない。
俺は団長を気絶させ、レベルを上げつつそのままミルスさんを連れて出ていった。
騎士団長を二度倒した人間を止めることのできる騎士はいなかった。
ちなみに、ミルスさんから事情を聞いたところ、どうやら騎士団には貴族出身の者が多く、騎士団長も公爵家の出身だという。この国の貴族は、自分より上の身分の人に絶対服従するように教育されるようだ。
また、貴族は非常に嫉妬深いんだとか。それで、俺が騎士団長を倒したときに罵詈雑言を浴びせてくるやつがいたらしい。
俺は、ミルスさんを騎士団から連れていってしまって良いのか悩んでいた。
俺が思うに、本来はミルスさんのような人がリーダーとして皆を引っ張っていくはずなのだ。
しかし、あの団長が大人しく言うことを聞くとは思えないからな。
騎士団に残っている数少ない真面目な騎士には悪いことをしたが……。
「オサム殿、私はこれからどうすれば良いと思うか?」
そんなことを考えていたら、ミルスさんがそう聞いてきた。
「ああ、それなんだが、俺のパーティーメンバーに加わらないか?王女様が言うには仲間を増やしても良いらしい。騎士団で有名になるよりも、いっそのこと英雄になった方が家のためにもなるんじゃないか?まぁ、もちろん嫌ならそれはそれで別に良いんだが。」
俺がそう言うと、ミルスさんは驚いた顔でこう言った。
「良いのか?」
「……?ああ、別に良いが、どうかしたか?」
ミルスさんは、信じられないような目で俺を見た。
「どうかしたとかそういうレベルじゃない!!!異世界の英雄のパーティーメンバーなれるなんて、そんな名誉なことがあるか!!一部を除いて全員がなりたくても一生なれないんだぞ!!」
「そうなのか……」
「頼む!!私をパーティーメンバーにしてくれ!オサム殿!!」
「あ、ああ。じゃあ宜しく頼む。今日の夜にでも他のメンバーと顔合わせでもするか。」
「ああっ!!!」
こうして、ミルスさんは俺たちのパーティーメンバーとなったのだった。
ー第14話 完ー
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